月刊バスケットボール7月号

Bリーグ

2026.06.03

Bリーグが「SNSリーク注意喚起」、情報漏洩に歯止めは懸けられるか

盛り上がりの裏返しとして現れた未公開情報の拡散


6月2日、Bリーグは、「移籍・契約に関する憶測、未公開情報のSNS投稿についての注意喚起」と題したリリースを発表した。
オフシーズンにおける選手・スタッフの去就やチーム編成は、ファンにとって最大の関心事である。情報が飛び交い、議論が巻き起こる状況は、Bリーグがそれだけ成長し、注目される存在になっているからこそ。しかし、昨今のSNSにおいては、憶測に基づく内容や未発表の情報が先行して投稿・拡散される行為が目立つ。Bリーグとしては、選手・クラブ間の契約交渉の妨害や重大な秘密保持義務違反、クラブの経営やチームマネジメントへの悪影響を及ぼす可能性があるとして、「悪質な投稿・拡散行為やSNSアカウントに対しては、クラブと連携の上必要な対応および措置を講じます」と警鐘を鳴らした。


6月2日に発表されたリリース

そもそも、なぜシーズン中にこういった情報が出るのか? Bリーグのプロ選手契約における主な交渉プロセスは、以下のようになっている。
[ 1. 他クラブとの移籍交渉(1月1日解禁)] 
契約最終シーズンを迎えている選手に対し、他クラブが来季の獲得に動く場合、以下のルールが適用される。
ステップ1:1月1日にアプローチ解禁。そのシーズンの1月1日以降、獲得を狙う他クラブは、現在の所属クラブへ「書面による事前通知」を行う。
ステップ2:通知到達から3日後に交渉・契約スタート。通知が所属元クラブに届いてから3日が経過した日以降、他クラブは選手と直接交渉し、来季の契約を結ぶことができる。(※当該選手の現在の契約がすでに満了している場合は、3日待たずにすぐ交渉可能)
※例外(自由交渉選手) すでに「自由交渉選手リスト」に登録・公示されている選手については、所属クラブへの事前通知は一切不要となり、いつでも自由に交渉・契約が可能となる。
※2026-27シーズン以降の規程:第31条 第2号・第3号・第4号/2025-26シーズンまでの規程:第19条 第1号/2026-27シーズン以降の規程:第24条 第3項/2025-26シーズンまでの規程:第12条 第3項

[ 2. 自クラブとの契約更改交渉(シーズン終了後)] 
現在の所属クラブと来季の契約を更新する場合の手続きは以下の通りである。
ステップ1:シーズン終了の7日後までに更新通知。現所属クラブは選手に対し、新契約を締結する意思や条件を「シーズン終了の7日後(契約更新通知期限)」までに通知しなければならない。
ステップ2:更新通知から2週間後までに交渉完了。通知後すみやかに交渉を行い、更新通知期限から2週間後(契約交渉期限)までに交渉を終えなければならない。※交渉が決裂した場合や、期限までに通知が行われなかった場合は、当該Bクラブに契約更新の意思が無いものとみなされ、選手は自由交渉選手リストに登録される。
※2026-27シーズン以降の規程:第23条/2025-26シーズンまでの規程:第11条/2026-27シーズン以降の規程:第25条/2025-26シーズンまでの規程:第13条/2026-27シーズン以降の規程:第23条(通知なしの場合)/2025-26シーズンまでの規程:第11条(通知なしの場合)/**2026-27シーズン以降の規程:第27条 第1項(決裂の場合)/**2025-26シーズンまでの規程:第15条 第1項(決裂の場合)

[ 3. U22枠選手の例外ルール ] 
U22枠の選手が他クラブと移籍交渉を行う場合は、より厳しく制限される。
契約最終年満了の6ヶ月前(原則12月末頃)〜3ヶ月前(原則3月末頃)まで: 所属元クラブへの事前通知に加え、**「所属元クラブの合意」**がなければ交渉できない。
契約最終年満了の3ヶ月前(原則3月末頃)以降: 合意なしでも交渉可能となる(所属元への事前通知は引き続き必要)。
※2026-27シーズン以降の規程:第32条 第1号・第2号/2025-26シーズンまでの規程:第19条の2 第1号・第2号

つまり、契約最終シーズンとなる選手は1月以降、アプローチ等の手続きを踏めば他クラブと交渉できるということ。こうした水面下での動きがある中で、本来は公表されるべきではない交渉過程や未確定の情報が、SNS上で先行して流出してしまっていることが問題視されているわけだ。これらの状況は、選手自身やチームのパフォーマンスに影響を与えかねないだけに、リーグ側も看過できないということである。



世界最高峰と言われるリーグでは、何か対策を講じているのか。
NBAでは、元ESPN記者のエイドリアン・ウォジュナロウスキー氏(2024年に引退)や、現ESPN記者のシャムス・シャラニア氏らがリーク元として有名だ。労使協定(CBA)では、以下のように厳格な情報漏洩防止ルールが定められている。
・個別の選手契約の経済条件をメディアに漏洩することの禁止(第29条第14項)
・モラトリアム期間(交渉開始が認められてから、正式な契約締結が可能になるまでの期間)中の合意のフライング発表禁止(第11条第1項)
・公の場でのトレード要求の禁止(第6条第18項)
これらに違反した場合、チームや選手、代理人に対して厳しいペナルティや罰金が科される。ところが、CBAはリーグ、チーム、選手、エージェント(代理人)を対象とした規定のため、記者やジャーナリストに対しては拘束力がない。またFA選手の交渉解禁については原則として米国東部時間の6月30日午後6時と定められているため、オフシーズンの話題としてファンが楽しんでいる現状もある。

SNS収益化のインセンティブと「当事者以外」を縛る難しさ


リークアカウントやインサイダーのような情報を発信する裏には、SNS(特にX)での収益化がある。条件が揃えば、インプレッション数やエンゲージメント数に応じて投稿者に収益が分配されるため、センセーショナルな未発表情報をいち早く発信することがお金に直結する。NBAのCBAと記者の関係と同様に、Bリーグの諸規程もまた、適用対象はリーグ、クラブ、選手、代理人などの登録者・関係者に限定される。規程が及ばない一般の匿名アカウントによる憶測や未公開情報の投稿・拡散に対し、リーグ側が規程に基づいて直接処分を下すことはできない。

有効な手段はあるのか? 今後の行方に注目

冒頭で紹介したとおり、Bリーグは今回の注意喚起の中で、悪質な投稿を行うアカウントに対して「クラブと連携の上、必要な対応および措置を講じる」とし、ファンに対しては憶測情報の拡散や、そうしたアカウントへの情報提供を控えるよう呼びかけた。今回の注意喚起が、SNSの暴走を抑える抑止力となるのか。さらに今後、実効性のある一手を打てるのか。その動向を注視していきたい。





文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)

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