B.Hopeユニファイドスポーツが体現する、未来をつくる「バスケの生かし方」

熱戦前のファイナルのコートで、ダイバーシティ&インクルージョンを体現
B.LEAGUEの頂点を決める「りそなグループ B.LEAGUE FINALS 2025-26」。その初日、決戦を控えて徐々に観客が集まり始める横浜アリーナのメインコートで、もう一つの熱い勝負が繰り広げられた。B.LEAGUEの社会的責任活動「B.Hope」の一環として開催された「B.Hope ACTION UNIFIED SPORTS® BASKETBALL GAME supported by ANYTIME FITNESS」である。
知的障がいのあるスペシャルオリンピックス(SO)アスリートと知的障がいのないパートナーが同じチームでプレーするユニファイドスポーツ。ユニファイドスポーツは、障がいの有無を超えてスポーツを楽しみ、相互理解を深める国際的な取り組みだ。B.LEAGUEとSON(スペシャルオリンピックス日本)は2018年にパートナーシップを締結し、「“ために(for U)”ではなく、“ともに(with U)”」の精神を掲げて、誰もが個性を活かして輝ける社会の実現を後押ししている。このスペシャルゲームには、その魅力とダイバーシティ&インクルージョン(共生社会)への想いが凝縮されている。
今回は、B.LEAGUEと地区組織が連携して共生社会を目指す「Challenge with ALL」プロジェクトのもと、SONの地区メンバーが集結した。さらに特別ゲストとして横浜ビー・コルセアーズの森井健太選手と谷口光貴選手がチームメイトとして加わり、アリーナのメインコートで真剣な紅白戦を繰り広げた。
FINALSのコートでのプレーという特別な緊張感が漂う中、ティップオフを迎えた選手たちは日頃の練習の成果を存分に発揮。アップテンポな展開の中でSOアスリートとパートナーが果敢にリバウンドを争い、シュートが決まるたび、観客席からは自然と大きな拍手が沸き起こった。
今回が2回目の参加となったSOアスリートの味岡知弥選手(愛知)は「アリーナはすごく大きくて迫力もありましたし、お客さんに見られる恥ずかしさもありました。それでも一生懸命プレーさせてもらいました」と、緊張を乗り越えて全力でプレーした充実感をにじませた。

味岡知弥選手
垣根なき「支え合い」—ユニファイドスポーツが届ける温かいメッセージ
同じく2回目の出場となったパートナーの荒川大貴選手(愛知)は「チームは違うのですが、同じように『全員がシュートを打つ』という目標を掲げていました。なんとか全員にボールが渡るようにとプレーしていきました。去年はシュートを打つ機会がなかったので、今回はみんなで楽しもうということもあって、しっかり打ってたまたま入ったので良かったです」と笑顔を見せた。
さらに荒川選手は、パートナーという立場で携わるユニファイドスポーツの真の価値について「パートナーやアスリートと呼び方は違っても、一緒にゴールを目指すことが魅力であり、そこには垣根がないということが一番大切です。私は初心者で始めてまだ日が浅いのですが、苦手なところをフォローし合うのは障害の有無に関わらず日常生活でも変わらないはず。そういった当たり前の大切さを実感できるのが良さだと思います」と深く共感している。
味岡選手も「周りの後輩とか、一緒に活動して楽しいですし。褒めること、ミスってしまったときとか、そういうときに褒めるっていうことが、いいことだと思います」と話し、失敗すらも次の力に変える温かい関係性の大切さを明かしてくれた。

荒川大貴選手
コートサイドから温かい視線を送ったSONの平岡拓晃理事長は「お互いの良さを引き出し合うようなプレーが随所に見られました。だからといって手加減があるわけではなく、自分が持てる力を最大限に発揮しようとする姿勢が感じられました。そうした一人一人の力を共鳴させていくことこそが、ユニファイドの力なのだと今日改めて実感しました」と、お互いを高め合う選手たちの全力のプレーに深く感銘を受けていた。
誰もが持てる力を最大限に発揮し、響き合うユニファイドの力。それを象徴するのが、味岡選手自身がバスケットボールを始めたストーリーだ。高校時代、テレビやYouTubeで河村勇輝選手のかっこいいプレーを見たことがきっかけだった。「テレビやYouTubeでBリーグの試合を見て、かっこよくてすばらしいプレーをする河村勇輝選手に憧れたのが、バスケに興味を持ったきっかけです。最初はルールもよく分からず、一歩を踏み出す勇気が持てなかったのですが、楽しそうにプレーする他の選手たちの姿を見て、『まずはやってみよう』と行動を起こしたことが、バスケを始めるきっかけになりました」と語る味岡選手。一歩を踏み出した彼は今、来年のスペシャルオリンピックス本大会の出場に向け、「周りを見て、状況を判断して良いプレーをしたいです」と意気込んでいる。さらに「後輩に指導できるような先輩になりたい」という未来の夢に向けても目を輝かせている。
プロも真剣に応戦—バスケが持つ“社会を動かす影響力”
SOアスリートやパートナーたちとフル出場で走りきったプロ選手たちにとっても、この大舞台での共演は自らの姿勢を再認識する貴重な機会となった。
森井選手は「なかなか無い特別な機会ですし、全員がほぼフル出場するなかで、様々なバックグラウンドはあっても『一つの目標に向かって今日はみんなでしっかり走りきろう』と話していました。それは達成できたと思います。みんなで力を合わせて一つの目標に向かっていくすばらしさを、改めて感じさせてくれた試合でした」と振り返る。さらに笑顔も見られたプレーについて「みんなもうガチだったんで(笑) なんか僕らもちゃんとやらなきゃというか、みんなのクオリティについていけるようにとなった試合でしたね」と語った。
谷口選手も、ボールをシェアして全員でゴールを目指すコミュニケーションを重視し、「全員でシュートを狙うなか、終盤にはまだ打てていない選手がいたため、どうやってボールを供給するかを意識していました。『シュートを打ってね』『打てるようにパスを出すから』と声をかけ合いました。そうしたコミュニケーションを通じて、みんなで力を合わせて一つの目標に向かっていく姿をしっかりと見せられたと思います」と振り返った。

ディフェンスを欺くパスも披露した森井選手
森井選手は出身地である石川県で積極的な活動を行っており、谷口選手は保護犬支援活動「3ポイントシュート ワクチンショット」を実施するなど、社会的貢献活動に積極的な選手だ。そんな活動の広がりについて、森井選手は「バスケを通して、多くの方々の支えに感謝し、1人の人間として成長できることこそが競技の良さだと思っているので。そうした価値を伝えるとともに、自分自身の姿を見せていくことが、これからの子供たちにとって大きな影響を与えるはずです」と話し、メッセージを伝えていく覚悟を示した。
谷口選手もまた「バスケ以外の分野でも、選手自身が『社会の力になれる存在』であることを行動で示すことで、競技の価値はさらに高まります。だからこそ、私たちが率先してこうした活動に取り組んでいくべきだと強く思っています」と、プロアスリートが社会貢献をけん引していく重要性を熱く語ってくれた。

コート上で絶えず笑顔を見せていた谷口選手
バスケットボールという共通の言語のなかで、障がいの有無や年齢を超えて全力で楽しんだ特別な時間。選手たちのひたむきな全力プレーに対して、アリーナへ早々に集まっていた長崎ヴェルカと琉球ゴールデンキングスの両ブースターからも、温かい拍手が惜しみなく送られていた。
森井選手や谷口選手が語ったように、自らアクションを起こさなければ、そこから新たなリアクション(変化)が生まれることはない。今日という日に踏み出された「B.Hope ACTION」は、誰もが個性を活かして“ともに”輝ける未来へ向けて、確かなリアクションを生み出していくはずだ。

文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)









