月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2020.01.30

マンバ・メンタリティーを受け継ぐ男ライアン・ケリー(SR渋谷)「全ての時間をしっかりと戦い抜くことがコービーから受け取ったマンバ・メンタリティー」

 

 Bリーグ第20節の千葉vs.SR渋谷の一戦はNBAレイカーズのレジェンド、コービー・ブライアントが亡くなって以降、初の試合。試合前にはコービーに敬意を表し、彼の現役後期の背番号24になぞらえ、24秒間の黙祷が捧げられた。

 

 その瞬間を誰よりもエモーショナルな気持ちで迎えていたのはSR渋谷の#34ライアン・ケリーだろう。Bリーグでもチームの中心として活躍を続けてきたケリーは元NBA選手。4年前にはレイカーズに所属し、コービーとは3年間チームメイトとして時間を共にした。また、今や語り草となっているコービーの引退試合にチームメイトとして立ち会い、出場機会を得た8人(コービーを除く)のうちの一人だ。

 

 この試合でまず目を引いたのが選手たちが着用したシューズ。SR渋谷の#32山内が2010年にレイカーズが優勝したときにコービーが着用していた「zoom kobe 5」を着用すれば、千葉の#4フリッピンはサイドに「LL KB LL GG」と書いた「zoom kobe 4」を着用。ケリーも普段履いているPGシリーズではなく、復刻モデルの「zoom kobe 4」でこの日の試合を戦った。

 

ケリーはこの日、コービーシリーズ随一の名作で試合に臨んだ

 

「コービーへのトリビュートという意味を込めて今日はこのモデルを履いていた。彼は常日頃から一つ一つのポゼッションを、全ての時間をしっかりと戦い抜くことを説いていて、それこそが僕がコービーから受け取ったマンバ・メンタリティー。プロとはそうあるべきなんだ」とケリー。この日は83-91で敗れはしたものの、試合全体を通じたファーストショットを放ったのはケリーで、最終的には3Pシュートを10本中5本、フリースローを7本中5本決め、計22得点。この2項目に関してはシーズン平均(3P…7.3本、FT…4.3本)よりもずっと多い試投数で、勝利への意欲、積極性があってこその数字だろう。

 

 伝説の引退試合について話が及ぶと「その試合が近付いてきたときに父から電話があったんだ。『その試合に立ち会える機会があることにまず感謝をしなさい。そういう機会が与えられる人というのは本当に限られていて、本当に恵まれている。まずはそれにしっかりと感謝しなさい』と言われて試合に臨んだんだ。あの試合は自分にとって特別なものになったし、いかにコービーが偉大だったかを改めて感じた。コービーが今まで成し遂げてきた様々な偉業に感謝した試合になったよ」と当時を懐古する。

 

試合は敗退。次節以降の巻き返しを誓った

 

 試合に敗れたことに関しては苦笑いを浮かべていたが「今日の試合の結果はそこ(勝利への欲、マンバ・メンタリティー)が足りていなかった。次は勝てるようにしっかりと準備していきたい」と今後の巻き返しを誓った。

 

 平穏な日常はいつ崩れ去るか分からない。だからこそ、ケリーがコービーから教わったように全ての時間をしっかりと戦い抜く、生き抜く必要がある。ロサンゼルスからはるか9,000キロ離れた東京・渋谷で奮闘するケリーもまた、コービーの意志を継いでいく一人なのだ。

 

(月刊バスケットボール)



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