月刊バスケットボール5月号

【ウインターカップ2020】高校生審判がウインターカップのコートに初登場

 2020年度のウインターカップの初日、12月23日に全国大会史上初となる高校生審判がデビューした。東京体育館で行われた男子の正智深谷(埼玉県)対高知中央(高知県)の一戦で、東京都立小山台高校バスケットボール部3年の三浦海音君が審判としてコートに立ったのだ。

 

「東京体育館に足を踏み入れた時には、『ここまで来られたんだな』と、感慨深い思いはありました」と三浦君。それでも「少し緊張していたのですが、いつもどおりでいられるようにと意識していました。昨日は塾をいつもより少し早く上がって、お風呂に入って、リラックスして、いつもどおり寝られました」と必要以上の気負いはなかった。

 

審判として全国大会デビューした三浦海音君


試合中も驚くくらい「普通に、冷静に」ジャッジをしており、そんなレフェリー姿の三浦君を目にし、彼がこの会場に学生服でやってきたことを想像できる人はいなかったに違いない。

 

 中学時代からよく審判をしていた三浦君は、高校に入ると日本バスケットボール協会(JBA)公認審判員C級の資格を取得。さらに上位大会の審判もできるB級審判員にも合格した。そうした道筋を示したのは同校バケットボール部顧問の平原勇次氏である。平原氏はJBA公認S級審判でありFIBAレフェリーの資格も持ち、オリンピックやワールドカップでのジャッジを行ってきたワールドクラスのトップ・レフェリーなのだ。

 

 JBAの公認審判制度はE級からA級、その上のS級までの6段階にレベル分けされており、資格に応じて地区大会、全国大会とジャッジできる大会に区別がある。全国大会であるウインターカップは、例年ならば全国からA級審判が集まり、この大会でジャッジできるB級審判は一握りにすぎない。しかし、今年はコロナ禍であることから、関東地区の審判員だけで担当することになったため、B級審判の割り当てが増え、三浦君は幸運にもそのチャンスを得ることになった。一方で高校3年生として、期待していたほとんどの大会がキャンセルになってしまっていた。

 

「3年になってレギュラーになれたので楽しみにしていたのですが、新型コロナウィルスがまん延して、何もできなくなってしまって」とプレーヤーとしても、審判としても活躍する舞台がなくなってしまった日々を振り返る。その後、プレーヤーとしては東京都が秋に開催したサンクスマッチ(ウインターカップへの推薦チームを決定する参考大会)を最後に引退することになった。そして、いよいよ受験勉強に専念…といった矢先、レフェリーとして三浦君がウインターカップに派遣されることが決まったのだ。

 

「ウインターカップは3年生の引退がかかっている大会で、僕自身そうした選手たちの気持ちが分かっているつもりです。彼らの最後の舞台が、僕のジャッジで左右されることがないように、いつもどおり、ベーシックにジャッジすることに努めようと思っていました」と三浦君。試合を終えて、自身のジャッジについて聞いてみると「細かなところでの反省点は、後で映像を見直したら出てくると思いますが、一緒に吹いた審判クルーの方々のフォローもあって、役割をこなせたのかなと思っています。時間が許す限り、都道府県予選の映像を観て、スカウティングもして準備してきましたし、昨日も平原先生からも『いつもどおりやれば大丈夫。コートの上では集中して、楽しんできなさい』と声をかけていただき、落ち着いてできたのだと思います」と、まずは合格点だったようだ。

 

 三浦君は明日、24日にもう一試合担当することになっている。

 

「明日で一区切りとなりますが、ここまで来られたのは平原先生をはじめ、これまで指導していただいた多くの審判の方々、周囲の方々の支えがあってのことですから、そうした方々への感謝が伝えられるように、しっかりともう一試合ジャッジして、また受験勉強に専念したいと思います。審判も受験も両立することで、お世話になった方々への恩返しができれば」と、いつもどおりの口調で話してくれた。

 

(月刊バスケットボール)



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