月刊バスケットボール6月号

NBA

2020.02.17

熱狂のNBAオールスター・ウィークエンドが完結! 初代『コービー・ブライアントMVPアワード』はカワイ・レナード(クリッパーズ)が受賞!

「みんなどうか立ち上がってください。そして、手をつないでください」

 

 マジック・ジョンソン(元レイカーズ)のこの言葉を受けて会場全体が一体感に包まれ、コービー・ブライアント(元レイカーズ)、そしてデビッド・スターン元NBAコミッショナーへの8秒間の黙とうからNBAオールスターゲームがスタートした。

 

 今回のオールスターゲームはクリス・ポールの提案によって、通常とは異なるレギュレーションで試合が行われた。1Q序盤からエナジー全開でプレーしたのは、チーム・ヤニスのキャプテン、ヤニス・アデトクンボ(バックス)。初得点となるスラムダンクをリングが壊れんばかりに豪快にたたき込むと、その後も攻防にレギュラーシーズンさながらの熱のこもったプレーを見せた。対するチーム・レブロンは昨季のファイナルMVPカワイ・レナード(クリッパーズ)が3Pシュートを連発。元同僚のパスカル・シアカム(ラプターズ)が「もう打たないでくれ」と懇願するほどのシュートタッチを披露し、1Qだけで4本をヒット。

 

※通常の4Q制ではなく、1Qごとに勝敗が決し、1~3Qの合計得点が高いチームのスコアに24点を足したスコアがファイナル・ターゲット・スコアとなる。4Qはどちらかのチームがそのスコアに到達した時点で終了となり、時間制限はなし。

 

 レナードの猛攻に一人立ち向かったアデトクンボの姿は、集中状態のブライアントのように映り、この本気の姿勢はチームメイト、そして相手選手にも伝染。徐々にエンジンがかかり始め、トレイ・ヤング(ホークス)のブザービーターで前半が終了。最初の2クォーターは1勝1敗と星を分けた(1Q…53-41でチーム・レブロン、2Q…51-30でチーム・ヤニス)。

 

ブライアントの大ファンでもあるアデトクンボは、アグレッシブにプレーし続けた

 

 3Qは互いに41点ずつを取り合い、この時点でのトータルスコアは133-124とチーム・ヤニスの9点リード。3Q残り2.2秒、41-41の場面で、この12分間を勝利で終えたいチーム・レブロンがタイムアウトからセットプレーを仕掛ければ、勝ち越しを許したくないチーム・ヤニスもアデトクンボ、ジミー・バトラー(ヒート)、ルディ・ゴベア(ジャズ)ら、ディフェンシブなラインナップで応戦。その光景はプレーオフのゲーム7のような真剣勝負だった。

 

 そして迎えた最終4Q。このクォーターは、チーム・ヤニスの積み上げた133得点に“24”を加えた157得点が、ファイナル・ターゲット・スコアに設定。時間無制限という過去に例のないルールの下、両チームが普段以上に一つのポゼッションを慎重に、かつ真剣に戦ったことでこれ以前の3Qに比べてスコアが全く伸びず。145-141でチーム・ヤニスがリードした場面以降は、互いにディフェンス合戦。

 

レナードは3Pシュート8本を射抜き、MVPを獲得した

 

 アデトクンボがレブロンのフェイダウェイジャンパーをブロックすれば、レブロンも負けじとアデトクンボをインサイドで完封。ペイントに侵入すればダブルチーム、トリプルチームを仕掛ける白熱の展開を見せ、審判への抗議にはあわやテクニカル・ファウルが宣告されるのではないかというほどの激しいものへと試合展開は移り変わっていった。

 

 そんな緊張感の漂う最終Qの攻防に終止符を打ったのは、地元出身のアンソニー・デイビス(レイカーズ)。レブロンからのパスを受けたデイビスは、カイル・ラウリー(ラプターズ)からファウルを誘発。これによって得たフリースローを1投沈め、遠かった157点目を記録し、チーム・レブロンの勝利を確定させた。『コービー・ブライアントMVPアワード』と名前が変わったMVPトロフィーは、30得点の大活躍を見せたレナードが受賞。「この賞には本当に言葉が出ない。コービーが僕にしてくれた全てに感謝している。この賞は彼に捧げます」と喜びをかみしめた。

 

15日のライジングスターズに出場した八村(中央)、馬場(左)、渡邊。日本人3選手がこの舞台で顔をそろえた!

 

 ライジングスターズでの八村塁(ウィザーズ)の活躍に史上屈指の名勝負となったスラムダンク・コンテスト、そして壮絶な戦いとなったオールスターゲーム本戦と、今回のオールスター・ウィークエンドには 、華やかさと真剣勝負という言葉がふさわしい。今日のNBAを、オールスター・ウィークエンドを作り上げたスターン氏の意志、マイケル・ジョーダン(元ブルズほか)が伝説を築き上げたシカゴという街の雰囲気、そしてブライアントが貫いた勝利への執念――。

 

 それらが3日間のイベントに“熱狂”というスパイスを振りかけたのだ。

 

(月刊バスケットボール)



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