月刊バスケットボール10月号

大学

2026.05.05

高校で最多48得点も全国経験なし 無名だった大津(松蔭大3年)がオールラウンドな活躍でインパクト残す

ドライブを武器とする大津涼夏

得点ランキングで3位入賞

中学、高校と全国経験がない、いわゆる“無名選手”が大学4年間で才能を開花させるのが大学バスケの面白さだが、関東大学女子トーナメント(4月18日~5月3日)で6位入賞した松蔭大の#2大津涼夏(3年/172cm/G/秦野総合高)がまさにそれだった。打点の高さを生かしたミドルジャンパーや速いドライブに加え、味方に対するポジション取りの指示も的確。ガード登録ながら、身長差を生かしてミスマッチを突くポストアップも見事だった。

得点ランキングでは47得点で堂々の3位。ただ、高校3年間はインターハイ、ウィンターカップに一度も出場していない。中学、ミニバスまでさかのぼっても全国大会出場はないという。神奈川県内では多少、認知されていたかもしれないが、全国となると無名。そんな選手が有名選手にも引けを取らないスコアリング力、得点への嗅覚を持っていた。


ジャンパーも大津の武器の一つ

試行錯誤を繰り返し得点力を伸ばす

松蔭大のスコアラーとして昨年度から主力で活躍する大津。高校時代は1試合最多48得点を記録したこともあるというが、そのスコアリング能力が大学に入ってすぐ通用したわけではない。「1年生の時、高校生の時みたいに点数が取れなくて、自分がどうやって点数を取っていたんだろうと分からなくなった時期もあったんです。けど、チームのみんなが支えてくれたり…。松蔭のバスケットの中でどういう風にやっていこうかを考え直していろいろやってみたら、今の形にたどり着きました」。自分が伸ばせるもの、自分に足りないものを試行錯誤し続け、成功も失敗も繰り返しながら松蔭大の戦力に定着してきた。

5位決定戦、立教大との“因縁”の戦い

松蔭大は準々決勝で今大会優勝した白鷗大に大敗(65-108)したが、順位決定戦の日本女子体育大戦は大津の21得点8リバウンドの活躍もあり73-48で勝利。最終日、立教大との5位決定戦に臨んだ。
昨年度、2部Aの順位は1位が立教大、2位は松蔭大。そして、入れ替え戦では立教大が専修大(1部8位)を下し1部昇格を果たした。一方、松蔭大は早稲田大(1部7位)に59-101で大敗し2部A残留。両者が直接対決して昇格が決まったわけではないが、昇格できた立教大とできなかった松蔭大――。5位決定戦は“因縁”の対決となった。

試合は松蔭大が好スタートを切った。1Q、大津がミドルジャンパーやドライブで得点をあげ、24-20とリード。互いに点を取り合い。41-35とリードして前半を終えた。だが後半、松蔭大、そして大津にも疲れが見え始める。立教大がペースを上げて3P攻勢に持ち込むと、松蔭大はついていけず、66-85で試合終了。大津が26得点を挙げるも、最後は19点差がついた。後半のスコアを見れば25-50と失速具合が顕著だった。

大津は「リバウンドやルーズボールといった球際で、全員で一生懸命追い続けられるところや、(ボールを)しっかり自分たちのものにできているところが本当に強いチームの特徴だと思いました」と1部との差を痛感。それでも、マークがさらに厳しくなった後半、オフェンスではドライブでファウルを獲得したり、ディフェンスでは1対1やパスカットで立教大の攻撃をしのいだりするなど攻守で存在感を発揮。残り1分30秒、勝敗が決まりベンチに退いたが、果敢に攻め、味方を鼓舞する姿はまさにエースだった。

目標はプロ選手。「どのチームからも警戒される選手に」

そんな彼女の目標はプロ入りだ。よりレベルが高い環境で技術を磨くためにも、最終学年となる来年、Wリーグのスカウトに見てもらう意味でも、今シーズン1部昇格を果たしたいところだ。「ダウンヒル( ボールマンから離れて守っているディフェンスに対して加速しながら仕掛ける1対1)など、スピードの中での崩しが一番得意です」と強みを紹介する半面、「点数を取れる試合と取れない試合があるのが今の課題です。(間合いを)詰めすぎてしまう癖があるし、ディフェンスもまだまだ。スリーポイントの確率が低いので、まずは自信を持って打ち切れるように、ゆくゆくは武器にしていきたいです」と課題を多く口にする姿勢に、成長意欲が垣間見えた。

中学・高校の無名選手が大学で開花しプロへ――。彼女からはそんなシンデレラストーリーの可能性を感じた。

「高校生の時は全国で試合できなかったですが、今は毎日高いレベルで切磋琢磨させてもらっています。どのチームにも警戒される選手になって、警戒される中でも自分のプレーを出し切れるような選手になりたいです」

大学のシーズンはあと2年間。どのような成長曲線を描いていくか、目を離せずにはいられない。


今後どのように成長していくのか、楽しみな存在だ



文・写真/磯野雄太郎(月刊バスケットボール)

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