月刊バスケットボール10月号

Bリーグ

2026.05.19

神戸ストークス、「B2最後の王者」の称号を手に、いざBプレミア

りそなグループ B2 PLAYOFFS 2025-26ファイナルは西地区王者の神戸ストークス(西地区1位/シーズン555敗)が福島ファイヤーボンズ(東地区3位/3921敗)を2連勝で破り、リーグ元年の2016-17シーズン以来2度目のチャンピオンに輝いた。頂点に立つまでのプレーオフ7試合(61敗)で舞台になった本拠地GLION ARENA KOBEでは、517日の優勝決定後にセレモニー、胴上げ、ネットカットと祝福のイベントが次々に繰り広げられた。昨年10月の開幕よりも前に来季のBプレミア参入が決まっていたチームは「B2優勝」を絶対命題としていただけに、喜びもひとしおだったようだ。


5月頭から始まった3ラウンドに及ぶ激闘を、川辺泰三HCは「プレーオフは内容ではなく勝つことが全て。最後に勝って、最高の景色をストークスに関わる皆さんと見ることができた」と堂々語った。シーズンの勝ち数やプレーオフでの戦いぶりだけを切り取れば順風満帆だったように思えるが、ロスターを大胆に入れ替えて臨んだチーム・ビルディングが容易だったはずはない。故障者も出たが「そのたびに誰かがステップアップし、誰かが補って戦い続けた」と言うように、ファイナルではシーズン終盤に負傷した八村阿蓮が1か月ぶりのコート復帰で躍動。最後の戦いでフルメンバーがそろったチームは、GAME198-76GAME2109-93で勝利した。試合後にプレーオフMVPに選ばれたヨーリ・チャイルズが口にした「ここにいる全員を誇りに思っている」との感謝は、チームに携わる全員が感じていた気持ちに違いない。


©B.LEAGUE





昨季から30勝プラスだった神戸と同様、福島もロスターのほとんどを入れ替えて前年比27勝を上積んだ。生まれ変わったチーム同士による頂上決戦でも、川辺HCは具体例をいくつも示しながら「バスケットの強度」「テンポの徹底」「コンセプトの理解」を高められた結果、昨年の就任後から言葉にし続けた「トリプルゴール(「B2優勝」「日々の成長」「ウイニングカルチャー形成」)」につながったと説明する。「最高の舞台で結果を出してくれた」選手たちを誇りながら、本拠地ブースターの力にも言及。相手のフリースローの際に、ゴール裏の観客が希少鳥ハシビロコウ(神戸どうぶつ王国で飼育)の印刷されたフラッグを揺らす姿を「ぱっと見て僕も怖かったです。素晴らしいファンの力だなと思いました」。そして、甲南大の後輩でもある谷直樹の存在も「自分たちは勝つ理由が多い」と前のめりになれる要因になった。



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年前の神戸の歓喜を知る谷は3月に今季限りでの引退を表明し、シーズン終盤には周囲から自然と「谷さんのためにも」「チャンピオンとして送り出す」といった言葉が増えた。そうして迎えた最後の試合で“ミスター・ストークス”が残り56秒でコートに立つと、代名詞である3Pショットを決めて自ら引退の花道を飾った。「身体的な限界で、足の痛みに耐えるのも大変」と語るほどの状態にあり、ラストプレーは「みんながシュートを打たせてくれようとしていたので、めちゃくちゃ緊張して若干震えていた」が、しっかりファンを沸かせて現役生活を締めくくった。


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試合後には自身初の胴上げを経験。「僕の前に泰三さんがしてもらって、一発目はほんまに上がってなかったので(全員が力を加えた)。その力加減で自分も上げられたので、だいぶ高く飛ばされた感じがして怖かったです。『こんな上がるんや!』って思いました」と優勝の味を噛み締めた。川辺HCは「バスケットの神様はやっぱり彼をずっと見ていて、最後に3Pを決めさせてくれた。あいつも決め切る。本当にいいプロ人生だったんじゃないかなと思います」。

ストークス一筋15年、谷にとって「地元なので運命的なチーム」であるストークスは、リーグ創設2年目にB1へ昇格したが、翌年に降格の憂き目も見た。プロでは酸いも甘いも噛み分けただけに「本当にこれからのチーム」との言葉には重みがこもる。「このB2優勝をバネに、勢いにして、来シーズンもしっかり日本のトップチームたちと戦っていける姿を見せてほしい」。近年は、ブースターの熱量が上がっていることも誰より体感している。「選手には今の環境を当たり前と思ってほしくない。最初は(新築のアリーナが)珍しいから観に来た方も多かったと思いますけど、そこから熱を持っていただいた方もたくさんいると思うので、来季は平均で8000人近い方に来てもらえるように」と後輩たちへバトンをつないだ。


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主将として、司令塔としてチームを引っ張り続けた寺園脩斗は、B1からB2へ戦いの場を移してから「最低でも優勝、最高でも優勝」を公言していた。今季は「1年間通して自分にプレッシャーをかけ続けてきて、うまくやり続けるのが厳しい時期もあった」という。プレーオフではよりフィジカルなマークに会い、フロアにたたきつけられたり、宙に吹っ飛ばされたりといった場面も少なくなかったが、「結果として優勝することができてほっとしています」。シーズン終盤の練習中に鼻を負傷してからは黒いフェイスガードを装着しながら出場を続けたが、「来季はもう必要ないです」と笑う。

初めてのネットカットについては「やり方がわからないんで、どうすればいいんだろうなって感じでしたけど。うれしい経験でした」。通常は試合後も緊張を崩さず試合内容を分析し、チームが白星街道を突き進んでも負けた試合の敗因にフォーカスするキャプテン。その表情にも、まずは望んでいたものをひとつ手にできた安堵の色が広がっていた。


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文/藤原彬

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