木田貴明(アルティーリ千葉)——「裕土さんとの時間を楽しみ、勝って終わりたい」

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2025-26シーズンが残り7試合となって迎えた4月18日、アルティーリ千葉はチーム史上最長の連敗を7で食い止めるべく、千葉ポートアリーナで秋田ノーザンハピネッツを迎え撃った。結果は83-65の快勝。今季限りでの引退を表明しているキャプテンの大塚裕土を古巣相手のホームゲームでスターターとして起用したことが、期待通りチームの潜在能力を最大限に引き出したかのような展開で、悪い流れをひとまず断ち切ることができた。
スコアリングリーダーは大塚とともにスターターを務めたウイングの木田貴明で、3Pショットを9本中5本成功させるなど自身のB1キャリアハイを更新する24得点。加えてこれもB1キャリアハイの6アシストにリバウンド、スティール、ブロックショットも1本ずつと攻守両面にわたる奮闘が光った。

4月18日の秋田戦でペイントアタックを狙う木田(©B.LEAGUE)
念願かなったB1の舞台で味わう苦悶
1週間前の4月11日、横浜ビー・コルセアーズに69-79で敗れた後の木田に、自身初となるB1の舞台を経験している今季を楽しめているかと尋ねたところ、「うう~ん…。『楽しめていた』というのが正確かなと思います」との答えだった。腰椎椎間板ヘルニアによる長期離脱を経て復帰はできたものの、コンディションはまだまだ万全ではない。その状態で、「楽しめている」と言えるほど本来のプレーはできていなかったのだ。
「開幕当初は、周りは日本代表やずっとこのレベルで活躍されている人たちばかりなので、その中で自分がどれだけできるかを素直に楽しんでやれていた部分がありました。でも正直なところ、今も同じように楽しめているかと言えば、うう~ん…」
期待を膨らませているA-xx(アルティーリ千葉ファンの愛称)に、思うように勝利を届けられていない状況について語ったときも、「(チーム全体として)経験したことのない壁に直面している上に、4週連続で水曜ナイターがあり練習も十分できないこともあって、長いことB1でやっているチームのようにアジャストができていません」と表情を曇らせた。ポストシーズンへの望みが絶たれた状態でモティベーションを奮い立たせてはいるものの、勝利にわずかあと一歩結びつかないような試合の繰り返しにより、内面的に疲弊しているような印象だった。

4月11日の横浜BC戦より(©B.LEAGUE)
もう一つ木田が話してくれたのが、大塚に対する特別な気持ちだ。
「個人的には裕土さんのためにという気持ちもあります。一緒にプレーできるのはあと数試合。これまで“もらってばかり”なので、こちらからも返していきたいんですけれど、それができていないのが申し訳なくて…」
翌日の横浜BC戦ゲーム2も黒星。さらに3日後の4月15日、アウェイでのレバンガ北海道戦も、89-90の1点差で惜敗に終わった。
ワイルドカード争い真っただ中にある相手を向こうに回して最後まで勝負の行方が分からない展開を披露することはでき、木田自身も3Pショット6本中3本を決めて14得点を挙げている。しかし、閉じかけた傷口がいつまでもじゅくじゅくと治り切らずにいるような状況から抜け出せない。
ただ、北海道戦では特筆すべき出来事があった。現役プレーヤーとして故郷に凱旋する最後の機会を迎えていた大塚の活躍だ。
この夜、北海道側は心温まる引退セレモニーで大塚を迎えていた。母校の東海大付札幌高(大塚在学当時は東海大四高)の後輩たちも、大塚の勇姿を目に焼き付けようと大勢来場していた。そして北海道は、シューターとして生きてきた大塚が敵に回して不足はない、富永啓生というショットメイクの名手がいるチームだ。この日の北海きたえーるには、大塚がここでしか味わえないエキサイティングな舞台設定が整っていた。大塚は魅せた。

4月15日の北海道戦前に行われた引退記念セレモニーで、折茂武彦代表取締役社長から花束を受け取る大塚(©B.LEAGUE)
1Q終了間際には、32-32の同点に追いつくブザービーター・スリーを富永の頭越しに沈めてみせた。3Q残り7秒ではビハインドを1ポゼッション差に縮めるクラッチスリーをヒット。4Q残り1分6秒にも、一度は86-85とリードを奪う逆転スリーをズドン。“デッドリー・シューター”ぶりを見せつけた大塚は、今季最長となる22分14秒の出場時間を得て11得点、2リバウンド、2アシストを記録していた。
魅せるべき場面で魅せた大塚の活躍は、18日の秋田戦勝利につながる伏線であったようにも思える。
キャプテンに勝利の花道を
木田は秋田戦ゲーム1終了後、こんなコメントをしてくれた。
「(大塚を)勝たせたい、最後のホームゲーム3試合を勝って終わりたいという思いがあります。引退するのはまだ早いという気持ちもありますよ。まだまだ全然やれると僕は思うんです。でも本人の意思を尊重しなければいけないところで、残り少ない試合を勝って終わりたいという思いは強いですね」
「今、裕土さんとやれるこの時間を楽しみたいし、やっぱり勝って楽しみたい。もう、こうして一緒に出られることもなくなると思うと、本当に大事にしていきたいですね」

秋田戦ゲーム1勝利後、会見に登壇した木田は穏やかな笑顔を見せていた(©B.LEAGUE)
大塚と木田のパフォーマンスを無理に関連付ける必要もないだろうが、今季の自己最高と言える木田のパフォーマンスは、大塚が5シーズンに渡ってチームをキャプテンとして率いた誇りとシューターとしての勝負強さを披露した北海道戦での活躍に触発されたかのような流れで生まれている。木田の大塚に対する恩返しの思いが勝利を引き寄せたと言いたくなるような流れだ。
秋田戦では大塚も、3Pショット4本を成功させてシーズンハイに並ぶ14得点を記録した。大塚は2試合連続で2桁得点を記録したのも、スターターとしてチームを勝利に導いたのも今季初めて。恩返しのような木田の活躍が、逆に大塚のパフォーマンスに影響したようにも思える。
会見に現れた木田には、しばらくの間忘れていたバスケットボールの楽しさを少しは取り戻したような雰囲気もあった。好調さに過信することなく、「シュートは水物。明日はまた分かりません」と謙虚。アンドレ・レマニスHCは木田に、「日頃からショットメイクの良し悪しで自分を評価しないように」と話しているという。上記のような木田の姿勢と、得点面にとどまらないこの日のオールラウンドな貢献は、コーチ陣の意図を理解して勝利を追い求めている証しだろう。
「シュートが入らないときには苦しいだろうけれど、それは自分でどうにかできるものでもないのだから、自分でできることをやろうと言っています。ディフェンスで厳しくプレーして相手のベストプレーヤーを苦しめることもそうだし、ボックスアウトもそうです。カッティングをしっかり遂行することも、仲間を生かすためにスクリーンをかけることもそうです。選手の価値はそうしたことをしっかりやるかどうかで決まりますが、今日の木田の活躍には、そうしたことが望ましい結果として表れましたね」(レマニスHC)
木田の貢献は、コート上で“UBUNTU” (ウブントゥ=自らの成功は他者の成功があってのものと捉えるアフリカの哲学に由来する考え方)を体現しようとするチームにあって、自分がやるべきことを実践した結果だったようだ。それは本来的に、「バスケットボールを楽しむ」ことと同義なのではないだろうか。
残るはホームでの2試合を含む6試合。秋田戦ゲーム1と同じことを木田があと6度実行できれば、大塚に立派な恩返しができると同時に、アルティーリ千葉の勝利数も増えているに違いない。
文/柴田健
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