男子日本代表・伊藤強化委員長のWindow 3総括「戦術の徹底とインテンシティの課題」

準備期間がもたらした「やりたいバスケット」の体現
7月17日、日本バスケットボール協会の伊藤拓摩強化委員長がメディアブリーフィングを実施し、男子日本代表のWindow 3についての総括を行った。伊藤委員長は、新体制への移行直後だった前回から十分な準備期間を経て臨んだ今回の公式戦において、桶谷大HCの目指すシステムがどのように機能したか、そしてどのような課題が出たのかを語った。
伊藤委員長はWindow 3の成果として、十分な練習時間を確保できたことで、新体制が志向するオフェンスとディフェンスの構築ができた点を挙げている。
特に中国戦については、敵地ながら92-73の快勝を収めており、試合後に桶谷HCが「ド・アウェーの中でみんなが一体感をもってバスケができた」と手応えを語った通り、伊藤委員長も「中国がどういうバスケットをしてくるのかというスカウティングまでしっかりと準備ができていました」と振り返る。中国の高さに対抗するため、40分間スピードとボールプレッシャーを徹底し、相手に苦しいシュートを打たせてリバウンドを回収し、速攻につなげるという日本の目指す展開を作ることができたと評価した。ファストブレイクポイントで23-8と大差を付けたこの試合だが、早い展開が生み出された背景には、走るレーンや誰が走るかというチーム全体の共通認識が準備期間で徹底されたことがあると明かしている。
さらに、ターンオーバーから生まれる純粋な速攻だけでなく、相手のディフェンスがある程度戻っている状態でのアーリーオフェンスや、ディフェンスの反応に合わせてパスやカット、スクリーンを連続させ、常にズレとチャンスを生み出し続けるフローオフェンスといった組み立てについても言及。特に早い展開を作り出す上で目立っていたと語ったのが、クイックインバウンドである。相手にシュートを決められた直後、素早くインバウンズし次の展開へと持ち込む。通常、シュートを決められたあとに早い展開を作ることは難しいが、伊藤委員長は「システムとランダムの間にあるスキル(戦術)」と表現し、個人のランダムな判断に基づく走力と、チームの組織的なシステムが、バランス良く噛み合っていると評価した。

また、チームとしてのオフェンスのアプローチについても伊藤委員長は語っている。
「現在の世界の流行として、レイアップと3Pシュートを狙うという根本は変わりません。空いていたら打つ、攻めるというメンタリティも同じです」と前置きした上で、新体制となって、シチュエーションを「どう作るか(How)」という部分で変化があると説明する。
「空いているという状況を、どれだけのオープンにするか。『グッド・ショット』を打つのではなく、レイアップやキャッチ&シュートのオープン3ポイントといった『グレート・ショット』を作ろうという考え方です。相手がどういうディフェンスをしてくるから、どういう攻め方をするのかという『作り方』の部分を徹底しているのは大きいと感じます」と現スタッフの引き出しの多さについて高く評価した。
韓国戦の敗戦から見えた「激しさ」への対応力と個の能力
一方で、79-81とわずかに届かず逆転負けを喫した韓国戦については課題を指摘。「負けたら終わり」という背水の陣で臨んできた韓国の激しいインテンシティとフィジカルに対し、後手に回ってしまったと表現した。特に、後半、ディフェンスの圧力を高めてきた韓国に対して、オフェンスが停滞し、ターンオーバーを連発したことは大きかった。この試合ではターンオーバーから22失点を喫しており、桶谷HCも試合後に「セカンドユニットの時間帯にズレを作れず、気合いを入れて臨んできた相手のプレッシャーをうまく消化できなかった」と敗因を語っている。また韓国戦では、Bリーグでは一般的に「打たせてもよい」とされるミドルレンジのシュートを相手に決められた場面も目立ったものの、伊藤委員長も「敗因はそこよりも、オフェンスの停滞やターンオーバーから速攻を許したことにあると考えています」と現場の課題認識に同調する。
同時に、そのタフなミドルレンジのシュートを決めきった韓国の選手の能力の高さを認め、日本も相手が素晴らしいディフェンスをしてきても厳しい状況からシュートを決めきる個の技術を磨くことが必要だと指摘。これはトップチームのみならず、育成世代からの長期的な課題になると述べた。

最後に、若手選手の台頭についても言及があった。韓国戦では19歳エディ・ダニエルがコートに立ち、エナジーでチームに勢いをもたらしたが日本の若手についてはどうか? という質問に対して、伊藤委員長は「日本にもゲームチェンジャーとなれる若手はいると思っています」と述べ、一例として高島紳司(宇都宮)選手のように体を張ったディフェンスやルーズボールでチームを鼓舞できる若い選手が出てきていると発言。一方で、ポテンシャルを持つ若手が世界を相手にいきなり活躍できるわけではないとし、早い段階から代表活動を経験し、自信を持って世界とのタフな試合に臨めるようにするための環境整備が必要不可欠であり、そうした代表強化のシステムを構築していくことが、代表ディレクターとしての自らの重要な役割であると締めくくった。

インパクトを残した韓国の19歳エディ・ダニエル。伊藤強化委員長は高島を一例に出し、日本にもポテンシャルある若手がいると語った

文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)









