月刊バスケットボール5月号

Wリーグ

2020.10.12

女王・ENEOSを育てた名将が日立ハイテクを率いて古巣に挑む

 10月10日、11日のENEOS 対 日立ハイテクの対戦はWリーグ序盤戦の注目カードとなった。それまで東地区はENEOS、西地区はトヨタ自動車が下馬評どおりの安定感を見せて全勝中であったが、東では日立ハイテクも6連勝を遂げていたからだ。そして、好調を見せる日立ハイテクにとってENEOSとの対戦は、自分たちの実力を測るうえの試金石でもあり、内海知秀ヘッドコーチ(HC)が古巣相手にどのようなゲームを見せるかといった点にも注目を集めた。

 

 内海HCは2001〜2012年までENEOS(当時JOMO、JX)を率い、現在にも続く黄金時代を築いた名将である。同時にオリンピックのアテネ大会、リオデジャネロ大会などで女子日本代表を率いている。さらには2018~昨シーズンはBリーグのレバンガ北海道で指揮を執るなど、男女問わず指導に当たってきている。

 

今シーズンより日立ハイテクの指揮を執る内海HC

 

 その内海氏が今シーズンより日立ハイテクのヘッドコーチに就任。徐々に力を付けてきてはいたものの、なかなか下位から脱することができずにいたチームの底上げに着手した。戦力も補強し、シャンソン化粧品から谷村里佳、トヨタ紡織から佐藤奈々美らをラインナップに加え、開幕を迎えると、昨シーズンは後塵を拝したシャンソン化粧品、東京羽田などを相手に勝ち星を重ねてきた。

 

 12連覇を目指し女王に君臨するENEOSとの連戦は結果として2連敗となったものの、どちらのゲームも前半は互角に乗り切った。土曜日の試合を終えた内海HCは「後半に入って渡嘉敷(来夢)選手を抑えられませんでした。今日は前半まで戦えたので、明日は何とか3Qまで…」と振り返りつつ、日立ハイテクとENEOSとの差を「上位チームとはまだまだ体力的な差がある」と評価する。その言葉どおり、日曜のゲームは3Qの半ばまで接戦を繰り広げるも、ベテランの宮澤夕貴、岡本彩也花の活躍で突き放された。トップのレベルを知り尽くしているからこそ、一足飛びに追い付けないことも分かっているのかもしれない。

 

インサイドで張り合う渡嘉敷(ENEOS)と谷村(日立ハイテク)

 

 就任以来注力してきたポイントは「ディフェンスからの早い展開のオフェンス」という。これはENEOSのバスケットボールでもあり、内海HCのバスケットボールでもある。内海HCを知るENEOSの選手たちは、現在の日立ハイテクのバスケットは「ENEOSに似ている部分がある」と口々に語る。

 

 Bリーグ時代に話を聞いた際「男子も女子もやること、コーチするバスケットボールのスタイルは変わらない」と話していたことを思い出す。内海HCはブレることなく、一歩ずつ日立ハイテクを頂点に導いていこうとしているのだろう。

 

写真提供/ W LEAGUE 文/飯田 康二(月刊バスケットボール)



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