月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2020.11.16

来日6シーズン目のジュリアン・マブンガ(富山)が約1年8か月ぶりの大記録達成!

 第8節を終えた時点で10勝3敗と好調の富山と同9勝3敗の川崎の対戦。ゲーム1は終始、川崎がインテンシティの高いディフェンスを継続し、マティアス・カルファニとジョーダン・ヒースの穴を埋めるべく獲得したマット・ボンズも上々のデビューを飾るなど、川崎らしい戦いで富山を撃破(84-78)。続くゲーム2ではその富山が前日の戦いを修正し、93得点(川崎82点)のハイスコアで見事なバウンスバックを成し遂げ、第9節は1勝1敗の痛み分けとなった。

 

 川崎が勝利したゲーム1で特に圧巻だったのは3Q序盤。残り5分23秒に富山がタイムアウトをコールするまでの間に12対5のランを展開し、オフェンシブな富山のお株を奪う見事な攻防を見せた。懸念されたインサイドの攻防でもニック・ファジーカス、パブロ・アギラール、ボンズがうまくローテーションし、富山の強力なフロントコート陣、ジョシュア・スミスとリチャード・ソロモンを押さえ込んだ。「前半でジョシュ(スミス)とソロ(ソロモン)が2人でシュートが15分の5、フリースローも4本しかもらえなかったのが一番苦しかった」と、浜口炎HCもインサイドの攻防で誤算が生じたことを認めている。

 

 第8節を終えた時点で平均得点リーグ2位(89.7)の富山を78点に押さえ込んだ川崎の戦いは圧巻だったが、もう一つ、この試合でひっそりとメモリアルな出来事が起こっていた。

 

3人目の大記録 4000得点目は代名詞のディープスリー!

 

 Bリーグ開幕から今季で5シーズン目。その中でファジーカスとダバンテ・ガードナー(三河)のみが達成していたBリーグ通算4000得点を達成した3人目の選手が現れたのだ。2019年3月にこの2人が達成して以来、未踏の記録となっていた“4000得点クラブ”の3人目はジュリアン・マブンガ。

 

 ジンバブエ出身のマブンガは、NCAAディビジョンⅠのマイアミ大出身で、高校時代にはゴードン・ヘイワード(セルティックス)らと共にプレー。プロとしてはイタリアやイスラエル、セルティックス傘下のメイン・レッドクロウズ(Gリーグ)などを渡り歩き、2015年に当時bjリーグの滋賀レイクスターズに加入すると、PGからPFまでをこなす万能性を武器にリーグ屈指のオールラウンダーとして行く先々で大活躍。

 

川崎との2戦でもドライブにスリーにオールラウンドな活躍を見せた

 

 そんなマブンガは通算4000得点まであと11得点に迫った第9節のゲーム1に、これまで同様スターターとして出場。1Qで早速9得点を記録すると、2Q残り5分26秒で代名詞のディープスリーをヒットし、早々に通算4000得点に到達したのだ。

 

 ただ、アウェイ戦でビハインドを背負った状況だったこともあり、記録について触れる者は誰もおらず、当の本人も全く意識していなかった。

 

 試合後の記者会見で記録について伝えると「(記録達成については)分かっていませんでしたし、ほかの人からも何も言われなかったので、今質問された初めて知りました(笑)。教えてくれてありがとうございます」と、あっけらかんとした表情で答えていた。

 

 それでも自身のキャリア全盛期を過ごすBリーグ、そして日本については「本当に日本はすばらしい国だと思っています。それに毎シーズン、リーグのレベル自体も上がっていると感じていますし、それには感謝したいです。レベルが上がってきていることで自分自身もそのレベルに合わせて進歩していく必要がある」と充実感を覚えているようだ。

 

富山の軸として絶大な影響力を持つ

 

 今年で30歳を迎え、富山ではリーダーとして時に浜口HC以上にベンチで声を出し、ハドルを組む際にも必ず中心となっているマブンガの姿を見ることができる。

 

 彼がこの記録に到達するまでに積み上げた試合数は207。外国籍選手だけを見てもマブンガの言葉どおり、年々レベルの高い選手がリーグに加わる中で、日々成長し、継続的に結果を残している事実にはさすがの一言。また、この記録が決して個人スタッツに固執せず「チームが勝つために何ができるかを考えられる選手」と浜口HCが賞賛する献身的なプレーを続ける過程で達成したものであることは、単なる数字以上の価値があると言えよう。

 

 プレー以外でもSNSなどで積極的にファンとコミュニケーションを取り、時に歯に衣着せぬストレートな物言いでも注目を集めるマブンガには、これから先も日本でプレーを続け、より偉大な記録を打ち立ててもらいたいものだ。

 

写真/©︎B.LEAGUE 取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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