月刊バスケットボール5月号

【WINTER CUP HISTORY vol.5】藤井祐眞が魅せた1試合79得点の超絶スコアリングショー

 

「ゾーンに入る」

 

 そんな表現を耳にしたことはあるだろうか?

 

 一定の時間帯で体中の全神経が研ぎ澄まされ、極限の集中力を発揮することをスポーツの世界ではこう表現する。ただし、ゾーンに入るなんていうことはそうそう簡単に起こることではない。ましてやそれが全国大会の舞台で起こる可能性なんて1%もないかもしれない。

 

 しかし、2008年のウインターカップ2回戦で現川崎ブレイブサンダースの藤井祐眞はゾーンに入った。当時2年生だった藤井擁する藤枝明誠は、このラウンドで徳島県代表の海部と対戦。この試合の162対79というファイナルスコアを記憶する方もいるのではないだろうか? 序盤からチーム全体で攻め立てた藤枝明誠は1Qから試合を支配し、前半で77得点を記録。高いシュート成功率に加え、ディフェンスでも前から激しくプレッシャーをかけボールすら運ばせない圧巻の試合運びを見せたのだ。

 

 前半の数字だけでも高校生の試合の4クォータースコアと言っても不思議ではない数字だが、後半に入るとさらに加速し何と85得点。こうして生まれたトータル162得点という数字は1991年に能代工が記録した154得点を上回るウインターカップ歴代最多得点であり、12年経った今なおランキングトップに着けている。

 

 その中心だった藤井は鋭いドライブやミドルジャンパーを沈め続け、試合を通して驚異の79得点。2ポイント30本、3ポイント2本に加え、フリースローも13本を成功。合計45本ものショットが海に小石を投げ入れるがごとくリングに吸い込まれた。

 

 しかもこの試合後、藤井は「コーチから80点と言われていたので届かなくて残念」と話しているのだから驚きを隠せない。今でもネットやSNSで検索すれば当時の映像は出てくるはずなので、気になる方はチェックしてみるといいだろう。あらかじめ伝えておくと、そのパフォーマンスに度肝を抜かれることは必至だ。

 

 また、この試合での藤井祐眞のパフォーマンスが凄まじすぎたためにフィーチャーされづらかったが、チームメイトの藤井佑亮も54得点を挙げており、"ダブル藤井"の爆発的な得点力が見るものを唖然とさせた。

 

 今でも川崎のチーム内で冬になるとウインターカップの話題が出るそうだが、キャプテンの篠山竜青は「ウインターカップの話題といったら祐眞の79点が一番インパクトがありますよ」と明かしており、藤井のパフォーマンスは川崎でも語り草のようだ。

 

 現在も他を圧倒するボールへの執着心と観客を沸かせるプレースタイルでBリーグ 2019-20シーズンの個人賞3冠を受賞するなど、多くのファンを魅了している。

 

 今後、藤井の得点記録を更新する選手が現れる日は来るのだろうか? いや、記録は破られるためにあるという意見もあるくらいだ。藤井のようにゾーンに入った未来のスター候補生が、この超絶スコアリングショーを超えるその日を楽しみに待ちたい。

 

https://twitter.com/U18_JBA/status/1340139201287766018?s=20

 

(月刊バスケットボール/堀内 涼)



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