月刊バスケットボール9月号

Bリーグ

2026.10.18

荒谷裕秀が川崎ブレイブサンダースで感じるやりがい「代表レベルの選手が任されるロールを自分がやらせてもらっている」

Bプレミアが開幕し、外国籍選手の出場制限を撤廃する「オンザコートフリー」が新たなルールとして適用された。伴って各チームが複数のポジションをこなせるウィングタイプの外国籍選手を揃え、彼らと帰化もしくはアジア特別枠の選手を4人同時に起用する「オン4」という戦術が流行り始めている。もちろん、現時点ではスポットでの活用をメインにするチームが多いが、外国籍選手のプレータイムは昨季と比較すると格段に伸びている。

そのあおりを受けてプレータイムを減らしているのが、スイッチディフェンスにディスアドバンテージを抱える小柄な日本人ガードである点は、試合を見ていれば分かるだろう。ただ一方で、役割を拡大する選手たちもいる。その一例が、フィジカルに複数のポジションを守れ、攻めてはハンドラーとして計算できるウィングプレーヤーだ。

川崎ブレイブサンダースにおけるそのポジションの筆頭は、荒谷裕秀である。

189cm・87kgの体格で、体の強さと運動量を備え、オフェンスではピックを使ったり、自らの個人着で得点をクリエイトすることもできる。現在27歳と選手としての全盛期に入りつつあり、桶谷HCからの信頼も厚い。平均プレータイムはキャリアで2番目に長い22分51秒を記録している。

10月16日、川崎はホームに茨城ロボッツを迎えた。直近のホームゲームだったアルバルク東京戦を落とすなど、今季まだ東急ドレッセとどろきアリーナでの勝利がない川崎と、開幕から7連敗を喫していた茨城──互いに勝利に飢えた者同士の対戦は終始白熱。前半は川崎が42-40とリードしたが、後半は茨城がヴィック・ローを中心にペイント、アウトサイドと多彩な攻めを見せて逆転し、最後は82-74で茨城に軍配。今季初白星を挙げた。

川崎はチームで20ものターンオーバーを喫し、特に勝負どころの4Qだけで6本。桶谷HCが、「ファンダメンタルの部分で直すべき点がある」と振り返ったように、ミスの質も受け入れるに至らないものが目立った。

そんな中で、コンスタントに活躍したのが荒谷だった。オフェンスでは終盤の追い上げの時間帯に2本連続で3Pシュートを沈め、時にハンドラーとしてクリエイトする場面も見られた。ディフェンスでは相手の外国籍選手をマークしつつ、ガードへのスイッチにも対応。結果的に今季平均を上回る27分34秒のプレーで10得点、4リバウンド、2アシストを挙げた。


土壇場で連続3Pを決めた

過去2シーズンを彼の地元である宮城県の仙台89ERSで過ごし、その1年目はいずれもキャリアハイの平均23分48秒のプレーで8.4得点。2年目の昨季も約15分のプレータイムを得ており、チーム内での立ち位置はある程度保証されていた。昨年3月に第一子が生まれた家庭環境、そして移動が増えるBプレミアの日程を考えても、親元に近い地元仙台でプレーすることは十分にメリットのあることだったはずだ。それに、「昨季はダン(タシュニーHC)と一緒にすごく良いシーズンを過ごしましたし、仙台からもシーズン後半に『残ってほしい』という話があった」と荒谷。これらの前提がありながら仙台を出る決断は、簡単なものではなかった。

それでも飛び出す決断をしたのは、「もう少し挑戦をしたい」という純粋な競技者としての思いからだった。

「いろいろなメディアのインタビューでも言っているんですけど、多分、自分が想像しているBプレミアでの日本人の役割の上限を、仙台では超えられない。セカンドユニットのハンドラーや、調子が良ければファーストユニットのハンドラーとしてチームを回す役割がメインになってくるというのは、正直イメージしていたとおりでした。そのロールをBプレミアになる1年前に仙台で経験させてもらって、多分、仙台としてはBプレミア1年目にそのロールを自分に任せるイメージだったと思うんです。ただ、今27歳でプレーヤーとして一番良い時期に挑戦もしないで6thマンやセカンドハンドラーに落ち着いていいのか、もうちょっと挑戦したいなと思っていました」

そのタイミングで桶谷HCの川崎移籍が決まり、同氏からBプレミアのレギュレーション上、荒谷の存在が重要になると説かれた。それならば、川崎に行けばもしかしたら…。「もちろん、家族の支えがあってこそ」だと話す荒谷の判断の結果は、「それ(役割の上限)を飛び越えて、もっともっとボールを触ったり、チームを動かしたりという役割を今、川崎でやらせてもらっています。まだまだチームの勝利は付いてきていないですけど、やりがいはすごく感じられている状況です」。そう語る表情からは充実感がにじんだ。



オン4を切り札として使うチームが増え、川崎においてはスタメンにオン4を採用している。そして、残る最後の1枠を荒谷が担っている。それは荒谷が仙台を出てまでも求めていた、いわば理想的な役回りだ。「みなさんのイメージしているオン4の場面になったときに、残りの1人は日本代表レベルの選手が役割を任せてもらっていると思います。そう思われているロールを自分がやらせてもらっているのはすごくありがたいです」と荒谷。

桶谷HCは荒谷について「ヒデが一番見えているなと思います。ミスマッチに見付けるのも早いし、サイズがあってピックのところもそれなりに使えてペイントに入れる選手。それを期待しているし、今のところはそれをしっかりと出してくれていると思います。Bプレミアになって、やっぱり(どのチームも)サイズが大きい。小さい選手を2人使うのがなかなか難しいところで、ヒデがいるのはありがたいなと思っています」と信頼を寄せる。

Bプレミアで多くの日本人選手が熾烈な競争の中でふるいにかけられているのは間違いない。その中でも、荒谷のようにしっかりと自身の役割を予測し、理解した上で活躍の幅を広げる選手がいるのもまた、事実だ。もしかしたら、Bプレミアで求められる最大のスキルは、決断における荒谷のような判断力なのかもしれない。

文・写真/堀内涼(月刊バスケットボール)

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