月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2020.06.08

“ミスターシーホース”こと桜木ジェイアールが引退会見を実施「オフコートでナイスガイだった選手と記憶されたい」

 6月8日、シーホース三河で19シーズンにわたって活躍し、先日現役引退を表明した桜木ジェイアールが引退会見を実施した。クラブが本拠地を置く愛知県の地元メディアをはじめとした多くのメディアが会見に出席した(会見はオンラインにて開催)。

 

 まず、引退の経緯については「シーズン終了後に鈴木ヘッドコーチと話し合いをしました。そのタイミングでWリーグのアイシンAWからもテクニカルアドバイザー就任の話が来ており、このタイミングと決めました」と桜木。

 

 クラブ公式サイトを通じて「まさか、日本でバスケットボールをプレーするとは思っていませんでした。まさか、シーホースで19年間もプレーするとは思いませんでした」とコメントしていた桜木。NBAではあまり良い経験ができなかったという桜木にとって、安住の地となったシーホース、そして日本という国への思いは強く、「19年間も日本でプレーしました。僕の人生の約半分くらいです。最初は第二の故郷という感じでしたが、最近は日本が自分にとって本当の故郷のようなイメージになりました。一番居心地が良い場所になって、他の場所や他の国に住むよりも日本にずっといたいという気持ちになりました」と言うほどだ。

 

 

 2007年に帰化し、日本代表として日の丸を背負った。これも「自分が帰化することで日本代表を強くしたい」という思いからで、元NBA選手としては初の日本代表入りだった。19年間でリーグ優勝6回、シーズンMVP3回、オールスター選出12回を誇るレジェンドは、日本バスケットボール史に大きな爪痕を残した。

 

 新型コロナウイルス感染症の影響で中断となってしまった2019-20シーズンは41試合中40試合(内28試合はスターター)として出場し、平均22.3分のプレータイムで7.8得点、5.2リバウンド、3.0アシスト、FG成功率53.1%を記録。平均得点こそ、来日以来初めて2桁に届かなかったが、43歳となってもなお、いぶし銀の活躍でチームの大黒柱であり続けた。

 

 攻防において圧倒的な存在感を放った若手時代、抜群の安定感で常勝軍団のエースとしての地位を確立したキャリア中盤、そして精神的支柱であると同時に高いIQでチームを支えたキャリア晩年。それぞれの時代においてシーホースの顔は常に桜木だ。

 

“桜というのは日本文化とつながっている。日本文化、ファンとつながりを作りたくて、桜の木を選べばそのつながりが深くなるのではないか”

 

 今回の会見で桜木があたらめて語った“桜木”という苗字に込められた思いだ。ファンサービス旺盛な桜木はコート外でも多くのファンから人気を集めていた。彼はキャリアの中で三河ファンをはじめとした多くの日本人ファンとつながった。その由来のように。「オンコートではあまりナイスガイではなかったかもしれません。でも、オフコートではナイスガイだった選手として記憶されたい」。これは現役中に常にファンとの交流を大切にしてきた桜木らしい言葉だ。

 

会見終了後には愛するシーホースの後輩たちから花束が贈呈された

 

「皆さんに感謝の気持ちを伝えること、言葉にすることは難しいです。本当にファンの皆さんにお礼を言いたい。今までチームメイトだった皆さんにも感謝を伝えたい。特に19年間、最初から最後までずっと応援してくれたファンの皆さん。皆さんには本当に感謝しています。ありがとうございました」

 

 桜木は会見をそう締めくくった。

 

 今後は日本でのヘッドコーチ就任を目指すファーストステップとして、Wリーグのアイシン・エィ・ダブリュでテクニカルアドバイザーに就任する。桜木ジェイアールの第二章はすでに始まっている。

 

(月刊バスケットボール)



PICK UP