月刊バスケットボール5月号

ウインターカップ2019を戦ったあの選手の今 大阪薫英女学院で成し得なかった日本一を目指す福田希望

 ウインターカップまであと2日。待ちに待った今シーズンの高校バスケ初めての全国大会が迫っている。最初で最後の全国大会で現役生たちには悔いなく完全燃焼してもらいたいものだ。しかし、実際のところ『悔いなく引退する』なんてことは言葉にすれば簡単だが、とても難しいこと。

 

 昨年の12月27日、大阪薫英女学院はウインターカップ準決勝で後に優勝を飾る桜花学園の前に61-95(3Q終了時点で26-67)という圧倒的な負けを喫した。大会特集で11月末に薫英を取材した際に昨年の大会を主力として戦った福田希望に話を聞くことができた。

 

大学では再び一からのスタートだ

 

 彼女は今、同じ薫英学園の系列大学である大阪人間科学大のバスケット部に所属し、第一線で競技を続けている。当時よりもだいぶ髪が伸び、どこか大人びたような雰囲気を感じさせた福田は、1年前のウインターカップについて「個人的には悔いが残っている大会です。最後の最後でやらなきゃいけないというか、どうしても気持ちが入りすぎたというか…。自分が思い切ってもっとやれればよかったけど、気持ちがどうしても強くなりすぎて、それまでやってきたものが出せませんでした」と苦笑い。あまり感情を表に出さないタイプに見える福田だが、あの試合に限ってはどうしても力が入ってしまったようだ。

 

 安藤香織コーチも桜花学園との準決勝を振り返り「あの試合はまさに空回ったという展開でしたよね(笑)。逆に今年は桜花とは3回戦で当たる可能性があるのでメインコートで戦うよりはチャンスがある」と、気合いが入りすぎたがゆえの完敗だったことを認め、今年の戦いに生かす構えだ。

 

 この経験があったからこそ、福田にとっては「もう一度、大学バスケで」という思いが強いのだろう。「大学で日本一になりたいです」と強く宣言する福田。薫英のOGも多く、選手層の厚い人科ではまだ出番は少ないというが彼女の目はまっすぐ前を向いていた。やり切れなかった高校時代の記憶が彼女に新たな原動力をもたらしているのだ。

 

桜花学園との準決勝はほろ苦い記憶だが、それも今に繋がる力となっている

 

 大学バスケットについては「高校とは全く違います。高校で学んだことをどれだけ大学で自分自身が表現できるかが大切。今までだったら先生に全部指導してもらっていたけど、それを今度は自分で出していかないといけません。今まで学んできたものをどう表現して、いかに周りに影響を与えていけるかが今の課題ですね。大学では高校のとき以上に個人技やフィジカルの強さがないと勝てないので、個のレベルももっと上げていかないといけません」と冷静に分析。

 

 また、人科と薫英は同じ体育館の隣のコートで練習しているため、現役高校生から受ける刺激もある。「(高校生から)日々、『自分ももっと頑張らないと』と刺激をもらっています。あまり試合に出られていない中でどれだけ意識を高く保てるかが重要で、高校生も頑張っているから自分も頑張ろうって思える存在ですね」と後輩たちの存在もまた、福田の原動力だ。

 

 では、キャンパスライフはどのようなものなのだろうか?

 

 そんなことが気になり、バスケット以外での大学生活について尋ねると福田から返ってくるのはバスケットの話だった。「で、大学の授業とかそういうのは…?」ともう一度だけ聞いてみたが、最終的にはバスケットの話に戻ってしまう。それだけバスケットと真摯に向き合っているのだろう。そう思って、それ以上のことを聞くのは控えた。敗戦をエネルギーに変え心に新たな火を灯す彼女の大学キャリアはまだ始まりに過ぎない。

 

 まずは試合に出ること、そして人科をチーム史上初のインカレ制覇、日本一に導くことが彼女の最大のモチベーションなのだ。

 

薫英で培った力を大学のステージでも発揮したい

 

 大学までバスケットを続ける選手はほんの一握りである。その一握りの中でも日本一を目指すチームに属するとなると、さらにその数は少なくなる。人科は今年のインカレではベスト16だった。2回戦で人科を破った拓殖大は準決勝で白鷗大に敗れ、その白鷗大も決勝で東京医療保健大に敗れた。上には上がいる。それは裏を返せばその分の伸びしろがあるということでもある。

 

 そんな過酷な世界で戦い続ける福田はウインターカップを目前に控える後輩たちへ向けて「最後は思い切って戦ってほしいです。インターハイもなくなって私が思っている以上に(後輩たちは)つらい思いをしたと思うので、特に3年生は全部出し切ってやってほしいです。自分のことを棚に上げたような言葉ですけど(笑)。今までだったら当たり前だったことが今年は当たり前ではなくなったことで、より気持ちが強くなった部分はあると思います。その分、彼女たちはコートで暴れてくれると思うので期待しています!」という力強いメッセージを残してくれた。

 

 薫英が目指すのは言わずもがな、日本一である。ステージは違えど、福田も日本一を目指している。同じ目標を持つ者どうし薫英の躍進が福田のエネルギーとなり、福田の頑張りもまた、後輩たちを突き動かす力となるのだ。

 

 

練習写真/松村健人

大会写真/中川和泉、山田高央

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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