歴史に名を残す「B2最後の王者」を目指す神戸ストークス――キーワードは「スウィッチ」

B2西地区優勝を決めた神戸ストークスはリーグトップの得点力を誇り、リバウンドと2P成功数でも1位と、効率良くボールをネットに通過させている。その上、最もターンオーバーが少なく安定したゲーム運びができているため、ポゼッションはそれほど多くない。ただ、チームはシーズンが始まる前に大幅な選手の入れ替えを断行した。チームビルディングは現在進行形で、コート内外ではスタッツから見えない多くの判断と試行錯誤を要したはずだ。
ただでさえバスケットボールは頻繁にトランジションが発生し、コートの縦横を走り続ける。そのため、プレーの強度や正確さよりも前に、都度の判断力が重要になる。切り替えが速ければ、それだけ優位に試合とシーズンも進められるはず。B2西地区優勝を飾った日の神戸は、コートを離れた場所でも「スウィッチ」の速さを感じさせた。
アクシデントにも慌てず、ネガティブをポジティブに
川辺泰三HCは3月28日に本拠地ジーライオンアリーナでのライジングゼファー福岡戦に勝利すると、試合後インタビューで「西地区優勝したどー!」と恒例のパフォーマンスで会場を沸かせた。その後の記者会見でも選手たちの成長を称えながら「今日の12時までは喜んで」と胸をなでおろした様子を見せている。だが、その一方で、うまくいかなかった点も挙げ、シーズン全体でも「自分たちのゲームプランを遂行できているときは勝っている、できないときは負けている」とも振り返った。
勝負師の顔と口調を次第に取り戻した指揮官は「絶対に優勝できるんだと言える自信をつけられるように、残りの試合をどう使っていくか」と今後を展望し、9割に迫る勝率で地区を制しながらも「(B2)全体の1位は取りにいきたい」と貪欲な姿勢を隠さない。「(5月の)プレーオフでもどう成長できるか」と語る姿は、さらに先の戦いも見据えているようだった。

地区優勝を決めた福岡戦で3Pショット10本中5本を決めてチームハイの17得点を挙げた金田(©B.LEAGUE)
この試合前には、予期せぬアクシデントも発生していた。チームの核である寺園脩斗が練習中に鼻骨を骨折して欠場したのだ。司令塔を欠いたチームは序盤からちぐはぐさが目立ち、攻めあぐねる場面も目立った。代わりにチームをリードした笹倉怜寿も試合中の負傷で退き、苦しい時間帯が長く続いた。それでも試合終盤はプロ2年目の野溝利一が躍動。寺園も、自らの穴を埋めた若武者の活躍に「出られない時間があった中で、自分のやるべきことをしっかり準備してきているのが結果として出て、うれしく思います」と目を細め、「誰が出ても同じようなプレー展開ができるように、僕たちガードは目指さなきゃならない」と力強く語った。
チームを襲った緊急事態にも、若き司令塔の野溝は落ち着いた対応をみせた(©B.LEAGUE)ただ、キャプテンでもある寺園は西地区優勝を「それほど意識していなかった」と言う。あくまで目標は「B2優勝」であり、西地区で最初にゴールテープを切ったのも通過点との認識のようだ。そして、歓喜に水を差すようなタイミングで発生した故障についても、いつもの歯切れ良い口調でこう言い切った。「ケガをした瞬間に思ったのは『これでプレーオフに向けて準備できる』。プレーオフの途中でケガをする可能性もあるので、そこのいい練習になるなとポジティブに考えて。そこまで落ち込むことはなかった」。翌日も欠場した寺園だが、翌節からはフェイスガードをつけてプレーを続けている。
「地域のために」——常勝の地ジーライオンアリーナを歓喜の舞台に
目標とする場所が変わらないから、そこへ到達するまでの言動も揺るがない。目指すべき場所がぼやけないから、今為すべきことの判断も自ずと速くなる。5月1日に開幕するプレーオフには8チームが参加し、クォーターファイナル、セミファイナル、ファイナル(もしくは3位決定戦)の最大3ラウンドに挑む。それぞれ2戦先勝方式の短期決戦では初戦に勝てば王手、負ければいきなり土俵際に追い込まれるため、より速い「スウィッチ」が求められるのは言うまでもない。
まだ連敗のない神戸は、シーズン1敗しか喫していないジーライオンアリーナでプレーオフ全試合を戦う。終盤の疲労や故障者の状況を考えても、ホームコートアドバンテージは明るい材料だろう。現在の成績はリセットされるが、川辺HCは「(ストークスは)地域のチームなので、地域のために勝ちたいという気持ちはどんどん強くなっている」と会見を結んだ。
文/藤原彬









