月刊バスケットボール10月号

Bリーグ

2026.05.23

琉球ブースターが見せた、史上最も強烈なフリースローブーイング「耳が痛くなるほどの大歓声。これこそがキングスファンの姿」

4Q残り50.2秒、長崎ヴェルカのスタンリー・ジョンソンはフリースローレーンに立っていた。

バスケットボールは前半は自チームのベンチ側に、後半は相手チームのベンチ側に攻めるルールだ。彼の目の前に広がっていた光景は、長崎ブースターの温かな声援ではなく、岸本隆一のボードを掲げた琉球ブースターの嵐のようなブーイングだった。

「りそなグループ B.LEAGUE FINALS 2025-26」のゲーム1は、琉球が長崎を僅か2点差(71-69)で振り切った。僅差ではあったが、リバウンドを50-33と掌握し、ロースコアの守り合いに持ち込んだ。さらに、イヒョンジュンとジョンソンを徹底的にマークし、長崎がこれまでの対戦相手を困らせてきたプレッシャーディフェンスをもうまくいなした印象だ。もちろん、琉球からすれば17ものターンオーバーを犯したことが接戦の原因となってしまったものの、トータルすれば琉球のゲームだったといえる。

もう一つ、試合の行方を左右したのが、長崎のフリースローだ。総試投数は21本と琉球のそれ(17本)よりも多かったが、成功は12本。確率は57.1%に沈んだ。レギュラーシーズンは77.2%、チャンピオンシップでもセミファイナルまでの4試合は86.3%を記録していたことを考えると、信じられない低確率だった。

その要因の多くを占めたのが、琉球ブースターの圧ではないか。冒頭の場面でジョンソンは1本目のフリースローを外している。彼にしてもシーズン中は81.0%、CSでも84.6%を記録していたエリートフリースローシューターだ。ジョンソンは1本目を外した後、静かに首を振った。その表情はやや困惑しているように見えた。

試合後、ジャック・クーリーにその場面について聞くと、彼は「信じられないほどすばらしかった」と笑顔で切り出し、こう続けた。「彼ら(観客)は今日、本当によく頑張りました。最後のフリースローを彼(ジョンソン)が外したのは、間違いなくファンのおかげだと思います。耳が痛くなるほどの大歓声でした。これこそがキングスファンの姿です。彼らはそれほどハードに、エネルギーを持って応援してくれます。彼らが私たちのために尽くしてくれることに、いつも心から感謝しています」





この場面は、あるいは横浜アリーナでのファイナル史上最も強烈なフリースローブーイングだったかもしれない。

しかも、ジョンソンの1投目のミスは、長崎にとって7本連続のフリースローミス。長崎のフリースロースタッツを前後半で分けて見てみると、前半──つまり長崎ベンチ側への攻め──は9/11と高確率だったが、琉球ベンチ側に攻めた後半は何と3/10。

クーリーの言葉どおり、これは間違いなく琉球ブースターがリムを死守した結果だったと言えるだろう。彼ら、彼女らのエナジーが、ボールをリムから掻き出した。

昨季ファイナルのゲーム2後の記者会見で、桶谷大HCはこんなことを話した。

「昨日(ゲーム1)、『本当にファイナル?』という感じで、やっちゃっていたと正直、僕らは感じていました。僕らもエナジーがなかったかな、もちろんファンの人たちも『あれ?』って。ブレックスさん(のファンに)負けているなって。逆に今日くらい3戦目にちゃんと(ファンがエナジーを)出してくれたら…ちょっと偉そうですね、すみません。でも、キングスってそういうことやんって。僕らはアンダードッグなので、だからこそみんなで声を出して、また熱い試合をしたい」

これはチーム、そしてブースターにとっての大きな教訓となった出来事に対する桶谷HCのステイトメントだったわけだが、今回のファイナルでは、試合開始と同時に琉球ブースターも、もちろんチームもエナジー全開だった。

桶谷HCはゲーム1を「ブースターの人たちを含め、100点満点だったと思います」と、短く、穏やかに総括した。

琉球ブースターのこのエナジー受けて、長崎ブースターはゲーム2でどんなアンサーを見せてくれるのか。試合をするのはもちろん選手だが、観客のエナジーもまた、試合の勝敗を左右する。それが如実に感じられたゲーム1だった。



写真/石塚康隆、文/堀内涼(月刊バスケットボール)

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