月刊バスケットボール6月号

プロ相手に奮闘! 福岡第一高・河村勇輝が感じた“楽しむこと”の大切さ

 

 11月30日~12月1日、全国8会場で「第95回天皇杯・第86回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会」の2次ラウンドが開催され、ファイナルラウンド(1月9~12日@さいたまスーパーアリーナ)に進出する男女各8チームが決定した。

 

【男子】

A東京/宇都宮/SR渋/三河/富山/川崎/北海道/滋賀

 

【女子】

日立ハイテク/山梨/トヨタ紡織/デンソー/アイシンAW/三菱電機/トヨタ自動車/JX-ENEOS

 

 

 2次ラウンドの中でも、大きな話題となったのが千葉ジェッツvs.福岡第一高の一戦だ。今年のインターハイを圧倒的な強さで制した高校No.1チームが、B1の強豪クラブにどのような挑戦を見せるのか、また、富樫勇樹(千葉)と河村勇輝(福岡第一)の司令塔対決にも注目が集まり、会場のノーリツアリーナ和歌山は立ち見が出るほどの超満員となった。

 

 結果的に、試合は109-73で千葉が勝利。ただ、21得点10アシスト6スティールを記録した#8河村を筆頭に、福岡第一の選手たちはプロ相手にも持ち味を遺憾なく発揮して会場を何度もどよめかせ、12月のウインターカップに向けて貴重な収穫を得た。ここでは河村のインタビューをお届けする。

 

#8 河村 勇輝

(福岡第一/3年/PG/172cm)

悔しい気持ちはすごくありますが、

純粋に、全力で楽しみながらプレーできました」

 

 

――幼い頃からの憧れの存在であり、以前、将来日本代表のPGを目指す上でライバルにしたいとも話していた富樫選手とのマッチアップでした。

「まだまだ自分の実力不足を感じました。やれた部分も少しはありましたが、プロからすれば、自分たちは小学生みたいなものだと思うので…。富樫さんは『全力でやった』と言ってくれましたが、全力でやろうと思っても、なかなか気持ちが乗らなかったりプレーが少し雑になったりするのは当然だと思います。だからこれが富樫さんの本気ではないと感じましたし、自分がもし将来プロの舞台で戦う機会があれば、本当の本気の勝負でやり合えるように頑張りたいと思いました。ただ、今回は富樫さんに対してどんどん挑戦しよう、と意識してプレーして、その気持ちを持って戦えたことはこれからのいい経験になりました」

 

――河村選手は、この試合に向けて大会前からかなり強い意気込みを持っている様子でしたね。

「高校の大会はウインターカップが最後で、もちろんウインターカップが一番大事ですが、高校生の立場でプロと戦えるというのは今回が人生で最後です。だから自分の人生を懸けるくらいの気持ちで、この試合に向けても高いモチベーションを持ってコンディションを合わせてきました。個人練習でも富樫さんを残像として意識してきましたし、相手はオンザコート2でビッグマンが2人いるので、1人かわして打ててももう1人にブロックされるかもしれない。だから1人かわしたあとのフローターシュートの練習は結構してきました。実際に対戦してみて、シュートを決められた部分もありますが、やっぱりブロックされてしまうケースもあったので、まだまだ課題は多いです。ただ、大きい相手に対してどう工夫してパスを通すか、という課題を意識してきて、今回何本か通せたことは自信になりました。大会前の準備も含めて、もう一段階レベルアップできるいい経験になったと思います」

 

――高校生らしいプレーで、会場を何度も沸かせました。

「Bリーグでは、ビッグマンを生かすためにもわりとゆっくりボールを運んで、ピック&ロールなどで攻めるのが主流だと思います。でも自分たちはまずはアーリー、ディフェンスから速攻を狙うのがスタイルで、今回はそれを貫いてどれだけプロ相手に通用するか、ということに重点を置いていました。何本か速攻も出ましたし、足を使ったディフェンスなどすごく高校生らしいプレーができたことは良かったです」

 

――タイミングの合ったアシストが見事でしたが、特に内尾選手のタップシュートにつなげるようなアシストは息ピッタリでしたね。

「あれは、特に試合中『やろう』と決めてやっているわけではなくて、自分がまず点を取りにいくという気持ちで攻めて、ディフェンスが寄ってきたところに(内尾)聡理がいるかなと思って投げると、本当にジャストタイミングでいてくれるんです。ああいう練習をしているわけではないし、アイコンタクトやコミュニケーションも別に取っていなくて、お互い無言でやっています(笑)。自然と感覚でやっている部分が大きいですね。何も言わなくても、『そこにいてくれるだろう』『パスが来るだろう』という信頼関係があるのかなと思います」

 

――次はいよいよウインターカップ、高校最後の舞台です。

「今回の天皇杯は、悔しい気持ちはすごくありますが、言ってしまえば勝ち目がないような格上の相手に対して、逆に純粋に、全力で楽しみながらプレーすることができました。勝ち負けをあまり気にせず、1プレー1プレーがプロ相手にどれだけやれるかという挑戦で…。思えば高校2年生から3年生にかけて、勝つことばかりを意識して、純粋にバスケットを楽しめていなかったかもしれません。だから高校最後のウインターカップでは、勝つこともとても大事ですけど、何よりバスケットを全力で楽しみたいです」

 

――河村選手が、“楽しい”と感じるのはどんなときですか?

「やっぱりディフェンスをしっかり頑張って速攻が出ているときは、『厳しい練習をした甲斐があったな』とか『福岡第一らしさを出せているな』と感じてすごく楽しいですし、個人的にはいいパスが通せて会場を沸かせることができるとうれしくて、それも楽しみの一つです。勝つことばかり意識するのではなく、楽しく真面目に全力でバスケットボールに取り組めば必然的に勝ちもついてくると思うので、ウインターカップはそういうところを意識しながら戦いたいと思います」

 

試合後は両者抱き合って健闘をたたえ合った

 

※ウインターカップ展望は、12月25日発売(ウインターカップ会場では23日発売)の月刊バスケットボール2月号で!

 

(月刊バスケットボール)

 



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