月刊バスケットボール1月号

Wリーグ

2020.12.20

皇后杯決勝 逆境を跳ね返し、全員バスケでENEOSが8連覇

 12月20日、ENEOSサンフラワーズ vs. トヨタ自動車アンテロープスの皇后杯決勝が国立代々木競技場第二体育館で開催された。

 

 大会タイ記録となる8連覇かかるENEOSだが、それ以前、4連覇中の同チームをストップし、初優勝を遂げたのがトヨタ自動車だった。トヨタ自動車は2度目の頂点を目指して決勝の舞台に挑んだ。

 

 ENEOSのスターターは準決勝と同じラインナップ。Wリーグ前半戦のスターターからインサイド梅沢カディシャ樹奈を欠き、さらに主力選手を故障で複数が出場できず、苦しいチーム事情での皇后杯、しかも準々決勝でエース渡嘉敷来夢も右膝の靭帯断裂で戦列を離れた。

 

「プレッシャーに押しつぶされそうでした。(渡嘉敷が離脱して以来)大会期間中も寝られなかった」と、キャプテンの岡本彩也花はと心の内を明かす。その不安を渡嘉敷に打ち明けると「これ以上、失うものはない」と励まされたという。相手も「渡嘉敷がいないから勝てる」と思っているに違いないから、「勝たなければ、周りをびっくりさせなければ」と気持ちを吹っ切ってファイナルを迎えた。

 

トヨタ自動車の切り込み隊長として活躍した安間

 

 一方のトヨタ自動車は万全の体制、そして「絶対に勝ちたい」という強い気持ちで臨んだ。その気持ちが全面に表れたディフェンスから、先手をつかんだのがトヨタ自動車だった。1Q残り5分44秒に三好南穂の3Pシュートで13-5とリードを奪うと、ENEOSはたまらずタイムアウト。しかし、トヨタ自動車の勢いは止まらず、ゴールネットを揺らし続ける。一方のENEOSは、入りそうなシュートがこぼれ落ち、1Qは27-18とトヨタ自動車がリードを奪った。

 

 2Qに入り、ENEOSは宮澤夕貴の3Pシュートで息を吹き返し、26-30と4点差まで詰めると、その後互いに激しい主導権争いを演じた。トヨタ自動車は馬瓜エブリン、三好、安間志織の3人が2ケタ得点を前半で記録。ENEOSは宮澤が両チーム最多の15得点と気を吐き、中田珠未も11得点で続いた。

 

 47-41とトヨタ自動車6点リードで迎えた後半。ENEOSは岡本、宮澤、トヨタ自動車は馬瓜エブリン、三好といった両チームの主力がそれぞれドライブ、3Pシュート、インサイドと持ち味を出したプレーで点を取り合う。しばらく続いたつばぜり合いから、ENEOSは中村優花がインサイドを決め切り、これまでアシスト役に回っていた宮崎早織が相手のスキをつくドライブからバスケットカウント。さらにクォーター終了間際に中田がミドルシュートを沈めて64-63とついにトヨタ自動車を捕らえた。

 

 4Qに入るといきなり岡本の高速ドライブがさく裂。中村がインサイドをねじ込み、ディフェンスでもテイクチャージ。宮崎も積極的なドライブでファウルをもらうと、フリースローで加点。勝ち方を知るENEOSはここが勝負どころとばかりに、集中力を見せる。

 

 トヨタ自動車は平下愛佳の3Pシュートで息をつくも、終盤にきてアクセル全開となったENEOSのスピードは止まらない。岡本がブレイクからのドライブでファウルを得ると、トヨタ自動車は残り5分43秒で後半3回目のタイムアウトを請求。その後、馬瓜エブリン、安間が得点を決めるものの、ENEOSも決め返し、残り3分に岡本がこの日20得点目となる3Pシュートを決めて85-76と9点差に開く。その後も最後まで走り切ったENEOSが粘るトヨタ自動車を振り切り87-80と優勝。 ENEOSはスターター全員が2ケタ得点を挙げる「全員バスケ」を展開、相手ディフェンスに焦点を絞らせず、大会記録と並ぶ8連覇を達成した。

 

 トヨタ自動車のルーカス・モンデーロHCは「前半はシュート確率もよく6点のリードを得ましたが、後半はノーマークの3Pシュートを外すこともあり、1対1のディフェンスでもうまくいかない部分がありました。また、なかなかファウルをもらえず、難しい展開となりました」と試合を振り返りつつ「ミスを修正していけば、次は勝てるところまで来ていると思う」とWリーグのファイナルを見据えると、チーム最多の22得点・7リバウンドと奮闘した馬瓜エブリンも「すごく悔しいけれど、自分たちがやってきたことを否定せずに、この負けからいろいろなことを学び、Wリーグでこの借りを返したい」とリベンジを誓った。

 

 渡嘉敷の離脱で、エースの役割を担った宮澤は「今回の優勝はこれまでで一番うれしいです。絶対的に勝てる部分がなかったので、最悪な展開まで考えていていました。それでも自分たちのバスケットをやれば勝てると思って、試合中厳しい時も、全員でもう一回、もう一回と、ディフェンス、リバウンドを徹底しました」と喜びを語る。そして、「相手もステップアップしてくるので、自分たちもステップアップしていかないと。毎日、毎日、厳しい練習を繰り返して…」とWリーグ後半戦に向け、気持ちを引き締めた。

 

重圧に打ち勝ったENEOSのキャプテン岡本が宙に舞う

 

 

<12/20 決勝結果>

ENEOSサンフラワーズ 87 -80 トヨタ自動車 アンテロープス

 

<12/19 準決勝結果>

ENEOSサンフラワーズ 78 -62 デンソー アイリス

トヨタ自動車 アンテロープス78-67 日立ハイテク クーガーズ

 

<12/16・17 準々決勝結果>

ENEOSサンフラワーズ 78 -59 富士通 レッドウェーブ

デンソー アイリス 85-73 トヨタ紡織 サンシャインラビッツ

日立ハイテク クーガーズ83 - 79 三菱電機 コアラーズ

トヨタ自動車 アンテロープス98 - 65 アイシンAW ウィングス

 

<大会ベスト5>

宮崎早織(ENEOS/初)

宮澤夕貴(ENEOS/5回目)

馬瓜エブリン(トヨタ自動車/2回目)

安間志織(トヨタ自動車/初)

谷村里佳(日立ハイテク/初)

 

<大会MVP>

宮澤夕貴(ENEOS/3回目)

 

MVPに輝いた宮澤(ENEOS)

 

(月刊バスケットボール)



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