月刊バスケットボール8月号

Bリーグ

2026.06.30

スクール事業の課題解決から始まる、バスケ界の裾野拡大に向けたDeNAとB.LEAGUEの挑戦

DeNAは2025年9月、自社サービス「スクサポ」を通じたスポーツ振興や事業支援を見据え、B.LEAGUEのサポーティングカンパニーに就任しました。さらに2026-27シーズンからは、「B.革新」に伴う統一プラットフォーム化を牽引すべく、「チケット&ファンプラットフォームパートナー」という新たな役割も担います。 これらの協業を通じて両社は、スポーツを「観る」ファン体験の向上を図るだけでなく、「する」側であるスポーツ体験の向上や競技現場の支援、さらにはスポーツに触れる人の裾野拡大までを包括的にサポートしていきます。
 


DeNAがこれらのパートナーシップに取り組む背景を語る伊藤龍平氏(DeNA スポーツ・スマートシティ事業本部ビジネスプロデュース事業部ソリューション事業開発部部長)

「観る側を支援するのはもちろん、スクール領域を中心に『する側』の競技人口や、スポーツに触れる機会そのものの裾野を広げていくことは、長期的にはスポーツ界全体の支援につながると考えています。現状、バスケのプレー経験者がB.LEAGUEの試合を観たり、ファンになっている割合は必ずしも高いわけではなく、ここはまだ向上の余地があると感じています。逆に、試合観戦をきっかけにバスケを好きになり、プレーすることへ関心が生まれたり、地元クラブのスクールに通いたいと思うこともあります。だからこそ、観る側・する側の両面を支援し、双方向の相乗効果を生み出せると良いと考えています」。DeNAの伊藤氏はこう語り、B.LEAGUEと一体となって歩むパートナーシップの意義を強調します。目指しているのは、バスケ界、ひいてはスポーツ界の現場を下支えし、業界全体が大きく成長していくというWin-Winの構図です。DeNAはこのビジョンを実現すべく、大規模なエンジニアチームが深くコミットし、B.LEAGUEとの長期的なプロジェクトを進めています。

B.LEAGUEの増田常務理事は、この考えに共鳴し「バスケ界を発展させていくためには、競技者、観客というファン、そして支える側と、"する・観る・ささえる"それぞれの裾野を広げていく必要があると思っています。B.LEAGUEとして競技者を増やすために直接できることは、実はそれほど多くありません。だからこそDeNAさんとご一緒できるのは非常にありがたい」と、協業への期待を寄せました。


B.LEAGUE増田匡彦常務理事は自らの体験も踏まえ、スクール運営の課題について「リソースが不足している」と表現した



「スクールは必要。でもリソースが足りない」現実


“B.LEAGUEとして、直接できることはそれほど多くない”と語る増田氏ですが、すでにU15、U18チームのB.LEAGUEユースの保有を義務化し、スタッフについても細かく規定を設けるなどトップ選手を育成する環境整備を進めてきました。それに付随して各クラブで立ち上がってきたのが、バスケスクールです。しかしながら、そこには課題が潜んでいる現状があります。

「スクールは、子どもたちがバスケに触れられる入門的機能として必要だと考えます」、増田氏はそう前置きしたうえで、現場の厳しい実情を指摘。「各クラブとしては、チケット販売やトップチームの運営もあり、スクールに割けるリソースが不足しているところもあるのが現状です。業務に追われるなかで子どもたちと向き合うと、どうしても十分なケアが行き届かず、『バスケは面白くない』と満足度が低下して、結果的に競技者が離れてしまう可能性もあると考えています」と、危機感を示しました。

また、子どもたちがミニバスや部活動などの週末の試合に参加することでB.LEAGUEの観戦が困難になるという現状にも言及。リーグとして(2026-27シーズンから)平日開催を増やす取り組みも、そうした競技者の子どもたちや保護者に観戦の環境を提供するための取り組みの一環であると説明。「システムで効率化を図ってハードルを下げるというのが、僕らができることだと思っています」と、テクノロジーを活用して現場を支援する意義を力説しました。


自らも横浜DeNAベイスターズのスクール現場の責任者を兼務し、運営の実情を知る大椿智明氏(DeNA スポーツ・スマートシティ事業本部ビジネスプロデュース事業部ソリューション事業開発部 /「スクサポ」パートナーアライアンス)

5000人のスクール運営から得た気づき。現場のリアルな声を形にした支援のあり方


DeNAでは、神奈川県を中心に、野球、バスケ、サッカー、チアダンスなどのカテゴリーで、合計約5000名の子どもたちが通うスクールを運営しています。その中で、コーチが事務作業に追われ、本来子どもと向き合うべき時間が奪われている現実を当事者として痛感してきました。

スクール現場の責任者も兼務するDeNAの大椿氏は、保護者とのやりとりや請求の管理など現場には多くの業務があることが課題だと指摘。いまだに手作業で管理している状況や、既存のシステムがあっても運営にフィットしないケースがある中で、「現場の実情をしっかり理解しつつ、我々のものづくりのノウハウやケイパビリティを生かし、ソリューションとして提供させていただいているのが『スクサポ』なのです」と、DeNAならではの支援の形を提示しました。


“子どもに向き合っていただく時間を増やしたい”と「スクサポ」に込めた思いを語った花田凜氏(DeNA スポーツ・スマートシティ事業本部ビジネスプロデュース事業部ソリューション事業開発部 /「スクサポ」プロダクトオーナー)

業務効率化が現場にもたらす“真の価値”について、DeNAの花田氏は「子どもに向き合うのはコーチです。子どもたちに『バスケが楽しい、続けたい』と思ってもらうためにも、子どもたちと向き合う時間が必要」と力を込めます。 子ども時代に競技を楽しいと感じる原体験こそが、将来的な競技者やファンを増やす上で最も重要です。そして、その原体験を育むのが、コーチが子どもと向き合う時間にほかなりません。『スクサポ』が業務効率化を通して目指すのは、まさにその時間を支え、スポーツ産業全体に貢献するインフラとなることなのです。



ノウハウとリソース、2つの障壁を崩す両社の施策


単にソリューションを開発するだけで、現場の悩みが消えるわけではありません。スクールに存在するリアルな課題を解決に導くためにDeNAとB.LEAGUEが共同で行ったのが、全国約50クラブへの徹底したヒアリングでした。

大椿氏はその結果から、4つの大きな課題が見えてきたと説明します。具体的には、量と質を担保しなければならない「指導者」について、集客や満足度の向上といった「顧客」について、どこで開催するか、施設費や接点をどう設計するかという「場所」について、さらに大会などの目標設定が難しいスクール特有の「運営方法」の4つです。 またヒアリングの過程では、課題だけでなく独自の成功事例を保有しているクラブがあることもわかりました。そのためDeNAは、各クラブから得た学びを体系化し、ノウハウを共有するための「共通言語」を作ってリーグ全体で資産化していく取り組みを、B.LEAGUEと共に推進しました。


ナレッジ共有会で生まれたクラブ間の横のつながりについて語る溝口哲史氏(B.LEAGUE システム推進グループ)

ヒアリングで得られた課題と解決方法を共有するために開催されたのが、ナレッジ共有会です。B.LEAGUEの溝口氏は「B.LEAGUEユースとは違い、スクールでは横のつながりも少なく『他クラブでどうやっているか』と質問を受けるケースも多かったこともあり、ナレッジ共有会を開催しました。実際に担当者が来られて有益なディスカッションも生まれましたし、スクール担当者間のつながりも作ることができました」と確かな手応えを口にしました。

伊藤氏は「熱い思いを持っているスクールの担当者ですが、新しいことをやるにはノウハウとリソースという障壁が生まれます。前者についてはナレッジ共有などの形で相談に乗ることができますし、後者については我々の『スクサポ』で解決できる面がある。両方の障壁にアプローチできる可能性があると感じています」と期待を語りました。

B.LEAGUEが掲げる「感動立国」というビジョンと、DeNAが目指す「スポーツの力で"ひと"と"まち"を元気にする」というミッション。掲げる言葉こそ違いますが、両社の見据える未来は同じベクトルの先にあります。

「子どもたちがバスケを心から楽しみ、長く関わり続けられる環境を作ること」。

それは将来的な競技力の向上だけでなく、ファンとしての観戦や、地域社会との結びつきにもつながっていきます。部活動の地域展開など大きな転換期を迎える中、B.LEAGUEの各クラブが地域の受け皿として機能していくためにも、スクール運営の質的向上は急務です。DeNAのテクノロジーと現場の知見、そしてB.LEAGUEの推進力。その融合によって、まずはバスケ界の明るい未来を創造し、ひいてはスポーツ界全体の裾野を大きく広げていくことを目指します。


B.LEAGUEとDeNA、「する」と「観る」を拡大しバスケ界の明るい未来創造へ立ち上がる——(左から)溝口哲史氏、増田匡彦氏、伊藤龍平氏、花田凜氏、大椿智明氏

協力:DeNA、B.LEAGUE
撮影場所:WeWork 渋谷スクランブルスクエ





写真:石塚康隆(月刊バスケットボール)、文:広瀬俊夫(月刊バスケットボール)

タグ: 川崎ブレイブサンダース

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