月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2020.11.09

生原秀将(横浜)、待ち焦がれた“緊張”の復帰戦

「人生でこんなに長い期間バスケットから離れたことはなかった」

 

 今季開幕前に生原を取材した際、彼はこんな言葉を漏らしていた。今年3月に負った右膝のケガから復帰を目指す生原は今季、改革を目指す横浜の新キャプテンに就任。新型コロナウイルスの影響で来日が遅れていたカイル・ミリングHCが合流するまでの期間は、リハビリをこなしつつコートの外から特に積極的にチームに声を掛けてきた。その中には「プレーできていればコート内からもう少しコミュニケーションを取ってやっていけるのにと感じる部分もあったし、リハビリの時間はどうしてもチームを見られないこともあります」(生原)という葛藤もあった。

 

 

待望の復帰戦は「緊張した」

 

 

 10月28日の第6節を終えた時点で、横浜は2勝8敗で東地区最下位。苦しい戦いを強いられていたが、ショートブレイク期間中にようやくチーム全員がそろった。ミリングHCは「私自身もチームに合流してから初めて選手たちと月曜日から金曜日まで5日間、高い強度で練習ができました」と、この期間を有意義に過ごせたことに充実感を示していた。生原もこの期間中にケガ以降、初めての対人練習に加わることができていたという。

 

 ブレイク明けの初戦(11月7日、8日)は西地区3位の名古屋Dをホームに迎えた。この2戦は、横浜待望の3人目の外国籍選手ロバート・カーターのデビュー戦であると同時に生原の復帰戦ともなった。

 

 復帰の時は思いのほか早く訪れた。「生原選手のプレータイムを制限することは医療スタッフとも話をしていて、コートで一度にプレーするのは(現状では)2〜4分間です。だから試合前のアップが終わってからベンチで長い時間座って、体が冷えてしまってから出すよりは温まった状態の方が彼にとっても良いのではないかという判断でした」とミリングHCが2戦目終了後に明かしたように、1戦目の1Qの残り5分20秒の場面でコートイン。

 

 その瞬間、横浜国際プールに駆け付けたブースターのあたたかな拍手が生原を包み込んだ。「(コートに出て)最初の1分間ぐらいは本当に緊張しました(笑)」と楽しげに復帰戦を振り返った生原。肝心のプレーでも筑波大の先輩、笹山貴哉からのスティールをそのままワンマン速攻につなげて初得点。その後も2本の3Pシュートを沈め17分16秒の出場で8得点を記録。2戦目も15分54秒の間コートに立って3得点、5アシストのスタッツを残した。

 

 

 横浜は結果的に2戦とも敗れてしまったが「今週は本当に楽しく練習ができていました。試合には負けてしまいましたが、悔しいっていう感情も見ている以上に実際にプレーすると余計に感じますし、復帰できてよかった」と、まずは無事復帰できたことに安堵していた。ミリングHCも「私がチームに合流したときから生原選手とはたくさんコミュニケーションを取っていました。チームとしても彼の復帰を心待ちにしていたので、こうして彼が無事復帰できたのはうれしいことです。長い期間試合に出ていなかったこともあって、コンディションが万全でないことももちろんありますが、選手も私自身も彼を信頼しています。これからパフォーマンスも上がってくると思うので、チームを引っ張っていってもらいたい」と、キャプテンの復帰を喜んだ。

 

 

2連敗も徐々に形になってきた横浜の戦いぶり

 

 試合内容を見ても1戦目が81-82、2戦目が71-79と西地区の強豪相手に、決して悲観する試合内容ではなかった。特に1戦目は試合の中で大きなリードを許しかけた場面で何度も持ちこたえ、クロスゲームを演出。2戦目でも3Qまでは互角の戦いを見せていた。「結果はついてきませんでしたが、練習の成果を見せられた部分は評価できますし、あとは試合終盤の締め方だけもう少し練習していかなければいけない」とミリングHC。

 

 試合のクロージングは大きな課題ではあるが、勝負どころで頼れる生原とカーターの存在は課題克服の糸口ともなるはずだ。「まだまだチームに迷惑をかけている部分があるので、早くゲーム感覚などのいろいろな部分を戻していきたい」と生原も意気込んでいる。

 

 シーズン開幕から1か月が経過して、ようやく全ての準備が整った。生原キャプテン率いる海賊団の巻き返しが始まる。

 

写真/山岡邦彦 取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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