月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2019.12.13

人生初のラストショットを託されたSR渋谷の杉浦佑成「ああいうシュートを決められてこそ」

(苦い経験からの学びを持って、更なる成長を誓う)

 

 Bリーグ第11節のSR渋谷対A東京の一戦は終始2桁リードを保っていたSR渋谷に対し、最後の最後で粘りを見せたA東京が大逆転勝利を飾った。試合序盤から#9ベンドラメの3Pシュートが面白いように決まったSR渋谷はインサイドでも#2サイズと#10ジャクソンが奮闘し、A東京を圧倒。得点源の#53カークと#24田中のラインをも封じ込め、リバウンドも47-36と大きく差を付けた。

 

 しかし、そこから#5ジョーンズらの奮闘でじわじわと詰め寄られ、残り1分で逆転。そのまま逃げ切られてしまった。この試合、最終的にはA東京に軍配が上がったわけでが、勝敗の差は紙一重。2点を追うラストプレーでSR渋谷はベンドラメのアイソレーションに勝負を委ねる。ベンドラメはこの日、3Pシュート5本を含む26得点を挙げていただけに、それは容易に想像できる選択肢だった。

 

 「(最後のプレーは)礼生の1対1でした。だけど、ヘルプが寄ってきたから彼にパスをさばいた。負けましたけど、良い試合だったと思います」と伊佐勉HC。「彼」とは#14杉浦佑成のこと。ベンドラメからのパスを受けた杉浦は地鳴りのようなアルバルクコールが鳴り響く中、コーナーから逆転を狙った3Pシュートを放つ――。

 

(杉浦のラストショットは惜しくも決まらず/©B.LEAGUE)

 

 「『来い!』って思ってたんですけど、いざボールが手に渡った瞬間、会場の雰囲気が一気に伝わってきて…」と語った杉浦のシュートはリングからこぼれ落ちた。福岡大附大濠高、筑波大でエースとして数々の修羅場を潜り抜けてきたが、逆転のラストショットを託されたのは人生で初めての経験。「動揺というか、狂いました。全然違うっすね、まるで別物でした」と、プレッシャーと会場の雰囲気が手元を狂わせたことを認めた。

 

 試合終了直後にはチームメイトたちから頭をポンっとたたかれ「良いシュートだった」と声をかけられそうたが、「(今シーズンの)5敗のうち、2つが最後に僕が決めていれば…という試合だったので、悔しい」とショックを隠せない。

 

 大学まではインサイドを軸にプレーしてきた杉浦だが、Bリーグではスモールフォワードにコンバート。今シーズンはスポットアップシューターとしても活躍の幅を広げている。好調なだけに、「ああいうシュートを決められてこそ」(杉浦)と、強く思ったのだろう。ゴールに正対したプレーを躊躇し、ドリブルをすればすかさず相手のガード陣に寄ってたかってボールを奪いにかかられていた杉浦の姿はもうそこにはない。

 

 「(馬場)雄大は自分に行きたいところ(NBA)に少しずつ近付いているし、青木(保憲)もあれだけガードの層が厚い川崎で、持ち味の体を使ったディフェンスとシュート力がだんだん出せている。すごく刺激になります」と、杉浦。筑波大で共に戦った仲間の成長も自身の飛躍の糧とし、日々まい進していくだけだ。

 

(月刊バスケットボール)



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