月刊バスケットボール6月号

【ウインターカップ2020】 “諦めない気持ち”を見せて戦い抜いた浜松開誠館

 

京都精華学園(京都)91-84浜松開誠館(静岡)

 

 見事な戦いぶりだった。12月24日のウインターカップ2日目。Eコートの女子第2試合で京都精華学園(京都)に無念の敗戦を喫した浜松開誠館(静岡)は、一時18点あったビハインドを4Qで最大2点まで縮める猛烈な追い上げを見せた。

 

 試合は序盤から大きな波がない互角の戦いだったが、#15セトゥ、#18ウチェという190cmに迫る長身の留学生を擁する京都精華がインサイドで主導権を握り、じわじわと点差を開いていく。サイズに劣る開誠館にとっても、ある程度インサイドでやられることは想定内だったが「留学生のサイズと能力が予想を上回っていた」(三島コーチ)ことが大きな誤算となった。

 

 1Q(18-22)、2Q(20-26)、3Q(16-20)と試合が進むにつれて、小さなビハインドがやがては大きな差となり、いつしかその差は18点に。「3Qでもう少し競りたかったんですけど、ノーマークのシュートを決め切れませんでした。そこが最後の点差に響いたと思う」と三島コーチ。4Qのパフォーマンスがあった分、その言葉には一層悔しさが募る。

 

 それほどまでに最後の10分間で開誠館が見せた鬼気迫るプレーはすばらしかった。

 

 16点ビハインドで迎えた4Q、開誠館はここまで取っておいたオールコートプレスを展開。これが効果的に決まり、京都精華のターンオーバーからチャンスを見いだすと3Qまで思うように決まらなかったアウトサイドシュートが土壇場で冴え渡る。4Qだけで#5山本が4本、#6樋口が3本、萩原が1本を射抜く怒涛の得点ラッシュで、4Qを迎える前に三島コーチが掲げた「3分で一桁点差」というプランをはるかに上回り、残り2分28秒には2点差まで迫った。


苦しい時間帯にもチームを引っ張った樋口

 

「プレスをかけてディフェンスを頑張ってボールを奪ったらみんなが走る。そうやってブレイクで点を取ることができました。そこから自分たちのリズムを作れたことが追い上げられた理由です」と樋口は追い上げた時間帯を振り返る。

 

 しかし、最後まで開誠館がリードを奪うことはなかった。追い上げムードが漂う中でも追い越すことを許さない京都精華がインサイドを起点に何とか得点をつなぎ、無情にもタイムアップ。「あの場面で一度追い越せないと勝てるゲームにはならない」という三島コーチの言葉がずっしりとのしかかるような、あと一本が決めきれない、あと一本が止めきれないという最終盤の戦いだった。

 

 結果には結び付かなかった。それでも彼女たちが見せた鬼気迫るプレーの数々は集大成と呼ぶにふさわしいものだったと言える。「選手に伝えたいのは試合には負けてしまったけど、最後まで諦めずに戦ったことは記憶に残る、感動を与えられるということ。最後までやり切りました。今、世の中は暗いニュースばかりですけど、見ている人に感動を与えるというところではよくやってくれたと思います」と三島コーチ。

 

 選手たちが流した涙は本気で戦い抜いた何よりの証しだ。引退する3年生の中にはここでバスケットを退く者もいれば、これから先も続けていく者もいる。残された1、2年生には来年がある。困難な1年を乗り越えてきたからこそ、選手それぞれに得るものがあったはずだ。見事な戦いを見せた浜松開誠館の選手たちが、この経験を未来の糧としてくれることを願いたい。

 

写真/JBA

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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