地域と共に未来を創る——横浜EX桜井直哉社長と西山達哉AGMが語る「新ビジョンとスポーツの価値」

社会課題解決とチーム強化の両輪で「10年後の日本一」を目指す
2021年に横浜へホームタウンを移転して以来、地域とともに歩みを重ねてきた横浜エクセレンス。昨シーズンのB2昇格を経て、新構造となったB.LEAGUEではB.ONEに参入。着実に歩みを進めながら、新たなビジョンのもとで地域共創の取り組みをさらに広げています。なぜクラブは地域とのつながりを大切にするのか。桜井直哉代表取締役社長と、西山達哉アシスタントゼネラルマネージャー(AGM)に、その想いと未来像を聞きました。
――桜井社長にお伺いします。クラブの新ビジョン「街の輝きをともにつくり、人々の心を揺さぶるクラブへ~From Yokohama, A Light For The World.~」について、刷新した背景と込められた思いについてお聞かせください。
桜井)以前の理念「スポーツを通じて たくさんの人を笑顔に」は、東京エクセレンス時代から掲げてきたものでした。2021年の横浜移転やB2昇格を経てクラブが成長する中で、改めて目指す方向を明確にする必要があると感じていました。B.LEAGUE全体が“B.革新”と改革を進める中で、私たちもリブランディングを行い新しくビジョンを設定して向かうべき先を明確にする必要があると考えました。

オンラインでのインタビューに応じる桜井直哉代表取締役社長(右)と、西山達哉AGM(左)
――ビジョン刷新に伴い、「EX Community Project」といった地域共創のアクションもより活発になっています。この活動の原動力は何でしょうか。
桜井)プロスポーツクラブとして、試合を観に来ていただき楽しんでいただく場を作ることはもちろん重要です。しかし、クラブが持つ公共財的な役割は非常に大きく、街のために活動するということは絶対に外せないポイントだと感じています。私たちが街のためにアクションを起こすからこそ、地域の方々に応援していただける。それが安心できる居場所と変化し、クラブの価値へとつながります。「横浜エクセレンスって何のチームだっけ?」という状態からのスタートから、地道に自分たちが動き、地域の方々と触れ合って顔を知っていただく活動をしてきました。こうした地域活動は有無を言わさず継続していくべき使命だと思っています。
――活動の中でも、子どもたちとの取り組みが多くあります。子どもたちを招待する「スマイルパス」、学校訪問の「みらいわくわく」「みらいキャリア」などを通じて、変化を感じますか。
桜井)スマイルパスを通じて、本当に多くの子どもたちが試合を観に来てくれていて、保護者の方から「初めて試合を見たけれど、子どもがハマってしまって、バスケットボールを始めたんです」といったお話をたくさんいただきます。きっかけづくりはもちろん、プロの選手を間近で見ることで、憧れや夢を抱いてもらうことにも繋がると感じています。スマイルパスに限らず、障がいを持つ方への支援などを含め、全ての人たちが試合を楽しんでいただける環境づくりを目指しています。

スマイルパスを通じて観戦に訪れた子どもたち
――子どもたちにとって、きっかけ作りになるアリーナでの体験というのは、どのようなところにあるとお考えですか。
桜井)私は試合会場において重要なポイントが3つあると考えています。1つ目は試合の内容や結果、2つ目がアリーナの演出、そして3つ目が“おもてなし”です。これら3つがそろって初めて感動体験となり、深く共感してリピーターになっていただけるのだと思います。特に“おもてなし”の部分で言えば、お子さんに対するお声がけや笑顔といった接客が人の心を動かすと考えています。私たちのクラブロゴはガス灯をモチーフにしているのですが、そのガス灯の灯りのような温かみのある接客を心がけています。何より、アリーナに滞在している時間が特別なものであると感じていただくことを大切にしています。

――西山AGMは今季からフロント入りされましたが、地元・横浜でセカンドキャリアとしてクラブに残る決断をされた背景を教えてください。
西山)個人的にずっと「エクセレンスで引退したい」と思っていたので、そのタイミングでスタッフとしてのオファーをいただけたことには、本当に感謝しています。また、自分の地元である横浜のクラブで引き続き仕事ができるという点も大きな理由でした。これからはスタッフという立場で地域との活動により積極的に関わり、新しい形でチームに貢献していきたいと考えています。

2026年第9回 スペシャルオリンピックス日本 夏季ナショナルゲーム・東京でユニファイドスポーツ®︎*バスケットボールエキシビジョンマッチに参加した西山AGM(スペシャルオリンピックス日本提供)
*ユニファイドスポーツ(Unified Sports®)は、知的障がいのある人(アスリート)と知的障がいのない人(パートナー)でチームを作り、練習や試合を行い、スポーツを通じてお互いに相手の個性を理解し合い支え合う関係を築いていくスペシャルオリンピックス(SO)の取り組み。
――クラブとしては「B.Hope 防災バスケ ディフェンスアクション」や「B.Hope SMILE HOOP」などBリーグ全体の取り組みにも参加され、学校訪問なども年間150回に上ります。チームのレジェンドである西山AGMは、現役時代からさまざまな地域活動に参加されてきましたが、実際に子どもたちと触れ合う中で、どのようなことを感じてきましたか。
西山)例えばバスケットボールを通じて防災を学ぶイベントでも、子どもたちは積極的に参加してくれているというのが一番の印象です。純粋に楽しみ、バスケットボールをしながら学ぶ。そういう様子を見ると、こちらとしてもすごくうれしくなりますし、こうした活動が私たちクラブにとっても大切であると肌で感じています。すごくやりがいにつながりますし、これからも継続的に活動していきたいという気持ちですね。

B.Hope 防災バスケ ディフェンスアクションの様子
――選手にとって、地域活動への参加はどんな体験でしょうか?
西山)元々子どもと触れ合うのが好きなので、毎回活動を楽しみにしています。子どもたちに楽しんでもらうためには、まず自分自身が心から楽しむことが大切ですし、AGMとしては、ここでの触れ合いをどうチームに還元していくかも常に考えています。チームメートも、地域活動がクラブを認知していただくための大切な機会だと理解しており、前向きに取り組む選手が多いですね。


学校訪問「みらいわくわく」の様子

学校訪問「みらいキャリア」の様子
――選手の皆さんは駅でのマナー啓発アナウンスや、「LEADS TO THE OCEAN(清掃活動)」など地域活動に積極的ですね。クラブとして教育やビジョンの共有はどのように行っているのでしょうか。
桜井)定期的に社員と選手全員が集まり、クラブのビジョンや各部署の取り組みを共有しています。選手はクラブの主役であると同時に、クラブを支える仲間でもあります。そのため、地域活動の意義を理解し、共に行動することを大切にしています。もちろんプレーで活躍することは大前提ですが、私たちは地域とのつながりも大切にできる選手と歩んでいきたいと考えています。エクセレンスのバスケットボールは、献身的に走り、戦うスタイルです。能力だけでなく、そうした姿勢を共有できるかどうかも重要です。選手も社員も、クラブ全体がビジョンを体現する仲間なのです。
――桜井社長はサッカー界の事情もご存知ですね。地域との距離感について違いはあるでしょうか?
桜井)選手との物理的な距離は、バスケットボールの方が圧倒的に近いと感じます。なぜかというと試合会場で選手との物理的距離が近い分、親近感も湧きやすいのだと思います。バスケットボールはその近さが魅力であり、地域活動を進める上でも大きな強みになっていると感じます。

横浜市産のお米横濱武道舞(米)の田植えの様子
――最後に、横浜エクセレンスが街や子どもたちにとってどのような存在でありたいか未来像をお聞かせください。
西山)「横浜と言えば横浜エクセレンス」と言われるくらい、皆さんに認知していただきたいという思いがあります。具体的に言えば、プロ野球の横浜DeNAベイスターズに匹敵するようなクラブになりたいということです。そのためにもチームが強くならなければいけませんし、これまで以上に地域とのつながりを深めることが重要です。これからも、さまざまな地域活動に重きを置いていきたいです。
桜井)私たちは、日本のスポーツ業界をもっと盛り上げていきたいという大きな目標を持っています。その中でエクセレンスが主体となり、人口減少をはじめとする社会課題の解決にも貢献していきたいと考えています。社会課題の解決はすぐに成果が見えるものではありませんが、地道に積み重ねることで、地域の皆さんの心に届くと信じています。社会課題と向き合い続けるクラブでありながら、競技でも成長を続け、「10年後の日本一」を目指したい。そして勝っても負けても地域とともに歩み続けるクラブでありたいと思っています。
次回は杉山裕介選手、クーリバリ セリンムルタラ選手のインタビューを紹介します。
取材協力:Bリーグ
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文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)









