レフェリーの質を科学で支えるBリーグの試み――進化する心身のケア

今シーズンより開始されたこの取り組みは、Bリーグが日本スポーツ振興センターと締結したパートナーシップ契約の一環である。来たる2026-27シーズンを見据え、レフェリーへの多面的なサポート体制が構築されつつある。
栄養管理への科学的アプローチ
「ビジョン講習会」「ウェイトトレーニング・リカバリー」「ケア・ビジョントレーニング」「食品栄養研修」というメニューを消化した今回のキャンプ。締めくくりとして行われたのが食品栄養研修である。講師は國學院大准教授でアルバルク東京の栄養士も務める小林唯氏が担当し、これまで経験則に頼る部分が大きかったレフェリーの食生活に科学的なアドバイスがなされた。

株式会社ユーフォリアのアスレティックトレーナーである安永華南絵氏は、吉田修久氏と共に「ウェイトトレーニング・リカバリー」を担当

ビジョントレーニングの様子
小林氏は「審判の方々のスケジュールは非常に過密であり、団体競技の中でも特に過酷な部類に入ると思います」と指摘する。事前調査では外食による栄養管理の難しさが課題として挙がっており、講習では試合開始3時間前までの食事摂取や、ハーフタイムにおけるエネルギー補給の重要性が説かれた。糖質の補給源としてのおにぎりも、消化を考慮して海苔を外して食べるなど、実践的なアドバイスが送られている。

科学的視点から食事のアドバイスをした小林氏
今年度からプロとして活動する市川雄介氏は「これまではメディアの情報などを元に自分なりに実践していましたが、具体的な指示をいただいたことで確信を持ってやっていけます」と手応えを明かした。同じく岩井遥河氏も「なんとなくのイメージは持っていましたが、まずは3時間前までにしっかり食べるという知識を試してみたいと思います」と、学んだ知識の実践に意欲を語っている。

真剣に聞き入っていた市川氏(写真中央)
審判特有の課題とコンディショニング
身体面のコンディショニングにおいては、レフェリーならではの課題も確認された。株式会社ユーフォリアのアスレティックトレーナーである安永華南絵氏は「プロレフェリーの皆さんは、審判業務の傍らでデスクワークを兼務されている方も多く、その際の姿勢が腰の不調や下半身の重さに繋がっているケースが目立ちました」と、コート外の要因を分析している。
昨年から始まったサポートにより、レフェリーたちは自身に必要な栄養素やトレーニングを明確に把握し始めている。市川氏はこれまで筋肥大に重きを置いていたが、現在は素早く切り返す動作や、止まった状態から走り出すといった審判特有の動きにフォーカスしたメニューへシフトし、これがケガ予防やパフォーマンス向上に直結していると説明した。

試合終盤には、プレッシャーなどもあると語った岩井氏
試合終盤の負担について、岩井氏は「心肺機能そのもののきつさよりも、糖質を消費することで脳が疲弊し、判断が難しくなったり、プレッシャーで余裕がなくなったりすること」と振り返った。市川氏も「特別な事態が起きた際、外的な要因で余裕を失いそうになることがあります」と、精神面への影響を口にしている。
勝敗を左右する場面で脳をクリアな状態に保つためにも、日々の栄養と睡眠の質を高め、最善の準備を尽くすことが求められる。岩井氏が「自分たちの状況を理解し合い、ポジティブになれる有意義な時間でした」と語るように、本キャンプはレフェリー同士が状況を共有し合う場としても機能した。
彼らが日々コンディションを整えるのは、すべてはコート上での「最善の判断」のためである。レギュラーシーズンも残りわずか。こうしたレフェリーたちのたゆまぬ準備があるからこそ、Bリーグの激戦は円滑に進んでいくのだ。
協力:Bリーグ

文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)









