月刊バスケットボール5月号

【短期連載】倉石平の“スペイン”研修ダイアリー①

倉石平氏(早稲田大スポーツ科学学術院教授/元男子日本代表ヘッドコーチ)が3月にスペインへ渡り、レアルマドリードをはじめとするクラブチームや施設、そしてアンダーカテゴリーの様子などを見て周ったレポートを連載する。全5回。

フエンラブラダのホームコート   倉石平氏(早稲田大スポーツ科学学術院教授/元男子日本代表ヘッドコーチ)が3月にスペインへ渡り、レアルマドリードをはじめとするクラブチームや施設、そしてアンダーカテゴリーの様子などを見て周ったレポートを連載する。全5回。   中学生のスペイン遠征は今年で3回目。今まではバルセロナ近郊を訪れたが、今回はマドリード近郊となった。急に“中学生の遠征”といっても、経緯が分からないと思うので、その辺りから書いてみたいと思う。   初めての遠征はバルセロナのエージェントから「子どもの大会を開いているが、来ないか」と打診され、試しだと考えて行くことにした。その結果、なかなか勉強になることが多く、しかもヨーロッパのフランス、イタリア、ドイツ、ポルトガル、そしてスペインは、FCバルセロナをはじめとするクラブが参加していたため、大変有意義な交流ができた。トップクラスのゲームには参加できなかったが、セカンドデビジョンでは見事優勝。次年度からは、トップとゲームができることとなった。   2回目は、単純にスペインのクラブとゲームをする形となったが、これとても強く、ゲームとして成立しないのではという相手もいた。しかし、日々成長する子どもたちのトライする姿勢には驚きもあり、遠征に連れてきて良かったと思ったのである。   今回は3回目、初めてのマドリードだ。

フエンラブラダのオフィス   ★第1日目 昼ごろマドリード郊外(南へ約23km)のフエンラブラダに到着。この町のクラブでリーガACB(スペインプロバスケットボール1部リーグ)に所属する“フエンラブラダ”がある。その隣にあるホテルにチェックイン。子どもたちは元気で、西行きは時差調整も比較的楽だということの証明でもある。サーカディアンリズム(体内時計)はあまり狂わないようだ。   ただ、このスペインはシエスタ(昼休憩)の国で昼寝をするため、体調のことも考えて練習開始時間が遅い。そのため、今日の練習も(アレンジしていただいた)20時からである。もちろん、練習終了予定は22時。日本では考えられない時間だ。   若干、シエスタのことを話そう。   朝は日本と変わらないが、午前中12時頃まで働くと帰宅し、その後ランチを摂る。このランチがメインの食事だ。日本でいう夕食のような感じとなる。16時頃から再び仕事を始めて20時頃まで働く。4時間労働が2回といった形である。夕食はしたがって遅く、軽食といった感じ。消灯は1、2時となる。   夜、練習に行き、スペイン人コーチの下で練習を行った。だが、日本人特有で全くしゃべらない。そのためコミュニケーションが取れない…。特にトランジションの練習をしているため、全く機能しないのだ。どうして外国に出ると全く話さないようになるのだろうか。日本語は誰もわからないので、大きな声で話そうが全く気にすることないはずなのに。   スペイン人コーチに、コミュニケーションのこと、パスのスキルのこと、ディフェンスのことを指摘されたが、これはこのチームに始まったことではなく、指導者自身の問題なのかもしれない。指導者自身が常に課題にしなければならないことなのだ。 (つづく)  

フエンラブラダのロッカールーム   (月刊バスケットボール)

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