月刊バスケットボール7月号

U18男子日本代表、中国に勝利し3位で大会終了[U18アジアカップ東アジア予選]

中国を撃破し、福岡の地で掴み取った東アジアの頂と確かな歩み


6月2日から7日にかけて、バスケットボール王国である福岡(福岡第一高等学校・第一薬科大学内 都築賴助記念体育館)を舞台に熱戦が繰り広げられた「FIBA U18アジアカップ2026 東アジア地区予選」。大会最終日となる6月7日、日本の前に立ちはだかったのは、圧倒的なサイズを誇るアジアの壁・中国。この一戦は、勝てば条件次第で予選1位通過が決まるというだけでなく、アジアカップ本戦に向けてU18男子日本代表の現在地を測る極めて重要なゲームとの位置づけだった。

片峯聡太HCは、今大会を通して精度の高いアウトサイドシュートを披露してきた#6 久我祐仁をスターターにし、司令塔には再び#7 櫻井照大を起用。日本は立ち上がりから、中国の2mを超えるビッグマンが待ち構えるインサイドへ果敢にドライブを仕掛けるものの、高さのプレッシャーの前になかなか沈めることができず、重苦しい立ち上がりを強いられた。それでも日本は気迫のディフェンスを繰り広げ、中国にも得点を許さない。
そうした中、#15 白谷柱誠ジャックが力強いドライブで中国の高い壁を打ち破り、チーム初得点。


中国の高い壁を打ち破り、チーム初得点を挙げた白谷柱誠ジャック

しかし、序盤から激しい肉弾戦が繰り広げられたことで、両チームともにファウルトラブルに見舞われる。中国のビッグマンと共に、日本も白谷が早い段階で2つのファウルを犯してベンチへ下がらざるを得ない事態に直面する。両チーム、得点が伸びないものの、日本はディフェンスで我慢。ロースコアの展開に持ち込み、1Qを12-11とわずかにリードする。
2Qに入ると、日本の持ち味であるトランジションとアタックが機能し始めます。#13 本田蕗以が相手の隙を突く鋭いドライブを連続で決めると、センターを務める#10 マクミラン アレックスも存在感を発揮。コートを広く使い、鮮やかな3Pシュートを沈めると、インサイドへの鮮妙なカッティングで中国のディフェンス陣を翻弄。


鋭いドライブで連続得点を挙げ、攻撃をけん引した本田蕗以

さらに司令塔の櫻井がハードな守備からスティールを奪い、そのまま自らファストブレイクへと持ち込んで得点。この連続加点により、日本は一時27-13と14点ものリードを奪うことに成功した。
しかし、中国もそのまま引き下がるわけはなく、ハーフタイムを前にしてミドルレンジからのシュートを確実に沈めて反撃。日本は防戦を強いられながらも、30-27とわずか3点のリードを保って前半の20分間を終えた。
後半に入り、中国に同点に追い付かれたものの、ここから日本が粘り強さを見せる一歩も引かない両者のプライドがぶつかり合う中、日本は48-45とリードを守りながら運命の最終クォーターへと進む。

4Q、日本の気迫がピークに達する。白谷が3Pシュートを沈めて点差を広げると、ディフェンスから櫻井がファストブレイク。さらに本田が果敢なドライブでバスケットカウントを奪い、ボーナスフリースローもきっちりと沈めて56-45。再びリードを2桁に乗せた。中国もインサイドの高さを生かし得点を重ね、反撃を試みるも、マクミランが値千金の3Pシュートを射抜く。流れは日本へと傾き、最後まで足を止めずにディフェンスで粘り抜いたU18日本代表が、63-56で見事に強豪・中国を撃破した。



「労力」と「ワンモア」:片峯HCが植え付けた戦術マインドセット


試合後、片峯聡太HCは「前日までの3試合、フルコートで相手にタグアップ(プレッシャー)をかけ、激しく守り抜くという我々の本来の形が十分に機能していませんでした。選手たちにとっては、正直言って見たくないであろう、自分たちのプレッシャーが甘くなっているシーンの映像をあえて見せ、今日の試合に臨みました」と、ディフェンスの面の改善に努めたことを明かす。

「今日は試合の最初から、最後までやり続けてくれました。また、中国には15番や17番といった規格外のビッグマンがインサイドに君臨しています。だからこそ、彼らを外に引きずり出すアレックスの機動力が間違いなく生きると確信していました。昨日のゲームあたりから、蕗以(本田)やジャック(白谷)がアレックスに効果的にボールを配給し始めていたのも良い兆候でした。また、一発のアタックからレイアップを狙うだけでは相手の高さにブロックされてタフショットになります。だから、もう一つキックアウトする、もう一つドライブを仕掛ける、もう一つパスを回す。この『ワンモア』というテーマを、選手たちが勝負どころで本当によく実行してくれました」


「ワンモア」を徹底させ、世界と戦う道標を示した片峯聡太HC

体格差を、組織としての泥臭い労力と徹底された共通言語で埋める。それこそが、新生U18男子代表が示した世界と戦うための道標だった。

「サイズに対抗するスピード」:#10 マクミラン アレックスの覚醒と自己修正


この夜、中国を大いに苦しめ、日本の勝利を手繰り寄せる絶対的なピースとなったのが、アレックスである。インサイドで圧倒的なミスマッチを抱える中、彼が見せたインテリジェンスとスピード、速度の高い修正力は驚異的だった。


攻守で大車輪の活躍を見せ、22得点を叩き出したマクミラン

「相手は2mを超えるような本当に大きい選手ばかりで、中だけで押し合ってまともに勝負をするのは無理だと分かっていました。だからこそ、自分がアウトサイドにポップアウトしてスペースを作り、そこから外を走り回って素早いプレーでズレを作ることを徹底的に心がけました」
試合の前半、スコアラーであるジャックがファウルトラブルに見舞われた際にも、マクミランはステップアップを見せた。「ジャック選手がファウルを重ねてベンチに下がったとき、いつも以上に自分にボールが集まるだろうと感じましたし、何よりも『ここで自分がチームを引っ張って、もっと頑張らなければいけない』という強い覚悟が芽生えました」。もちろん、最初からすべてが完璧に機能したわけではない。試合の入りでは自身のミスが重なり、相手に流れを渡しかけたが、すぐに修正できたことこそ、彼の非凡さを示している。

「最初のミスからすぐにプレーを修正し、自分の強みをどう生かすべきか切り替えることができました。ドイツ遠征のときにも、こうした大きなミスマッチに対してどう対処すべきか、個人としてもチームとしてもたくさんトライしてきた経験があります。ビッグマン相手に1人で守り切る、攻め切ることは不可能に近いです。だからこそ、味方のガード陣を信じて、自分はスペースを広つつ、一瞬の隙を見てゴール下へカッティングを仕掛ける。そういった連携を強く意識しました」

自身のプレースタイルへの自信、そして櫻井をはじめとするガード陣への絶大な信頼が、勝負を決めるシュートの精度へとつながった。「ガード陣が本当にタイミング良く、素晴らしいパスを供給し続けてくれました。だから自分は高さへの恐怖心もなく、ただ気持ちよくシュートを打ち切ることができました。ゴール下での素早さや自分の強みが、このレベルでも通用するという確かな自信になりました」と語るアレックスは、この試合、チーム最長の39分56秒をプレーし、チーム最多の22得点、8リバウンドを記録。本田、白谷と並ぶ、チームの重要な柱へとステップアップを遂げた。



快挙を新たな「スタンダード」へ――島田慎二JBA会長の展望


若き日本代表がもたらした歴史的な勝利の余韻が冷めやらぬ体育館で、会場に駆け付け、熱い視線で見守っていたのが日本バスケットボール協会の島田慎二会長だ。試合後には興奮を隠せない様子でこのゲーム、そしてこの世代の未来についてコメントした。


チームリーダーの井手口氏、片峯HCを祝福した島田会長

「このU18世代の選手たちには、無限のポテンシャルしか感じません。何としてでもアジアカップの本戦へ出場し、さらに上を目指すために、今回はスケジュール的に非常に厳しい状況の中、急遽この福岡での東アジア地区予選の開催を誘致しました。結果として、選手たちが地元や全国から集まったファンの温かい声援を受け、これほどすばらしいパフォーマンスを披露してくれたことを本当にうれしく、誇りに思います。過去の対戦データを見ても、中国に勝利したというのは快挙です。数年後には確実にシニアのA代表に名前を連ねてくるだろう若者がたくさんいる、本当に楽しみでしかない世代です」

さらに、島田会長は今回の福岡開催がもたらした意義と、今後の日本バスケットボール界における強化のロードマップについても言及した。
「この世代の選手たちを取り巻く国内のスケジュールは非常にタイトです。そこにFIBAの国際大会日程が重なり、合宿調整や遠征準備が後手に回ってしまうことは、これまでの大きな課題でもありました。だからこそ、今回は準備期間が短い中、JBAとして思い切って自国開催に踏切りました。結果として、このアプローチはいい面が多かったと感じていますし、今後の日本の『スタンダード』にしていかなければならないと強く感じています。これからも、こうしたアンダーカテゴリーの大会誘致を積極的にやっていきたいと、チームの関係者とも話をしました」とアンダーカテゴリー強化の一環として、大会誘致を積極的に行いたい意向を口にした。

圧倒的な高さを誇る中国に対し、自分たちの現在地を見つめ、労力を惜しまず戦い抜いてつかみ取ったこの勝利。結果的には日本、中国、韓国が3勝1敗で並び、得失点差の影響で日本は3位となったが、本戦への出場権を得たこと、および中国から勝利をもぎ取ったことは大きな成果である。「アジアカップに向けて、中国からの勝利は大きな自信になります」とキャプテンの本田。求めた試合内容と得られた勝利によって、アジアカップでの戦い、その先にあるワールドカップ出場に向けて、大きな成果を得た大会となった。





■2026年度バスケットボール男子U18日本代表チーム
 「FIBA U18アジアカップ2026 東アジア地区予選」 参加メンバー

【スタッフ】
チームリーダー:井手口 孝 (福岡第一高等学校)
ヘッドコーチ:片峯 聡太 (福岡大学附属大濠高等学校)
アシスタントコーチ:冨山 晋司 (公益財団法人日本バスケットボール協会)
アシスタントコーチ:水越 悠太 (桜丘高等学校)
スキルコーチ:丸田 健司 (KAGO CLUB)
アナライジングスタッフ:渡邊 敬太 (公益財団法人日本バスケットボール協会)
アスレティックトレーナー:高橋 基樹 (専修大学)
アスレティックトレーナー:竹上 綾香 (立教大学) 
チームドクター:村上 友基 (東京大学整形外科) 
チームマネージャー:髙木 歩幸 (公益財団法人日本バスケットボール協会)

【選手】12名
#4 宮里 俊佑(PG / 179cm / 16歳 / 琉球ゴールデンキングス U18)
#5 山元 珠來(C / 199cm / 16歳 / 福岡大学附属大濠高等学校)
#6 久我 祐仁(SG / 186cm / 16歳 / 福岡第一高等学校)
#7 櫻井 照大(PG / 180cm / 17歳 / 福岡大学附属大濠高等学校)
#8 越 圭司(PG / 163cm / 17歳 / Concordia Lutheran School of Omaha)
#10 マクミラン アレックス(PF / 198cm / 18歳 / 沖縄県立沖縄水産高等学校)
#11 栗本 富美也(PF / 188cm / 16歳 / 福岡大学附属大濠高等学校)
#13 本田 蕗以(SF / 189cm / 17歳 / 福岡大学附属大濠高等学校)
#15 白谷 柱誠ジャック(PF / 194cm / 17歳 / 福岡大学附属大濠高等学校)
#16 中村 文哉(SF / 190cm / 17歳 / 福岡大学附属大濠高等学校)
#17 磯田 陸斗(PF / 197cm / 15歳 / 横浜ビー・コルセアーズ U18)
#18 佐藤 翔真(PG / 186cm / 17歳 / 黒沢尻工業高等学校)

※平均(Average):188.1cm、16.8歳
※所属・年齢:2026年5月27日現在
※ポジション(P):PG-ポイントガード、SG-シューティングガード、SF-スモールフォワード、PF-パワーフォワード、C-センター



■大会概要
【大会名】 FIBA U18 アジアカップ2026 東アジア地区予選
【英語表記】FIBA U18 Asia Cup 2026 – EABA Sub-Zone Qualification Tournament
【英語表記略称】FIBA U18 Asia Cup 2026 – EABA Qualifiers
【大会期間】 2026年6月2日 (火) ~ 7日 (日)
【会場】 福岡第一高等学校 第一薬科大学内 都築賴助記念体育館
(所在地:〒815-0037 福岡県福岡市南区玉川町22-1)
【特設サイト】https://fibau18asiacup2026-eabaqualifiers.japanbasketball.jp/
【配信】https://fibau18asiacup2026-eabaqualifiers.japanbasketball.jp/broadcast/
【日本試合予定・結果】
6月3日(水) ○93-45 ホンコン・チャイナ
6月4日(木) ●69-83 韓国
6月6日(土) ○109-76 チャイニーズ・タイペイ
6月7日(日) ○63-56 中国



■FIBA U18 アジアカップ2026 本戦概要
【大会名】 FIBA U18 アジアカップ2026
【英語表記】 FIBA U18 Asia Cup 2026
【大会期間】 2026年8月13日 (木) ~ 23日 (日)
【開催地】 インド ・ アーメダバード





写真/石塚康隆(月刊バスケットボール)、文/飯田康二(月刊バスケットボール)

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