月刊バスケットボール5月号

NBA

2020.10.13

2010年以来10年ぶりのレイカーズ優勝でNBA 2019-20シーズンは閉幕!

 NBAの歴史上で最も長いシーズンが幕を閉じた。新型コロナウイルス感染症の影響による約4か月半のシーズン中断期間を含めれば、実に1年。勝者としてこの波乱のシーズンを乗り切ったのはロサンゼルス・レイカーズだった。

 

 現地時間1月26日に起きたヘリコプター墜落事故でコービー・ブライアントと愛娘ジアナをはじめ全9人の犠牲者が出てからというものの、レイカーズはコービーにチャンピオントロフィーをささげるべく、シーズンを戦ってきた。

 

 シーズン中断が決定し、このまま打ち切るべきか、それとも再開するべきかに揺れるリーグの中でリーグ再開派の筆頭となったのがレブロン・ジェームズ。コービーを兄と慕う男は、今年、レイカーズで優勝することに誰よりもこだわっていた。コービーが亡くなった翌日、レブロンはインスタグラムにメッセージを綴っていた。「約束する。あなたの遺志は俺が受け継いでいく。あなたは俺たち全てにとって大切な存在だったし、特にレイカー・ネイションにとってはそうだった。こんなクソッタレなことになってしまったけど、それを背負って進むのが俺の役目だ」。

 

 度重なる緊急事態の中でもブラックマンバの遺志を継ぐという思いがレブロンを、レイカーズを駆り立てた。油断も慢心もなく、プレーオフで16回勝つこと。それだけを念頭に全員がプレーしてきたからこそ、プレーオフ中、誰一人として表情を緩ませることはなかった。レブロンをはじめ、フランク・ボーゲルHCやアンソニー・デイビス、ドワイト・ハワードらも口々に「まだ仕事は終わっていない」と発していたのは印象深い。思えば2009年のファイナルでマジックから2連勝を飾ったときにコービーが「仕事は終わっていない。俺はそう思っている」と語っていた表情と、今季のファイナルでレイカーズの選手たちの表情は全く同じだった。

 

 勝負を決するべく急遽、漆黒の“ブラックマンバ・ジャージ”をまとった第5戦で優勝を決めることはできなかったが、ある意味ではそれが彼らからプレッシャーを削いだのかもしれない。第6戦では序盤から終始試合を支配。獅子奮迅の働きを見せていたジミー・バトラー、手負いのバム・アデバヨとゴラン・ドラギッチに加え、経験値の少ない若手が多かったヒートは精神的にも肉体的にもまさに満身創痍。レイカーズもデイビスがケガを抱えたままプレーしていたが、経験値と優勝に対する意志がヒートに優った。

 

 この第6戦はレイカーズが最大で30点近いリードを奪い、4Q残り2分24秒にはバトラーとアデバヨが、1分27秒にはレブロンとデイビスがそれぞれベンチに下がり、優勝の瞬間を待つばかりとなった。レブロンはデイビスの首に腕を回し、満面の笑みで優勝の瞬間を待っていたが、このときデイビスのことがかつての自分のように映ったようで「あの興奮と『信じられない』という気持ちを思い出した。27歳のデイビスと27歳の自分の姿を重ねて見ていた」と相方の初優勝にも感慨深げだ。

 

 この優勝でレイカーズはセルティックスに並ぶ通算17回目のリーグ制覇。コービーにささげる2010年以来10年ぶりの栄冠だ。シリーズ平均29.8得点、11.8リバウンド、8.5アシストを記録し、自身4度の目のファイナルMVPを獲得したレブロンは異なる3球団で同賞を受賞した初めての選手となり、4度の受賞はマイケル・ジョーダン(元ブルズほか)に次いでNBA史上単独2位に浮上。デイビスも初めてのファイナルで平均25.0得点、10.7リバウンド、3.2アシストという素晴らしい成績を残した。

 

 デイビス獲得直後は若手選手や指名権を放出しすぎ、ラジョン・ロンドやハワードといったクセの強い選手が多いことによるケミストリーの不安など、否定的な意見も少なくなかったが、それは全て過去のもの。正真正銘のチャンピオンとなったレイカーズは優勝トロフィーを持っていよいよLAに帰還した。約3か月間にも及んだ隔離生活を終えた選手たちには、来季開幕までの束の間の休息を愛する家族と共に過ごし、優勝の余韻に浸ってもらいたいものだ。

 

文/堀内涼(月刊バスケットボール)

 

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