【コービー・ブライアント追悼コラム】親友が娘に付けた名
レブロン・ジェームズ(レイカーズ)、ドウェイン・ウェイド(元ヒートほか)、カーメロ・アンソニー(ブレイザーズ)の同期3人組はプライベートでも非常に仲がよく、オフシーズンには家族ぐるみでバカンスに出かけるほどの深い関係性を築いています。彼らのようにNBA選手同士が親友と呼べる関係性にあることは少なくありませんが、生前のコービー・ブライアントは大多数のNBA選手とは違ったプライベートを過ごしていました。
恐ろしいまでのストイックさとバスケに懸ける並々ならぬ闘志を秘めていたコービーはチームメイトとも簡単には馴れ合わず、結果、その中から親友と呼べるような関係性を持った選手はわずか4人。本当に少なかったのです。
1人目はデレック・フィッシャー。1996年のドラフト同期であり、レイカーズでは共に頂点を極めた盟友です。30代に差し掛かり、チーム内では年長組だったコービーがその言葉に耳を傾けた数少ない選手がフィッシャーでした。
2人目はロニー・トゥリアフ。フランス人ビッグマンでレイカーズではムードメイカー的な役割を担った選手。プロ意識の高さに共感を覚えたコービーは、選手としての実力では圧倒的な差があったトゥリアフを4人のうちの1人と認めています。
3人目はカロン・バトラー。チームメイトとして過ごした期間こそ短かったものの、コービー同様に練習熱心だったバトラーはレイカーズを去った後もコービーと良好な関係を築いていたそうです。まずはプロとしてあるべき姿を示すことがコービーにとっては最重要だったことは間違いありません。
そして4人目。最後の1人はパウ・ガソルです。09、10年のリーグ連覇において、コービーに次ぐ2番手として活躍したスペイン人ビッグマン。コービー自身が幼少期にイタリアに住んでいたこともあり、彼らは時にスペイン語で会話することもあったそうで、コート内外で名コンビとして時間を共にしました。
コービーはキャリア後期の連覇を「あのスペイン人(ガソルのこと)がいなければ優勝なんてできなかった」と振り返っています。あの自信家のコービーにそこまで言わせる選手はそうはいないでしょう。
そんなガソルと彼の妻キャット・マクドネルさんの間に先日、女の子が誕生しました。娘の名はエリザベット・ジアナ・ガソル。そう、コービーの娘と同じ名を自身の娘に付けたのです。ガソルはSNS上で喜びを伝えると共に「娘にとても意味のある名前をつけた」と投稿し、テキストの最後には #girldad と付けられていました。4人の娘を持つコービーも自身を「girl dad 」(直訳すると女の子の父)と表現していたことへのオマージュでしょう。
バスケ選手としても将来有望で、最もコービーに似ているのが次女であるジアナでした。不慮の事故により、夢半ばでその生涯に幕を下ろしてしまった2人。残された家族やコービーを兄と慕うレブロン、ブライアント一家と親密な関係を築き、直接教えを授かったサブリナ・ヨネクス(WNBAニューヨーク・リバティ)らマンバ・メンタリティーを引き継ぐ者たちはたくさんいます。
コービーの数少ない親友であったガソルと彼の妻の間に生まれた娘さんもまた、コービーの意志を引き継ぐ一人となったのです。
文=堀内涼
写真=佐々木智明