月刊バスケットボール9月号

Bリーグ

2026.10.19

「オフェンシブなチームに見られがちですが…」平均得点Bワントップの横浜EXが目指すのはむしろ「ディフェンシブなチーム」

キャリア2度目のダブルダブルを達成した長谷川

序盤から主導権を握り、今季最多の111得点

10月18日、B.ONE(Bワン)中地区1位の横浜エクセレンス(横浜EX)は、ホームの横浜武道館に同地区5位の岐阜スゥープスを迎え、111-67で大勝した。横浜EXはこれで5連勝。6勝1敗(勝率.857)とし、首位の座を堅持している。

前日の試合で、成長著しい19歳の#18クーリバリ セリンムルタラが負傷。この日は#28長谷川比源が先発に名を連ねた。

試合は立ち上がりから横浜EXのペースで進んだ。開始15秒、#2古賀森人が3Pシュートを沈めて先制すると、フリースローや速攻で着実に得点を重ねる。


13得点を記録した古賀

岐阜もインサイドとアウトサイドを織り交ぜて対抗し、1Q中盤には11-9と接戦に持ち込んだ。しかし、残り3分20秒でベンチスタートの#1トレイ・ボイドがこの試合初得点を挙げると、横浜EXの攻撃ペースが一気に加速。#33杉山裕介のスティールから#11ザック・モーアが3Pを決め、さらに、再び杉山のスティールから長谷川がダンクシュートを叩き込むなど、連続得点で一気にリードを広げた。1Qを27-18で終え、主導権を握った。


ボイドはここまで平均31.3得点でリーグトップ

2Qに入ると、横浜EXのオフェンスはさらに勢いを増す。ボイドを中心に得点を重ね、インサイドや速攻など、多彩な攻めで岐阜を翻弄。#3アロン・レーガン、#13大橋大空にも3Pが飛び出し、59-42と17点のリードを奪って前半を折り返した。

後半も横浜EXの攻撃は止まらない。さらに目を引いたのは、ディフェンスの強度が一段と高まったことだ。スティールや8秒バイオレーションで岐阜の攻撃を寸断し、ターンオーバーから次々と得点を生み出す。4Q残り2分には100得点に到達した。

終わってみれば、後半の失点はわずか25。今季最多となる111得点を挙げ、最大46点差(110-64)をつける圧勝だった。ほぼ全てのスタッツで岐阜を圧倒し、5連勝を飾った。ボイドが3P6本を含む34得点でチーム最多得点を記録。先発起用に応えた長谷川も16得点、10リバウンドのダブルダブルを達成した。この2人を含む5選手が2桁得点を挙げ、攻撃力の高さを見せつけた。


長谷川はキャリア2度目のダブルダブル

河合竜児ヘッドコーチ(HC)は、負傷で欠場したクーリバリの穴を埋めた選手たちの奮闘を評価した。

「うちとしては、タラ(クーリバリ)が日本人の中で一番点数が取れますし、ディフェンスでもチームの火付け役です。彼のハッスルがチームに与える影響は大きいので、(負傷は)痛いところでした。『今日はその分、誰かがステップアップしないといけない』と話していましたが、比源やケイタ(#6シェイク・ケイタ)など、いろんな選手が気持ちを全面に出してディフェンスを頑張ってくれたことが、この勝利につながった一番の要因かなと思っています」

平均得点リーグ1位 それでも指揮官が求めるのは「ディフェンス」

横浜EXは、ここまで7試合を消化した時点で平均99.7得点を記録。Bワンでリーグトップのオフェンス力を誇る。昨季のB2得点王で、今季も平均31.3得点とランキング1位を走るボイドを筆頭に、個々の得点能力が高い選手がそろう。それゆえに個々の引力も高く、相手守備を引きつけることでスペースが生まれ、フリーでシュートを打つ機会も増える。そして、そのチャンスを確実に決め切る力も備えている。

数字だけを見れば、まさにオフェンスを武器とするチームだ。しかし、河合HCがチームづくりで重視しているのは、むしろディフェンスだという。

「ディフェンスを頑張ってアップテンポに――というのが、昨シーズンからのスタイルです。得点が先に出てしまうので、どうしてもオフェンシブなチームに見られがちです。特にボイドがいるので、なおさらそう思われがちですが、チーム内では『オフェンシブではなくてディフェンシブなチーム』というスタイルなんですよ。それはボイドも自覚していて、みんながその認識でいます。選手には『いいオフェンスをすればいいディフェンスにつながる。いいディフェンスをすればいいオフェンスにつながる。どっちから始まることもできるけど、流れをつかみやすいのはディフェンスだよ』と伝えていて、全員が理解しています」

この日の試合は、まさにそのチームコンセプトが表れた内容だった。

全員がプレッシャーをかけ続け、チームで16スティールを記録。なかでも杉山は4スティールと存在感を発揮した。岐阜のターンオーバーは23個に上り、そこから生まれた得点は28点。相手のミスを誘い、それを得点へと結びつけることで攻防の好循環を生み出した。速攻を決めた直後にオールコートディフェンスを仕掛け、前線でボールを奪う場面も見られた。河合HCが「70点以下に抑えられたのは非常に大きいです。コートに立った5人がしっかりとやってくれた結果」と振り返ったように、チーム全体の意識が大勝を支えた。

この日の失点67は、ここまでの7試合で最少。ディフェンスにフォーカスするうえで、この数字は自信になったのではないだろうか。


攻防でチームをけん引する大橋

失点にフォーカスし、ポストシーズンを勝ち抜く

指揮官はディフェンシブなチームを目指しているが、平均得点が示すとおり、横浜EXの攻撃力も大きな武器だ。

一方で、攻撃回数を増やすスタイルならではの難しさもあるという。

「オフェンス回数は増やしたいとは言っているんですが、ここがなかなか難しいところで……。去年は相手の平均得点のマイナス10点を狙いましょうとやっていました。けど、これだけペースを上げてしまうと、マイナス10点というのはなかなか起こりえないですよ(苦笑)」

河合HCが語るように、横浜EXは攻撃回数の多さも特徴の一つだ。1試合あたりの攻撃回数(ペース)は82.9でリーグ1位。一方、平均失点は80.1点でリーグ12位となっている。

攻撃回数が増えれば、相手の攻撃機会も必然的に増える。高い得点力を生かして試合のペースを握る半面、相手にも得点のチャンスを与えやすくなる。だからこそ、速い展開の中でも相手の得点を抑え込むディフェンス力が、今後さらに重要になる。

河合HCは、選手たちに求めていることをこう明かした。

「選手たちには、得点を取ることよりも失点の方にフォーカスしようと指示しています。それがプレーオフに出る、出てから勝つチームをつくっていくために必要です」


「オフェンシブではなくてディフェンシブなチーム」を目指していると語った河合HC

この言葉を聞いて、筆者の頭に浮かんだのは、昨季のB2プレーオフで神戸と対戦したセミファイナルだった。

横浜EXはゲーム1、ゲーム2ともにハイスコアを記録したものの、神戸がそれを上回り、106-112、89-99で連敗。決勝進出を逃した。どれだけ得点を重ねても、相手の得点を抑えられなければ勝利には届かない。攻撃力を強みとするチームだからこそ、ディフェンスの重要性を痛感した経験だったのかもしれない。「オフェンシブではなくてディフェンシブ」というチームコンセプトの背景には、こうした昨季の経験もあるのだろうか。機会があれば、改めて河合HCに聞いてみたい。

まだシーズンは始まったばかり。横浜EXが戦ったのは、ここまでわずか7試合であり、チームの全体像を判断するには時期尚早だ。他クラブの指揮官の言葉だが、アルバルク東京のライアン・リッチマンHCはこんなことを言っている。

「いろいろなスタッツを見る限り、オフェンスでもディフェンスでもレーティングがトップ5に入るチームが優勝する傾向があると思っている」

60試合を終えたとき、横浜EXは「オフェンシブなチーム」と評されるのか、それとも「ディフェンシブなチーム」と評されるのか――。はたまた、最強の矛と盾を持ち合わせた“最強チーム”が出来上がるのか。今後の戦いに注目したい。

文/磯野雄太郎(月刊バスケットボール)

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