新体制で迎える最終学年、エースとしての決意。筑波大・上野心音「弱くなったと言われたくない」

上野心音が見せる「笑顔の理由」
明日5月15日から、北海道の北ガスアリーナ札幌46にて「第49回李相佰盃日・韓大学代表競技大会」が開幕。日本女子学生選抜チームは、自国開催のコートで7大会連続となる3戦全勝に挑む。韓国側もリベンジに向けて並々ならぬ闘志で挑んでくることが予想されるが、日本もバランスの良いメンバーが組まれた。その12名の精鋭ロスターの中で、3年連続の選出を果たしたのが上野心音(筑波大4年/176cm/SG/聖和学園高)である。
上野の最大の持ち味といえば、見る者を惹きつける1対1の強さと、力強くかっこいいドライブからの得点だ。聖和学園高時代から定評のあったスコアリング能力は、大学のタフなフィジカルにも適応し凄みを増している。オフェンスが停滞し、チームが苦しい状況に陥った時、自らの力でこじ開けられる彼女のドライブは、まさに「困った時の一手」として信頼を集めてきた。
そんな上野の試合を見たことがある人ならば、あることに気づくはず。ベンチではもちろん、コート上にいる時でさえ、事あるごとに笑顔を浮かべているのである。どれほど緊迫したゲーム展開や、激しいプレッシャーの中にあっても、絶やさないその笑顔。理由を尋ねると「仲間とのバスケが楽しいからです」と屈託なく笑って明かしてくれた。彼女が放つポジティブなエネルギーは、チーム全体の雰囲気を明るく照らす太陽のような役割も果たしているわけだ。

事あるごとに笑顔を見せている上野(右は武藤美亜/2年生)
新体制の筑波大。戦術の進化とシステムの中で見せる新たな顔
視点を国内の大学バスケに移すと、上野の所属する筑波大は現在、新たな過渡期を迎えている。過去数年の筑波大は、速いバスケを信条としながらも、インサイドに絶対的な存在もいるチームだった。しかし、昨春に粟谷真帆(現日立ハイテク)が、今春に朝比奈あずさ(現トヨタ紡織)が卒業となり、昨年のインカレで3位という好成績を残した後、池田英治監督が退任。今季からは仲澤翔大氏が部長兼監督に就き、アシスタントコーチを務めていた藤永真悠子氏がヘッドコーチとして指揮を執る新体制となった。
ゴールデンウィーク期間中にクライマックスを迎えた「第60回関東大学女子選手権大会」において、筑波大は昨年の4位から順位を落とし、7位フィニッシュとなった。新チームでの新たなバスケを目指す中、コンディションの問題も発生するという予期せぬアクシデントもあり、上野はインサイドでプレー機会も増加。結果的に、本来の武器であるドライブは必然的に減ってしまったが、これは苦肉の策というわけでもない。藤永HCは新体制のコンセプトとして「コンティニュイティ(連続性)のあるシステム」を掲げており、特定の個人の力任せに依存するのではなく、ある程度決まった形の中で選手たちが余白を埋めていくバスケを目指している。その藤永HCが「システムがある中で、上野も判断がしやすくなっているはずです」と語るように、今の彼女は連動するオフェンスの中で最適解を選択する賢さをも身につけようとしているのだ。状況に応じて泥臭い役割もいとわない献身性と、システムに適応する柔軟性は、エースとしてのさらなる成長の証と言えるだろう。
スプリングトーナメントでは7位に終わったものの、決して筑波大の今後が悲観的なわけではない。今年のチームには、上野とともに最上級生としてチームを引っ張るキャプテンであり、3Pシュートを得意とする川井田風寧(169cm/SG)がいるほか、下級生にも魅力的なタレントが揃っている。3年生にはオールラウンダーの岡﨑真依(172cm/G)、インサイドで泥臭く体を張れる角陽菜多(177cm/C)が控え、入学直後の今大会で存在感を示した1年生の棚倉七菜子(175cm/SF)など、楽しみなメンバーが多く名を連ねている。
藤永HCが掲げるバスケを体現するためには、こうした個性豊かな選手たちの機動力やアウトサイドの火力が欠かせない。上野が一人で全てを背負い込むのではなく、彼女を中心に周囲のタレントがうまく噛み合った時、筑波大は昨季以上の爆発力を発揮する可能性を十分に秘めている。

「抜けて弱くなったと言わせない」最上級生が抱く誇りと覚悟
1年生の頃からメインコートに出場し続け、筑波大の勝利に貢献してきた彼女も、ついに最終学年を迎えた。昨季まで絶対的な大黒柱としてチームをけん引してきた1学年先輩の朝比奈が卒業した今、上野に懸かる期待はどうしても大きくなる。前述のとおり、筑波大には頼もしいチームメートが多く、決して一人でバスケをするわけではない。それでもチームの要として託されるものは大きいはずだ。自らが得点源として躍動しつつ、システムの中で周囲のタレントを最大限に生かす――それこそが、最上級生となった彼女が新たに背負う役割である。
常に笑顔でバスケを楽しむ上野だが、その内面には負けず嫌いの魂が宿っている。「ロン(朝比奈)さんがいなくなったから弱くなったと言われたくないんです」。残された自分たちが筑波大の誇りを守り抜くのだという強いプライドが、彼女を突き動かしている。
これまでの実績に甘んじることなく、大学ラストイヤーを最高のものにするために。まずは明日からの李相佰盃という国際舞台で、最上級生としてどのような躍動を見せてくれるのか。満面の笑顔と力強いドライブでコートを切り裂く、上野心音のプレーから目が離せない。










