月刊バスケットボール6月号

【ウインターカップ2020】新たなユニフォームをまとい 雪辱の戦いに挑む岐阜女

写真/JBA

 

 

「うちのチームに派手な選手はいません。しつこく、粘り強くディフェンスを頑張るというチームカラーは、今年も変わらないですね」

 

 ウインターカップ前、岐阜女の安江満夫コーチは自チームのことをこのように評していた。今年は新型コロナウイルスにより多くの大会が中止となり、「諦めない粘り強さは本来、苦しい試合を経験しながら身に付けていくものですが、今年はそれができていない」という懸念はあるものの、「今年は日々の練習の中で粘り強さを身に付けようとしています」という。

 

 実際、取材で訪れた日の練習を見ていても、それはひしひしと感じられることだった。「今日の練習、Aチームはトレーニングメインなんです。見ていきますか?」と安江コーチから案内されたのは、バスケットゴールのない小さなサブアリーナ。そこではトレーナーの指導の下、チューブを使ったランメニューや、ラダーを使ったアジリティーを鍛える練習、タフなディフェンスフットワークなど、ボールを使わない練習が続いていく。そしてひとしきりフットワークなどが終わると、ベンチプレスなどマシンをフロアに移動してきて、休む間もなく黙々と筋力トレーニング。戦術・戦略以前に、こうした地道なトレーニングや基礎練習の積み重ねが、岐阜女の粘り強いプレーの土台になっているのだろう。

 

 12月23日、いよいよ開幕を迎えたウインターカップ。ノーシードで1回戦からの登場となった岐阜女は、序盤こそ動きが硬く、湯沢翔北相手に1Qは24−20と食らいつかれたものの、2Q以降はディフェンスから速い展開を作ってリードを広げた。後半はさらにディフェンスを締め、3Qが6失点、4Qが9失点。終わってみれば87−47と、大差を付けての快勝で初戦をクリアした。安江コーチは「(出だしが)バタバタしていましたね。そこは高校生ですし、硬かったのは計算の中。子どもたちにとっては待ちに待った舞台で、力を出そうと思えば思うほどうまくいかない。そういう意味では、今日慣れさせることができて良かったと思います」と振り返る。

 

今大会、岐阜女が目指すのはもちろん2年ぶり3回目の優勝だ。その際、越えなければならない大きな壁が女王・桜花学園。昨年はインターハイもウインターカップも、それぞれ決勝で桜花学園に敗れ、今年2月に行われた東海新人大会でも67−69で惜敗。リベンジを誓ったインターハイはコロナ禍で中止となっただけに、今大会に懸ける“雪辱”の思いには、並々ならぬものがある。特に今年の3年生は1年時に優勝の喜びを、2年時に準優勝の悔しさを味わっており、天国も地獄も知っているからこそ全国制覇へのこだわりは強い。

 

 組み合わせ抽選の結果、岐阜女は桜花学園と同じトーナメントの左側に入り、もしお互いに勝ち上がることができれば準決勝で顔を合わせることになった。因縁の対決とあって、実現すれば注目の一戦となるだろう。ただし、そこに至るまでにも強敵は多い。安江コーチは「あまり先を見過ぎず、いつもどおり一戦一戦、挑戦者として挑むだけですね」と気を引き締める。

 

 なお、冒頭で述べたように「ディフェンスを頑張るというチームカラーは変わらない」という岐阜女だが、今大会で大きく変わったものがある。ユニフォームだ。

 

 

紺色メイン、胸には「岐阜女子高」の漢字が入っていた伝統のものから、黒色に赤色のアクセント、そして「GJ」のロゴに。まだ見慣れないそのユニフォームは、今大会に向けて新たに制作したもの。安江コーチいわく「こういうときだからこそ、新たなスタートだという思いで。色も変えてイメージチェンジをして、新たな挑戦者として向かっていきたい」とのことで、暗い状況を打破して気持ちを新たにすることが狙いなのだと教えてくれた。キャプテンの④佐藤果歩も、「ユニフォームを作ってもらって、こうしてユニフォームを着てバスケットができることも当たり前じゃないなと。すごく感謝の気持ちが湧きました。デザインも気に入っていますし、新たな岐阜女子を見せていきたい」と意気込みを語る。

 

 ちなみに「これまでの漢字のデザインも僕は好きで…。新しいユニフォームにも、後ろの背中のところに控えめに漢字が入っています」とこだわりを語ってくれた安江コーチ。変わらない伝統を継承しつつ、一からのスタートで戦いに挑む新生・岐阜女。2回戦以降の戦いぶりにも注目したい。

 

取材・文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)

 

 



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