月刊バスケットボール5月号

NBA

2020.09.29

波乱の2019-20シーズン 2日後に迫ったレイカーズ対ヒートの頂上決戦

 新型コロナウイルスによるシーズン中断をはじめ、さまざまな出来事が起こった2019-20シーズンのNBAもいよいよクライマックスを迎える。オーランドバブルで最後まで生き残ったのはウェスタン・カンファレンス1位のロサンゼルス・レイカーズとイースタン・カンファレンス5位のマイアミ・ヒート。両者の対決はNBAファイナル史上初めてのことだ。

 

どうしてもチャンピオントロフィーを掲げたい理由がある

 

 まずは、レイカーズ。今季は優勝候補の大本命として期待に違わぬシーズンを過ごし、プレーオフでもブレイザーズ、ロケッツ、ナゲッツをそれぞれ4勝1敗で下す盤石の闘いぶりを見せている。レブロン・ジェームズとアンソニー・デイビスの大活躍ぶりは言わずもがなで、プレーオフ突入以降、より大きなインパクトを与えているのがラジョン・ロンドとドワイト・ハワードのベテラン2人。ロンドは司令塔としての見事なゲームコントロールを見せており、特にレブロンがベンチに下がった際にチームをリードできる貴重な存在となっている。ハワードはロケッツとのシリーズこそ、出番が少なかったが、カンファレンスファイナルゲーム4からは今季初の先発起用。エゴを捨て去り、リバウンドとリム周りで確実に仕事をこなすロールプレーヤーとなった。

 

 今季はコービー・ブライアントへチャンピオントロフィーをささげることが彼らの最大のモチベーションになっており、ウェスタンカンファレンスを制した後もレブロンに笑顔は見られなかった。「Job not finished(仕事はまだ終わっていない)」という言葉がレブロンの決意の深さを物語る。

 

低評価を打ち破る情熱とチームケミストリー

 

 対するヒート。シーズン開幕時点で彼らがファイナルに進出すると予想した者は少なかったはずだ。「ジミー・バトラーはバッドチームメイト」「スターパワーが足りない」。そんな声もあったが、彼らには唯一絶対の情熱とリーグ随一のチームケミストリーが存在した。就任12年目のパット・ライリーHC、17年目の大ベテランユドニス・ハスレム、そしてNBA界のビッグファーザー、パット・ライリーの下、強固なアイデンティティーを構築したチームはバトラー、ゴラン・ドラギッチのベテランコンビにバム・アデバヨ、タイラー・ヒーロー、ダンカン・ロビンソンという若手が融合。バブルで勢いに乗るペイサーズをスウィープ、優勝候補の一角バックスを4勝1敗、実力者がそろうセルティックスを4勝2敗で撃破した。

 

 ヒーローの「バトラーは最高のチームメイトで兄のような存在。彼のためにトロフィーを掲げたい」という言葉がチームケミストリーのすばらしさを端的に表している。低評価を自らの努力で覆した集団にはアンドレ・イグダーラ(04年全体9位指名)以外、1順目1桁指名を受けた選手が一人もいない。レイカーズの圧倒的有利という見方は変わらないが、そういった評価をことごとくはねのけてきたのが今季のヒートであり、在籍する選手たち自身だ。

 

 NBAファイナルズは日本時間10月1日(木)にスタートする。レブロン対バトラー、デイビス対アデバヨのマッチアップは要注目だが、カギを握るのは彼らだけでなはい。レイカーズのダニー・グリーンやケンテイビアス・コールドウェル・ポープ、カイル・クーズマとヒートのヒーロー、ロビンソンのアウトサイドショット、ロンドとハワードのベテランを迎え撃つイグダーラとジェイ・クラウダーがゲームにどのような違いをもたらすかによって、シリーズの行方は我々の想像とは異なるものになるかもしれない。

 

 レイカーズの10年ぶりの優勝か、ヒートの7年ぶりの王者返り咲きか。波乱のシーズンの頂上決戦を楽しみたい。

 

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(月刊バスケットボール)



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