月刊バスケットボール6月号

史上初! ウインターカップで高校生審判がホイッスル

 今年のウインターカップで史上初の高校生審判が登場する。東京都立小山台高校バスケットボール部3年の三浦海音君が大会の審判員として派遣されることが決定したのだ。

 

「中学生時代から自分が所属していたミニバスチームの手伝いにいき、審判などもよくやっていました」という三浦君は、高校に進学すると同校バケットボール部の顧問の平原勇次氏の下、本格的に審判を始めた。平原氏は高校教員でありながら、日本バスケットボール協会(JBA)公認S級審判でありBリーグの審判も行う。のみならず、FIBAレフェリーの資格も持ち、国際大会の経験も豊富。2008年の北京オリンピックでは女子決勝を担当、2014年のスペインワールドカップでのジャッジを行うなど、ワールドクラスのトップ・レフェリーなのだ。

 

「三浦君は上級生の練習試合なども積極的に審判をやってくれ、とてもうまかったんです。聞いてみると、プレーだけでなく審判も好きだと言うので、資格を取ることを勧めました」と平原氏。JBAの公認審判制度はE級からA級、その上のS級までの6段階にレベル分けされており、資格に応じて地区大会、全国大会とジャッジできる大会に区別がある。

 

 審判の経験があった三浦君はまずC級を取得。そして一年のうちにB級を受験した。

 

「C級までは希望すればだれでも受験できるのですが、B級を受験するには周りの審判員からの推薦が必要なのです。三浦君は周囲からも審判の実力が認められており、ルールテストや実技、フィジカルテストを無事にクリアしてくれました。それで年度の切り替わる2年生からはB級審判としてジャッジできることになったのです」と平原氏は説明する。

 

ウインターカップで審判をする三浦海音君(都立小山台高3年)

 

「もちろんバスケのプレーもしたいので、練習はみんなと一緒にやりながら、練習試合や大会などで審判をしてきました。平原先生の後ろに付いて動きを教えてもらったり、とても勉強になりました」と三浦君。一方で「B級になると大人の試合も審判することになるので、そこは少し難しさがありました」と、審判としてさまざまな経験を積み重ねた。

 

 3年になると、三浦君は自分の試合、そして審判と大忙しになるはずだったのだが、大会はすべてなくなってしまった。

 

「下級生の頃は、実力が及ばずなかなか試合に出られなかったのですが、3年ではレギュラーになれたので楽しみにしていたのです。ところが、新型コロナウィルスがまん延して、何もできなくなってしまって」とやり切れない日々を振り返る。

 

「それでも秋にサンクスマッチ(東京都で開催されたウインターカップへの推薦チームを決定する参考大会)を開催していただいたので、そこでプレーヤーとして最後の大会に臨むことができました」。

 

 小山台高は5回戦まで勝ち進み、三浦君自身、ある程度納得のいく結果を残すことができた。そして審判としても東京都でベスト8を掛ける試合を担当。高校での審判生活も最後━━になるはずだった。

 

「サンクスマッチを終え、改めて受験勉強に専念するようになりました」と三浦君。小山台高は進学校でもあり、三浦君も難関大学を目指している。そんな矢先、ウインターカップへの派遣が決まった。平原さんは「例年ウインターカップは全国からA級審判が集まって担当し、B級審判が担当するのはほんの一握りなのですが、ことしはコロナ禍でもあり、関東地区だけで審判を割り当てることになったのです。そこで、東京都のB級審判に多くのチャンスが生まれたのです。全国大会は3人制の審判(地区大会などの下位回戦は2人制で行うことが多い)ですが、三浦君は3人制審判の経験もあり、実力も認められているのでノミネートされたのです」と今年ならではの事情を話す。

 

2010年ワールドカップ、アメリカ戦でジャッジする平原氏

 

「大学受験も目前に控えてますが、こんな機会は2度とないことなので。プレーヤーとしては出られませんでしたが、審判としてウインターカップのコートに立てるなんて、全国の高校生の中でも、自分だけのチャンスを逃すことは考えられませんでした」と三浦君は挑戦を決めた。

 

 平原氏は「全国の高校生に、審判としてもチャンスがあるんだということを伝えられるといいですね。プレーヤーとしてやりつつ、興味があればどんどん審判にもチャレンジしてもらえれば。中学生(満12歳以上)になれば資格取得はできますし、若いうちから取り組むことで、より高いレベル、それこそFIBAレフェリーへの可能性も大きくなると思います」と三浦君の活躍を後押しする。

 

 毎日夜9時過ぎまで塾で受験勉強に明け暮れる日々をおくりながらも「体力を維持するための走り込みや、練習試合などで審判をさせてもらったりしています」と受験とウインターカップの両立を図っている。

 

「何事もなく試合が成立し、選手たちが満足してくれる審判ができれば。高校生ではやっぱりダメだと言われないようにしっかりとジャッジしたいですね」と三浦君は高校生審判のパイオニアとしての意気込みを語った。

 

 担当ゲームは明らかにされないものの、12月23日、24日にウインターカップのコートに立つ予定だ。

 

(飯田康二 / 月刊バスケットボール)



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