月刊バスケットボール6月号

【ウインターカップ2020】大阪薫英女学院をリードする安藤コーチの秘蔵っ子・都野七海

 

 ウインターカップ2日目(12月24日)。武蔵野の森総合プラザのEコート女子2回戦の第一試合に登場したのは、1回戦で日本航空(山梨)を下した大阪薫英女学院(大阪)と広島皆実(広島)を退けて勝ち上がった白鷗大足利(栃木)だ。

 

 この試合は薫英に分がある一戦と見られていたが、ゲームをコントロールしたのは足利。薫英のお株を奪うようなアグレッシブなディフェンスで簡単なシュートを許さず、オフェンスでも#82清水、#83神山の2年生コンビを起点にリード。「前半はディフェンスのローテーションを意識してスティールが成功したり、薫英の選手に簡単にシュートを打たせない守りができた」と#21江原が振り返るように、チームのベースであるディフェンスを軸にハーフコートでコツコツと得点したことが前半での7点リード(36-43)につながった。

 

 しかし、薫英も黙ってはいない。後半に入ると大会前に安藤コーチが課題に挙げていた3Pシュートも決まり始めたことで徐々に点差を詰めると、3Q残り4分を切ったところで遂に足利の背中を捉えた。

 

 同点のショットを沈め、直後にもリード奪うアンドワンレイアップを決めたのは158cmの1年生ガード#11都野だ。昨年の和歌山全中で桜田中(山口)を決勝トーナメントに導いた司令塔は、安藤コーチの熱心な誘いに心を打たれ薫英入学すると、いきなりスターターに抜擢。

 

 1回戦の日本航空(山梨)戦で上々の全国デビューを飾ると、この試合でも3Qでの12得点と含むゲームハイの24得点に6つのスティールを記録。逆転勝利(86-71)の立て役者となった。

 

デビュー戦の対日本航空でも上々の滑り出しを見せた

 

「前半少しバタバタしてしまって薫英らしいバスケができなかったんですけど、後半はしっかりとスピードを上げてドライブや3Pシュートが決まったので、みんながリズムよくプレーできました。とりあえず勝ててよかった」とホッとした表情を浮かべた1年生は、薫英を指揮する安藤コーチの秘蔵っ子。大会前の取材では「#4安田や#5宮城も速いんですけど、都野はもっと速い」(安藤コーチ)と、うれしそうに教えてくれた。

 

 エースの#4安田に象徴されるようなスピーディーな展開が強みである今年の薫英にあって、都野のフィットは抜群。この試合に関しても彼女のアグレッシブなプレーが今ひとつ波に乗り切れなかった薫英のオフェンスに良いリズムをもたらし、そのリズムがディフェンスにも表れた。

 

 とはいえ、彼女はまだ1年生。試合序盤にはミスがかさみベンチで頭を冷やす時間もあった。「前半で交代したときはガードとしてゲームコントロールができていなかったので、その分ではしっかりと頭を冷やすことができました。後半はしっかりと指示も出しながらやっていこうと思ってプレーしました」と都野。

 

 良いプレーも悪いプレーも一つ一つが彼女にとっては経験だ。明日の3回戦、薫英は絶対女王・桜花学園(愛知)と激突する。高校界ナンバーワンガードと称される#4江村との対戦も彼女にとっては大きな経験だ。「すごく注目されている選手ですけど、それにビビらず1年生らしくプレーしたい」と、意気込む薫英の小さな司令塔がどんなパフォーマンスを見せるのかは要注目。

 

 最後に「今のところウインターカップは楽しいですか?」と質問するとマスク越しからも伝わるような満面の笑みで「めっちゃ楽しいです!」と語ってくれた。

 

 

写真/JBA

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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