渡邊雄太が中学生にクリニック「失敗して当たり前。恐れずに積極的に」と助言
基礎から徹底したスキルの伝授
7月18日、東京・国立市のFSXアリーナにて「YUTA WATANABE Basketball Clinic」が開催された。参加したのは国立市内の中学校でバスケ部に所属する男女60名。午前中は基礎スキルを中心とした練習、午後は渡邊雄太(千葉J)と山本鳴海(香川練習生)も交えたピックアップゲームが行われ、中学生たちにとって濃密な1日となった。



午前中のスキルクリニックでは、渡邊自身がマイクを握り、山本とともに実演を交えながら分かりやすく解説。「上手い下手ではなく、積極的にやることが大事だよ」と背中を押しつつ、「ほとんどの選手はいきなり3Pシュートの練習をしません。近い距離から打っていきます」「シュートのフォロースルーはしっかり肘を伸ばすように打ちましょう」「自分のシュートの前にどうボールを上げていくかが大切」と具体的なポイントを指導。
さらに「頭がブレないように気をつけましょう。いまだに僕もできていないときがある。そういう時はたいがいシュートが外れてしまう(笑)」と笑顔を交え、トップレベルを経験した現役選手ならではの視点で直々にアドバイスを送った。

渡邊はお昼も子どもたちと一緒に過ごし、午後のピックアップゲームは3時間近くにも及んだ。渡邊と山本はそのほとんどのゲームに参加し、中学生たちと真摯に向き合う姿勢を見せた。ゲーム中、渡邊はボードにボールをぶつけてからのセルフアリウープなど、何度となく豪快なダンクを披露している。「中学生ぐらいだと、生でなかなかダンクを見る機会はないと思うんで、こういう機会は積極的にダンクしようと心掛けていました」と子どもたちの目の前でプロのすごみを間近で見せた。

また、会場内のスペースには協賛ブースも開設。マクダビッド、地元企業であるFSX、アシックス、さらに地元中学校出身のデザイナー・森永邦彦氏のアンリアレイジによる展示などが並び、バスケ以外の刺激にも触れる場となった。




自身の原体験と「失敗を恐れない」ことへの思い
なぜ、渡邊は現役のトッププレーヤーでありながら、こうしたクリニックを熱心に開催するのか。囲み取材に応じた渡邊は、「自分が現役で、ましてや日本代表といった肩書があるうちにやることにはすごく意味があると思っている」と力を込めた。
そこには、渡邊自身の原体験があった。地元・香川のプロチーム「高松ファイブアローズ(現・香川ファイブアローズ)」の選手と一瞬言葉を交わし、ハイタッチをしてもらっただけで大喜びしたという自身の少年時代の記憶だ。「そういう小さな行動でも誰かの心の中には残ってくれるんじゃないかと思っているんで。僕はそれに全力で応えたい」と、かつての自分と同じように目を輝かせる子どもたちへの思いを口にした。

そして、午前中のセッションで子どもたちに伝えた「失敗を恐れずに」という言葉の裏には、渡邊自身の葛藤と恩師からの言葉があったという。
「アメリカに行った当初はすごくビビりながらやっていた部分があって、失敗を恐れて無難にやって楽しくなかった。僕自身もどちらかというと、少し失敗を恐れてしまうタイプなんです。そういう時に周りの大人が『失敗してもいいんだよ』『同じミスを2回続けてやらないとか、一つのミスに対して次どうするか』というところを言ってくれたのは、未だに僕の心にすごく残っている」と、自身の過去を振り返った。「プロになっている僕ですら試合中にターンオーバーを連発したりする。中学生なのだから失敗して当たり前だと思っています。失敗を恐れずに、もっとどんどん積極的に、バスケだけじゃなくて今後の人生も含めてやっていってもらいたいですね」。
閉会式では、山本が「皆さんの、一生懸命やっている姿を見て、すごく良い刺激をもらいました。これから先も、一生懸命練習して、一生懸命ご飯を食べて、一生懸命勉強もして頑張ってください」とエールを送った。
そして最後にマイクを握った渡邊は、充実した表情で子どもたちに語りかけた。
「今日は僕が一番楽しめました。皆さんが楽しんでいる姿を見たり、一生懸命やっている姿を見て、改めてバスケットって楽しいなとすごく思いました」、「これからバスケだけじゃなく、人生においていろいろなことがあると思う。辛いこととかあった時は今日の日を思い出して、苦しいことも乗り越えていってください」。
世界を舞台に戦い続け、大きな重圧や悔しさを味わうこともある中で、子どもたちの純粋な姿は渡邊自身にとっても「本来自分が何のためにバスケットをやっているのか」を思い出させてくれる大切な原点回帰の場となっていた。
また、渡邊は今後の活動については「地方や離島など、なかなかプロの試合を見る機会がない子たちのところにも出向いてやりたいですね」と展望を明かした。この日、大きな刺激を受けた子どもたちの中から、いずれ世界へ羽ばたく存在が現れるかもしれない。



文・写真/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)










