月刊バスケットボール9月号

「久しぶりにコートの中で思い切り動き回れているな」京都精華学園 #4 吉田ひかり

2026年10月11日、大分県大分市のクラサス武道スポーツセンターで開催された「U18日清食品トップリーグ2026 ディビジョン1」第5週。第2試合の女子、福井工業大学附属福井高校との一戦を迎えた京都精華学園高校のベンチには、特別な決意を秘めた選手の姿がありました。背番号4を背負うキャプテン、#4 吉田ひかり選手(163cm/3年)です。
5月に負った右膝のケガから、およそ5か月。苦しいリハビリの日々を乗り越え、ついに公式戦の舞台へと帰ってきたのです。

京都精華学園は今夏、インターハイを制覇して日本一に輝きました。しかし、その歓喜の輪の中心にキャプテンの姿はありませんでした。コートの外から誰よりも声を張り上げ、チームを鼓舞し続けた吉田選手。しかし、仲間たちが栄冠をつかみ取る姿を見守る中、胸中には言いようのない葛藤と不安が渦巻いてきたと言います。
「不安が大きかったです。インターハイで優勝したチームに自分はいなかったので、そこで出ていたメンバーのほうがいいんじゃないか、と思うこともありました。でも、自分がコートに入ることで、また違う展開ができると感じましたし、チームのスパイスのような存在になれたらいいなと切り替えました」

インターハイでは優勝したものの、京都精華学園は吉田選手の不在の間、「U18日清食品トップリーグ」で東海大学付属福岡や桜花学園に苦杯を喫するなど、苦しい時間を過ごしていました。チームを指揮する山本綱義コーチもチームの状態の悪さを感じていました。
そうした中で、吉田選手の復帰が決まりました。試合への出場が決まった瞬間について、「率直にすごくうれしい気持ちが大きかったです。出るからには、自分のやるべきことをしっかりできるようにやろうと思いました」と、吉田選手は素直な感情を明かします。
そして、久々に公式戦のフロアに足を踏み入れると「ちょっと感動して、このコートに立てることが本当にありがたいなと感じました。試合を通してずっと楽しくプレーできたと思います」と、そのときの心境を振り返ります。





試合が始まると、夏の女王・京都精華学園が持ち前の爆発力を発揮します。インサイドでは#18 オディアカウェル リッツ選手(195cm/2年)がゴール下を支配し、アウトサイドからは#7 谷彩南選手(172cm/3年)が高確率で3Pシュートを沈めて得点を重ねていきます。
さらに、吉田選手の離脱中に代役となった#8 石井日菜選手(163cm/3年)がベンチから登場し、思い切りの良いプレーで3Pシュートを沈めるなど、一気にチームを勢い付けました。第1クォーターを26-14とし、早くも2桁のリードを奪います。

山本コーチは、吉田選手の合流がチーム全体に与えた心理的な好影響をこう語ります。
「吉田が1週間ほど前からチームに合流しました。それによって、ずっとキャプテン代行を務めていた満生(小珀)の肩の荷がすっと下りて、思い切ったバスケットができるようになってきました。吉田の復帰はチームにとって本当に大きいです。一気にみんなが安心したというか、思い切りバスケをやろうという雰囲気がコートに出てきました」
コート上の吉田選手は、久しぶりの実戦とは思えないほど冷静にゲームを組み立てていきました。
「私はポイントガードなので、ボール運びではしっかり落ち着いて、まずはゲームコントロールをしようと考えていました。そしてチャンスがあれば自ら得点を取りに行こうという意識を持ってプレーしました」

対する福井工業大学附属福井高校も、エースの小池昌鈴選手(171cm/3年)が代表活動のため不在という苦しい状況の中、意地を見せます。第2クォーターには#5 田原莉桜選手(167cm/2年)の鋭いスティールから、#18 板橋香苗選手(174cm/3年)が速攻を決めるなど反撃を試みます。
しかし、京都精華学園は慌てることなくディフェンスの強度を高め、相手に主導権を渡しません。前半を57-29とダブルスコアのリードで折り返すと、後半も攻撃の手を緩めませんでした。後半には吉田選手自らも鮮やかな3Pシュートを沈めるなど、司令塔としての存在感を遺憾なく発揮。ベンチメンバーも躍動し、最後まで集中力を切らさず走り切った京都精華学園が、108-62で圧倒的な勝利を収めました。

圧勝で飾った復帰戦。しかし、試合後の吉田選手の口から出たのは、司令塔としての厳しい自己評価でした。
「久しぶりの試合ということもあって、自分のミスやターンオーバーが多かったと感じています。3Pシュートに関しても1/4という確率で、すごく低いと思うので、もっと試合の中でしっかり決めてこられるようにしなければと思っています」
試合前には張り詰めていた緊張感も、40分間を戦い終えた後には充実感へと変わっていました。
「試合前まではものすごく緊張と不安が大きかったのですが、実際にコートに入ってみたら、すごく楽しめました。久しぶりにコートの中で思い切り動き回れているなという実感が湧いて、本当に楽しかったです」

山本コーチもまた、この試合を契機としたチームの変化に手応えを感じています。
「新潟での前週あたりまでは、どこかチームがかみ合わず、チームワークももう一つという状況でした。しかし、そこから『京都精華が一番強くなるのはこれからだ』と選手たちに勇気を与えてきました。吉田の復帰をきっかけに、ようやく結束力と信頼関係が強まってきたように思います。U18日清食品トップリーグ最後の試合ではさらにいいチームの姿を見せたいですね」
山本コーチが語るように、京都精華学園の「U18日清食品トップリーグ2026 ディビジョン1」の残り試合は1。最終週となる11月14日に精華女子との対戦です。吉田選手の復活で、さらにステップアップを図るであろう京都精華学園の姿に注目しましょう。





「U18日清食品トップリーグ2026 ディビジョン1」
・オフィシャルサイト
https://u18league.japanbasketball.jp/
・チケット情報はこちら
https://u18league.japanbasketball.jp/watching-top/ticket/
・観戦情報ページ
https://u18league.japanbasketball.jp/watching-top/venue/?ScheduleKey=11948&teamID=0&tab=schedule
・「U18日清食品トップリーグ公式YouTube」「バスケットLIVE」、「スポーツナビ」にて全試合配信
[配信・放送]https://u18league.japanbasketball.jp/streaming/






文/飯田康二(月刊バスケットボール)、写真/山岡邦彦

PICK UP

RELATED