月刊バスケットボール10月号

大学

2026.05.15

ハードワークを貫く神奈川大 キャプテン稲葉を中心に強豪撃破目指す

キャプテンとして神奈川大を引っ張る稲葉一義

スローガンは「HARD WORK」「NO EXCUSE」「PASSION」

第75回関東大学選手権大会(4月11日~5月6日)は日体大の4連覇で幕を閉じた。大会期間中は各チームが熱戦を繰り広げたが、今回は神奈川大を取り上げたい。5回戦で準優勝した白鷗大に57-72で敗れ、ベスト16は決して好成績とは言えないが、「これぞ学生バスケ」と言うにふさわしいハードワークを体現していたからだ。

神奈川大は2017年に創部初の1部昇格。以降は入れ替え戦を経験しながらも1部に残留し続けている。近年はプロ選手も生み出していて、小酒部泰暉(A東京)や山本愛哉(静岡)らを輩出している。

留学生選手はいない。高校で名を馳せた有名選手が集まるわけでもない。ただ、激しいディフェンスでプレッシャーをかけ続け、速い攻撃を仕掛けるバスケを突き詰めて上位チームに食らいつき、時に勝利を挙げる。スローガンは「HARD WORK」「PASSION」「NO EXCUSE」。全員が結束し、泥臭くリバウンド、ルーズボール追う姿勢こそ、神奈川大バスケの真骨頂なのだ。

今年度の主将・稲葉一義(4年/172cm/PG/九州学院高)もそのスローガンに共感し、進学を決めた。出身校の九州学院高(熊本)も「全国の強豪校や留学生のいるチームに勝つ」という明確な目標を持っており、考えが同じだったという。稲葉自身も172cmと上背はないが、「留学生不在のチームで、留学生がいる強いチームに勝ちたい」と信念を語る。

真骨頂のハードワークが生んだ価値ある2点

神奈川大は2回戦で明星大と当たった。神奈川大の堅守と、ドリブルを主体とした明星大のオフェンス力とがぶつかり合う好ゲーム、まさに盾対矛のような試合だった。

1Qこそ15-16の接戦で終えたが、神奈川大は2Q、石田丈人(4年/185cm/SG/北陸学院高)や福山拓海(2年/190cm/190cm/九州学院高)のシュートが当たり始め、一挙30得点。45-31とリードして試合を折り返した。しかし、15点近く差が開いたとはいえ明星大も積極的にシュートを狙ってくる。明星大が1桁点差に詰めるか、神奈川大がリードを広げるか――。一瞬も気が抜けない時間帯が続いた。後半、神奈川大の真骨頂であるハードワークが凝縮されたようなプレーがチームを勢い付かせた。


荒川乃斗(左)のナイスプレーをたたえる稲葉

稲葉がトップでボールを持ち、ピックを指示。スクリーンをセットし稲葉がまず1人をするりとかわすと、ゴール下にいた伊藤ハリー大河(4年/190cm/C/浜松学院高)が必死のクリアアウトで相手留学生選手を抑えてドライブレーンを空け、稲葉がレイアップを決める――たったワンプレー、たった2点だが、ここに神奈川大のハードワークが現れていた。スクリーナーも伊藤も、稲葉のドライブのために体を張り、得点を生み出した。伊藤にいたっては、自分より10cm以上高い留学生選手を抑えたのだ。このプレーの後、神奈川大はじわじわと点差を広げ、最後は79-60で勝利した。価値ある2点だった。

試合後、このシーンについて稲葉は「いつも(伊藤)ハリーがクリアアウトしてくれるので、それを信じてドライブしました」と話した。この試合、神奈川大は全員が必死にボールに食らいつき、仲間のために体を張っていた。そしてそれを生み出しているのは間違いなく稲葉だった。神奈川大のハードワークを生み出す根源は何か。そう聞くと稲葉は「やっぱり幸嶋(謙二)さんイズムです。神奈川大は無名の選手ばかりなので、泥臭いところをやっていかないと1部では戦えないです。それをみんな自覚しています」とはっきりと答えた。


神奈川大のハードワークを生み出す稲葉

学年関係なく切磋琢磨「油断できない」

神奈川大は昨年度、山本や今野海輝(静岡)が正PGとしてプレー。稲葉は「ディフェンスだけやってこいという感じでした」とプレータイムが少なかったという。今年度になってプレータイムを増やしているが、おごりはない。「自分がうまいから、キャプテンだから試合に出ているとは思っていません。下級生のガードがうまいので、常に緊張感を持って練習できていて、もっともっとうまくならないとって向上心を持たせてくれています。本当に油断できません」。最上級生の稲葉であってもポジション争いをする身なのだ。ただ、この切磋琢磨し合う環境が好循環を生み出していることは確かだ。一人一人が与えられたプレータイムで神奈川大のスタイルを全うしている。

泥臭く、ハードに――。関東1部は留学生チームが多いが、それをハードワークで打破しようとしているチームがいる。その筆頭である神奈川大は、今年度もリーグ戦やインカレで旋風を起こしそうなチームであることに間違いなかった。



文・写真/磯野雄太郎(月刊バスケットボール)

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