月刊バスケットボール6月号

NBA

2020.06.05

【コービー・ブライアント追悼コラム】シャキール・オニールの「贈る言葉」 Part2

前回に続き、シャックによるコービー追悼スピーチの後半を紹介します。マイケル・ジョーダンによる追悼スピーチに続いて登壇したシャックの言葉は、話し始めてから正味4分10秒ほど。それはとても心温まる時間でした。

文=柴田 健

 

2002年、3連覇を達成した直後の2人(写真=佐々木智明)

 

 

シャックのスピーチ(後半部分)

※前半はPart1をご覧ください

 

 ときどき幼い子どものように言い争ったり、喧嘩をしたり、からかいあったり、ろくでもないことを言って攻撃的になったりしたことはありました。でも誤解しないでください。周囲からみれば仲たがいしていたと思われていた時にも、カメラが向けられていないところで、彼と私はお互いにウインクして「ガツンとやってやろうぜ」などと言っていたんです。決して深刻には考えていませんでした。本当はお互いを尊敬していたし、愛情を持っていました。

 

 コービーを私が一目置く存在になった日は、みんなが不平を漏らしていました。「シャック、コービーがパスを回してくれないよ」というわけです。そこで「オレが話そう」と答え、彼にこう言ったんです。「コービー、“TEAM”という言葉に“I”はないんだゾ!」。コービーの答えは「知ってますよ。でも、残念ながら“M”と“E”があるんでね」でした(笑顔)。

 

 私はみんなのところに戻って、リック(フォックス)と“ビッグショット・バッバ(ロバート・オーリー)”に説明しました。「さあ、みんなリバウンドを頑張ろう。あいつからパスは来ないよ」

 

 マンバ、君は我々の前からあまりにも早く奪われてしまった。君は人生の次なる舞台に立とうとしていた。でも、これからは我々が君のレガシーを語り継いでいく。君は自分に対して、すべての困難、例えば抑圧や挑戦などは、自分が上昇できる機会だと言っていたな。その賢明な助言を受け、(我々も)この苦しみから立ち直り、そろそろ心を癒すとしよう。

 

 弟よ、我々はいつも君の味方だ。こっちのことは任せてくれ。ナタリア、ビアンカ、そして小さなカプリには、私が君のムーブをすべて説明するから。ただしフリースローの技術だけは教えないと約束するよ。

 

 こうして話している間に、コービーとジジが手をつないで近くのバスケットボール・コートに歩いていっているのではないかと思うと、実際に私の心も癒されます。コービーは今日もまた新しい“マンバ・ムーブ”を見せて、ジジが即座にそれをやって見せているかも。コービー、君は天国のMVPだ。愛しているよ、オレの相棒。また逢う日まで安らかに休んでいておくれ、コービー。

 

 

シャックが語る「コービー・ロブ」

 

 以上がシャックの追悼スピーチ全文になります(前半部分は前回投稿文をご覧ください)。話し始める前に1度、また話している間にも、気持ちを落ち着かせるように深く深呼吸したシャックの様子からは、誤解を招くことなくコービーへの親愛の情を伝えようという生真面目な姿勢が感じ取れました。「“TEAM”に“I(オレ)”はないが“M”と“E”(あわせると“I”の目的格である“ME”になる)はある」…のエピソードの直後、会場は爆笑に渦に。シメでは自分がフリースローを不得意としていたことをネタにしながら、ブライアント家への変わらぬ支援を約束し、さらに場内を和やかな空気で包みました。

 

 今年の4月、ESPNのスポーツセンターへのリモート出演で、シャックは大好きな思い出として、Part1で触れた2000年6月4日のコービーからのアリウープをあげています。「あの試合に勝っていなかったら、3回(のリーグ制覇)はなかっただろう。大事な試合で、17点差の劣勢に立たされたときにはフィル・ジャクソンが、『また夏に会おう。いいシーズンだったが、今日はうまくいかなさそうだ…』なんて言い出したので、コービー、B-ショウ(ブライアン・ショウ)、リック・フォックス、皆で顔を見合わせた。そこからの逆転劇だったんだ。コービーには、『こっちが空いてるぜ、いつでもパスをよこせ』と言った。コービーか私かがゴールに向かうたびに相手のディフェンスが2-3人ついてきていたから、『さあ来い、いつでもいいぞ』と言い続けていたところに、あのロブが来た。正直ちょっと高すぎたくらいだったが、思いっきり腕を伸ばしてつかみ、決めることができたんだ。見たらわかるだろうけど、いいプレーになったよ。コービーからのロブはものすごく高い位置だったけれど、くらいついて叩き込んだ。あのプレーがお気に入りだよ」

 

 シャックとコービーの関係は確かに複雑だったのでしょう。しかしシャックがこのプレーを取り立てて紹介していることからも強く感じられるのは、両者の根底にある信頼や友情、向上心といった前向きな力の存在です。シャックの追悼スピーチも、2000年代のレイカーズの栄光を生んだそういった力をあらためて思い出させてくれるものでした。

 

 

補足:シャックのスピーチ原文(後半部分)

※前半はPart1をご覧ください

 

And yes, sometimes like immature kids, we argued, we fought, we bantered, we assaulted each other with offhand remarks on the field. Make no mistake, even when folks thought we were on bad terms, when the cameras are turned off, he and I would throw a wink at each other and say let’s go whoop some ass. We never took it seriously. In truth, Kobe and I always maintained a deep respect and a love for one another.

 

The day Kobe gained my respect was, the guys were complaining, said, “Shaq, Kobe’s not passing the ball.” I said, “I’ll talk to him.” I said, “Kobe, there’s no ‘I’ in ‘TEAM’!” He said, “I know, but there’s an ‘M-E’ in that motherf—.”

 

So I went back and told Rick and Big Shot Baba and said, “Just get the rebound, he’s not passing it.”

 

Mamba, you were taken away from us way too soon. Your next chapter of life was just beginning. But now it’s time for us to continue your legacy. You said yourself that everything negative, pressure, challenges is all opportunity for me to rise. So now take the sage advice and now rise from anguish and begin with the healing.

 

Just know that we got your back, little brother, I’ll look after things down here, I’ll be sure to teach Natalia, Bianca and baby Capri all your moves. And I promise I will not teach them my free throw techniques.

 

For now, I take comfort in the fact as we speak, Kobe and Gigi are holding hands, walking to the nearest basketball court. Kobe will show his new Mamba moves today and Gigi soon master them. Kobe you’re heaven’s MVP. I love you, my man. Till we meet again. Rest in peace, Kobe.

 

 

コービー追悼特設ページ『Dear Kobe Bryant』

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(月刊バスケットボール)



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