月刊バスケットボール9月号

女子日本代表・萩原強化副委員長のブリーフィング総括「ディフェンス重視への転換と山本麻衣のWNBA挑戦」

ディフェンス重視への転換とオーストラリア遠征の収穫


ワールドカップ本番に向けた強化を進める女子日本代表は、先日オーストラリア遠征を実施。7月29日のメディアブリーフィングに登壇した萩原美樹子強化副委員長は、コーリー・ゲインズHC体制での現在のチーム状況と遠征の収穫について説明を行った。

オーストラリア遠征の最大の目的は、新たなディフェンス戦術の遂行力を高めることだった。萩原副委員長によれば、ゲインズHCはこれまでオフェンスに注力しがちだったスタイルから、「よりディフェンスに特化した戦術を組み立てていきたい」と方針を転換。結果として、ディフェンスとリバウンドの面で確かな手応えを得る遠征となったという。
オフェンス面では得点が伸び悩む課題も残ったが、試したかったオプションは全て実践でき、世界相手にも通用することが確認できたため、今後は納得感を持ってブラッシュアップを進めていく段階に入っている。

また、日本の永遠の課題であるリバウンドに関しても明確なアプローチがとられている。「ギャングリバウンド(全員でリバウンドに飛び込むこと)」や「ペース&スペース」といったコンセプトを掲げ、全12人の徹底したタイムシェアによって40分間高い強度を保ち続けるスタイルへの適応が進んでいる。



W杯初戦、アフリカの雄・マリ戦に潜む罠


迫るワールドカップにおいて、最も重要な意味を持つのが初戦のマリ戦だ。身体能力に優れるアフリカ勢の台頭は著しく、決して侮ることはできない。
萩原副委員長は、自身がかつてアンダーカテゴリーの日本代表を率いてマリと対戦した際の苦い経験を明かした。「前半はしっかり勝てたものの、後半に相手が日本のプレーにアジャストしてきた。そこでゴール下を制され、20点差ほどあったリードを一気にひっくり返された」と振り返り、手足が長く運動能力に長けたチームに対する戦い方の難しさを強調。「最初から相手を乗らせないことがすごく大事。初戦で手足の長い相手に対して一切の油断なく、初めからフルスロットルで戦っていくことがキーになる」と語った。

リードを奪ってもペースを緩めず、後半も相手の弱点を徹底して突き続ける冷徹さが必要になる。今後予定されている三井不動産カップなどの実戦を通して、ゲインズHCが目指すディフェンスの強度とリバウンドへの執着心をさらに研ぎ澄まし、万全の状態でワールドカップ初戦へと向かう。

山本麻衣のWNBA挑戦と生き残るための条件


女子日本代表の主軸である山本麻衣が、WNBA昨季王者のラスベガス・エーシズと契約を結び、7月28日の試合で念願のデビューを果たした。日本人5人目のWNBAプレーヤー誕生という快挙について、1997年に日本人初のWNBA選手としてプレーしたパイオニアである萩原副委員長も言及している。

直前の合流ながら3分10秒のプレータイムを得てコートに立った山本に対し、萩原副委員長は「直前に呼ばれて出場時間を得られたというのは本当に素晴らしいこと」と称賛。その上で、世界最高峰の舞台で通用する山本の武器について、「何と言っても物怖じしない3Pシュート。そして、日本人としては稀なスキルであるプルアップスリーは彼女の大きな強みであり、十分に通用するもの」と太鼓判を押した。

一方で、厳しい競争社会の中でプレータイムを勝ち取るための課題も指摘する。「チームに対して、自分が何ができるのかをアピールする必要がある。それを示せないとパスが来ない世界。チームの中で自分の力量を示して役に立つ存在だと証明し、信頼を勝ち取ってフィットしていくことがこれから必要になる」。自身の実体験に基づくリアルなエールを送り、名将ベッキー・ハモンHCのもとで多くを吸収して日本に持ち帰ることを期待した。なお、日本代表への合流時期については、現在JBAがチーム側と調整を進めている段階だという(その後、8月2日の女子日本代表メディアデーでゲインズHCがヨーロッパで合流予定と発言している)。

山本のようにトップレベルで海外へ挑戦する選手が生まれる中、育成年代(アンダーカテゴリー)の選手たちによるアメリカ大学スポーツ(NCAA)などへの進学志向も近年高まりを見せている。ブリーフィングでは、こうした有望な若い世代の海外挑戦に対する日本バスケットボール協会のスタンスについても質問が飛んだ。萩原副委員長は、「個人の意思や所属先の意向もあるため一概には言えない」と前置きしつつも、「JBAとしてNCAAなどアメリカに行く道筋を応援し、サポートできるような環境づくりを考えていきたい」と明言。男子日本代表の伊藤拓摩強化委員長とも、男女共通の課題として話し合いを進めていることを明かした。

2030年のワールドカップ、そして2032年や2036年のオリンピックを見据え、JBAはA代表直下のネクスト世代を適切に拾い上げ、時にはA代表への飛び級も交えながら強化していく方針を固めつつある。国内での一貫した育成に加え、NCAAなど海外のハイレベルな環境に身を置く選手を組織的にサポートする体制が整えば、日本バスケットボール界の選手層はさらに厚みを増すことになる。

文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)

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