月刊バスケットボール8月号

世界との圧倒的な差を痛感した男子U17W杯、伊藤強化委員長「育成年代への強い危機感」

世界の17歳が提示した「Bリーグ並」のスタンダード


日本バスケットボール協会は7月17日にメディアブリーフィングを実施し、伊藤拓摩強化委員長がトルコで行われた「FIBA U17ワールドカップ2026」の視察報告を行った。今大会、男子U17日本代表は世界の壁に阻まれ16チーム中14位(1勝6敗)という結果で大会を終えている。現地で初めてアンダーカテゴリーの世界大会を視察したという伊藤委員長は、世界のトップレベルに対する強い危機感と、日本の育成年代における抜本的な意識改革の必要性を強く訴えた。

伊藤強化委員長は、まず現地で最初に観戦したというセルビア対オーストラリアの試合を引き合いに出し、「日本との圧倒的なレベル差を示すものでした」と正直に語った。世界のトップレベルにある17歳の選手たちは、戦術理解度やゲーム展開を読む力、個人のスキル、さらにはフィジカルの強さにおいて、すでに日本のプロリーグである「Bリーグと同等」と評すべき水準に達していたのだという。

とりわけ顕著だったのが、国際舞台で戦う上でのマインドセットの差である。伊藤委員長は「セルビアやフランスの選手たちは、本気でアメリカを倒そうと挑み、うまくいかないときには感情をあらわにして悔しがっていました」と驚きを語った。
一方で、日本の若い世代がワールドカップという舞台に立って初めて世界を知るという現状について危機感を表した。
「この時点で(世界の土俵に)立てていないという状況には、かなり危機感を感じています。これを何とかしないと、10年経っても20年経っても日本は世界に追いつけないと感じました」。同委員長はそう語り、育成年代からの抜本的な改革が急務であることを強調した。


危機感を語った伊藤強化委員長



現場と共有する「変わるべきはまず大人」という危機感


伊藤委員長が感じたこの強烈な危機感は、現場で指揮を執った片峯聡太HCとも完全に共有されている。大会終了後の公式リリースの中で、片峯HCは「変わるべきは、まず大人。世界基準のコーチングを学び確立しながら、育成年代に的確なアプローチをしなければならないと強く感じている」とコメントし、自らを含めた指導者側のマインドチェンジの必要性を痛切に語っていた。

実際に今大会の日本は、スピードや連動性で体格差を補おうと奮闘したものの、「ディフェンス面での1on1、スクリーン対応、クローズアウト、リバウンドが明確な課題」(片峯HC)として浮き彫りになった。キャプテンとなった白谷柱誠ジャックも「リバウンドで試合の展開が変わることが何度もあった」と振り返るなど、世界基準のフィジカルとインテンシティの前に苦しい戦いを強いられた。


キャプテンとなった白谷柱誠ジャック(写真中央)

この厳しい現実を踏まえ、伊藤委員長は「日本代表や世界で通用する選手を育てる」という目標を掲げる育成年代の指導者に対し、自身の指導方法を世界基準に照らし合わせて見直すよう提言している。片峯HCが指摘した通り、今後はU12からU18まで一貫した計画的な育成が不可欠であり、指導者自身が世界のトップレベルを注視してアップデートを続けることこそが、日本バスケットボール界を次のステージへ押し上げる絶対条件となる。

伊藤委員長はまた今後の短期的な目標として挙げたのが、本年8月に開催される男子U18アジアカップでベスト4に進出し、2027年6月末に控えるU19ワールドカップの出場権を獲得することだった。出場権を獲得したあかつきには、従来の短期合宿形式による準備体制を改め、より長い期間をかけてチーム作りへと移行していきたいとも語った。大会直前のみならず、定期的に世界と対戦する機会を設け、単なる「大会への参加」ではなく「世界で勝つため」のチーム作りをしていくということである。

さらに、強化体制の具体化に向けて、現場のトップ指導者たちとも踏み込んだ議論が交わされている。伊藤委員長は、アンダーカテゴリー男子代表強化部会長を務める井手口孝氏(福岡第一高)や、男子U17日本代表を率いた片峯HC(福岡大附大濠高)らと話し合いの場を持ったことを明かした。その中で、多くの有望な選手を一度に集め、集中的に指導を行う機会として、「2月に大規模な指導機会を設ける案」が浮上しているという。現場の知見を結集し、より実効性の高い強化策を打つための具体的な青写真が着々と描かれているのだ。

中長期的な強化育成のビジョンとしては、こうした早期からのタレント発掘の仕組み作りとともに、カテゴリーの垣根を越えた環境整備が検討されている。

現在、日本のU18世代においては、高校の部活動の大会とBリーグU18の大会がそれぞれ存在している。しかしながら、双方が日常的に高いレベルで競い合える場は限られている現状がある。一方で、過密な大会スケジュールにより、高校生たちに新たな強化の時間を割く余裕がないという構造的な課題も存在する。しかし、U15年代の「Jr.ウインターカップ」のように、異なるカテゴリーが一堂に会して戦う機会に解決のヒントを見出すなど、変革への糸口はゼロではない。「高校生やBユースといった枠組みに関係なく、優れた選手たちが互いに切磋琢磨し戦える環境があるべき姿です」と伊藤委員長は語り、Bリーグとの連携を含めた環境整備を望んでいる。

男子U17ワールドカップで突きつけられた現実は、日本の育成システムを根本から見直さなければならないという重い課題であった。直面している問題を挙げればキリがない現状ではあるものの、世界との差を埋めるためには、いかにして着実なステップを刻み、具体的な手を打っていくべきか。その道筋を描き、実行していくことが今まさに求められている。

■FIBA U17バスケットボールワールドカップ2026
【試合結果】日本戦のみ記載。
<予選ラウンド>
6月27日(土) 日本 64 – 93 イタリア BOXスコア
6月28日(日) 日本 66 – 128 アメリカ BOXスコア
6月30日(火) 日本 57 – 93 フランス BOXスコア
<順位決定トーナメント>
7月1日(水) 日本 62 – 98 リトアニア BOXスコア
7月3日(金) 日本 83 – 104 ニュージーランド BOXスコア
7月4日(土) 日本 62 – 52 ベネズエラ BOXスコア
7月5日(日) 日本 62 – 95 イタリア BOXスコア

【最終順位】
1位:アメリカ
2位:セルビア
3位:オーストラリア
4位:トルコ
5位:フランス
6位:カナダ
7位:リトアニア
8位:プエルトリコ
9位:スロベニア
10位:中国
11位:コートジボワール
12位:ニュージーランド
13位:イタリア
14位:日本
15位:ベネズエラ






文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)

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