月刊バスケットボール9月号

Bリーグ

2026.10.19

小川麻斗(神戸ストークス)、瀬川琉久(千葉ジェッツ)——それぞれの神戸物語

©B.LEAGUE

10月8日の神戸ストークス対千葉ジェッツは、両チームのポイントガード2人にとって縁深い試合だった。新天地でB.PREMIERに臨む小川麻斗(神戸)には過去に3年間在籍した「古巣」との対戦。瀬川琉久(千葉)は、GLION ARENA KOBEで行われた「地元」での一戦。いずれも戦い方を構築している最中の両チームは、この時点で開幕から1勝3敗と負け越していた状況でもあり、白星を得て立て直しを図りたいところだ。そんな状況で、かつてチームメイトだった二人が互いにコート上で火花を散らした。


試合は千葉Jが序盤からリードしたが、神戸が3Qの10分間を18-18として食らいつき、4Q残り1分台までは追う展開ながら怒涛の反撃で逆転に成功。最終スコア94-86で強豪相手に勝利し、「欲しかった成功体験」(川辺泰三HC)を手にしている。神戸はリバウンドで49対35と制空権を制し、途中からはチームが課題としていたテンポを上げていくバスケットも奏功した。

開幕前に「千葉Jには負けたくない」と宣言していた小川は、戦前に勝手を知る相手に対して「受け身になってしまうとやられる」と警戒を強めていた。実際、この試合は3得点にとどまり、19得点を記録した直近の広島ドラゴンフライズ戦(10月4日)のような爆発力は見られなかった。「すごく楽しみにしていたゲームで、トップチームに勝てて自信につながる」とは話したものの、個人のパフォーマンスには満足していない様子がうかがえた。一方で相手PGの瀬川に11得点、富樫勇樹には3P5本を含む18得点を許しており、来年2月に予定されているアウェイでの対戦では、ディフェンス面での奮起がポイントになりそうだ。

負担は大きかったはずの小川だが、闘志も普段以上だったのかもしれない。日本を代表する選手でもある先輩・富樫とのマッチアップを振り返る際には、「ここに来るなと思っていた動きで逆を突かれ、先読みしても裏を突かれた」と渋い表情。それでも、「ここで決められたら相手に流れを持っていかれるというところで、本当に決めてくる。僕もそういう選手になっていけるように頑張りたい」と刺激にできたようだ。後輩である瀬川についても「神戸出身なので気合いも入っていたと思いますし、のびのびやっている姿を見て、対戦することができて良かった」と話し、千葉Jのブースターには「平日(木曜日)にもかかわらずたくさん来られて、試合で戦う姿を見せられた」と感謝の気持ちを伝えた。


小川にとって富樫とのマッチアップはよい刺激となったようだ(写真/©藤原彬)

千葉Jでプロデビューして3年目の瀬川は、生まれ育った神戸市での試合に家族や親戚、友人が多く訪れていたようだ。自ずと「成長した姿を見せようという気持ちが高まっていた」(本人談)。この日は、高校時代から武器だったジャンプシュートを精度高く決め続けたが、試合後は「やっぱりチームを勝たせられていない」と課題にフォーカスして悔しそうな表情を見せていた。

今季は開幕からスタメンを任されているだけに、責任感も膨らんでいるに違いない。ただ、チームとして苦しい状況が続いている一方で、瀬川は着実に存在感を高めている。得点とアシストは昨季の倍近くまで増え、オフシーズンにオンザコートフリー対策用のトレーニングを積んで筋肉の質・量や出力にこだわったフィジカル強化を施した成果もあってか、リバウンドも増加中。また、その土台として、心の持ちようの変化も明かした。昨季は「スタッツばかりを意識してしまって、なかなか楽しめていなかった」(本人談)。その反省から、今季は「変に考えず、とにかくバスケットボールと真摯に向き合いながら全力で楽しめば結果もついてくると思っている」。東山高で鳴らした当時も、神戸市での小・中学生時代も、「波に乗っていいプレーができているときは、心の底から試合を楽しんでいるときだった」からだ。

原点回帰を期す現状での小川とのマッチアップについて、瀬川は「前からプレッシャーをかけてスティールを狙ったんですけど、やっぱり落ち着きがあって冷静な判断をされていた」と振り返る。小川同様、瀬川もこの試合から貴重な学び、刺激を得たようだ。

現在の起用については「(アドリアン・コヴァーチHCから)求められるのはスピーディなバスケットで、そこは自分が物凄く得意としている部分。ディフェンスで前からプレッシャーをかけて相手を嫌がらせるのも求められていますが、自分のやりたいバスケットと(コーチ陣の目指すスタイルが)マッチしているから、スタートで使ってくれているのではと思います」と自己分析している。それを裏打ちするように、プレー時間も着実に伸びている。


地元の神戸で成長した姿を見せた瀬川(写真/©藤原彬)





原点回帰——瀬川が戻ろうとしている「初心」には、神戸の前身である「西宮ストークス」の記憶も含まれているという。バスケットボールを純粋に楽しんだあの頃、神戸に始まっていたバスケットボールの胎動があったからこその今。神戸がB.PREMIERに入って盛り上がっているこの時代を経験することも、瀬川は肥やしにできるはずだ。

神戸が生んだエリート・プロスペクト。この調子だと、瀬川は今季だけでなく向こう数年にわたり、自身の地元から飛躍を目指す神戸ストークスの前に立ちはだかる存在になりそうだ。





文/藤原彬

タグ: 小川麻斗 瀬川琉久

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