月刊バスケットボール5月号

【記者の目】ウインターカップ12/29〜優勝を引き寄せた“東北の粘り”〜

  明成の大会3連覇で幕を閉じたウインターカップ。   決勝は決して楽な戦いではなかった。内外リズムよく得点を重ねる土浦日本大に長く主導権を握られ、前半を終えて明成は3点のビハインド。3Q残り4分には9点差を付けられ、まるで秋の国体決勝、すなわち土浦日本大主体の茨城に敗れたゲームを再現するかのような苦しい展開が続く。  

  しかし、国体の負けから学んでいた明成の選手たちは、慌てずに我慢した。冷静に、かつ思い切りの良いプレイで勢いに乗り、3Q終盤から一気にたたみかける。4Q最初の5分間を無失点に抑えると、オフェンスでは#8八村、#6納見がチームを引っ張り、逆転で勝利をつかんだのだ。   そうした、どんな苦境にも挫けず跳ね返す底力。その裏にあるのは「東北の粘り強さ」だと、明成・佐藤コーチは言う。「震災で大変な被害に遭われた方たちが、辛抱して今の復興に司っている。そうした東北の地の環境が、我々にも影響を与えたのではないかと思います。また、初出場の東北高校の粘り強さや、同じ東北地方の能代工業の戦い方を見て、やっぱり粘らなければいけないな、という原点に返ることができました」と佐藤コーチ。   また、そんな言葉を受けて八村も、「昨日の能代工業の試合(準決勝)で、頑張っている彼らを見て、僕は本当に勇気をもらって、同じ東北勢として頑張ろうと決勝に臨みました。東北の力が決勝で出せたんじゃないかなと思います」と同調する。  

  確かに今大会、東北勢の粘りのバスケットは強いインパクトを残した。佐藤コーチが話に触れたように、能代工高校は留学生のいるチームを次々破って久しぶりに3位と躍進し、初出場の東北高校は何度引き離されても諦めず延岡学園を1ゴール差で破ってベスト16入りを果たしている。   他県からも選手が集う明成には東北出身ではない選手も多いが、佐藤コーチは常に選手たちに東北らしい粘り強さを求め、育んできた。そして宮城の地で震災からの復興を肌で感じ取り、東北の他のチームと切磋琢磨してきたことが、勝利を引き寄せる辛抱強さにつながったのだ。3連覇の偉業達成の裏側には、そんな“東北の粘り”が欠かせなかった。   (月刊バスケットボール編集部)  

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