月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2026.04.15

欧州U19への挑戦——B.LEAGUE U18選抜が仏遠征でつかんだ「価値ある1勝」

突きつけられた世界基準と体現した「規律あるインテンシティ」


Bリーグは「世界に通用する選手やチームの輩出」をミッションに掲げ、将来的なNBA選手やプロ選手の輩出を目指している。そのための新たな強化アプローチとして、4月3日から6日にかけてフランス・ショレで開催された国際大会「第42回 CHOLET MONDIAL BASKETBALL」に、B.LEAGUE U18選抜チームを派遣した。

同大会は40年以上の歴史を持ち、ルディ・ゴベア(ウルブズ)やニコラ・バトゥム(クリッパーズ)といった数々のトッププレイヤーを輩出してきたヨーロッパの登竜門である。例年、世界各国の有力ユースチームが顔を揃える同大会において、アジア地域のチームが招待されるのは初の試みであり、近年国際試合での躍進を見せる日本の育成環境への高い関心を裏付ける挑戦となった。

指揮官としてチームを率いた秋葉真司HC(サンロッカーズ渋谷 U18)のもとには、中学生(選出時)ながら飛び級選出された山野井皓(SR渋谷 U18)をはじめ、機動力を持つ195cmのフローニング コリン(千葉J U18)や191cmのプラット聖也(長崎 U18)など、各クラブから卓越したタレントが集結した。

大会はU19カテゴリーで行われるため、年齢も体格も日本を大きく上回る相手ばかり。加えてアウェー環境での戦いに向けて、秋葉HCは「チームのために個が犠牲になるようなバスケはしません。12人それぞれが点を取れるバスケを目指します」と宣言。「個の証明」を最大のテーマに設定し、スピードと規律あるインテンシティという日本のアドバンテージを武器に、選手一人ひとりが世界基準の壁に対して自らの強みをぶつけることを要求したのだ。


チームでの食事シーン、体を作るたんぱく質、エネルギーとなる糖質など試合に向けて何を摂るべきかといった判断も大事な要素となる



現地到着後、練習を一度やって大会に臨んだ



覚悟を胸に臨んだ予選グループだったが、高さも強度もあるヨーロッパのチームと対戦するのは簡単ではない。
初戦のCHOLET BASKET(フランス)戦では、棚橋康成(SR渋谷 U18)の3Pシュートや宮里俊佑(琉球 U18)のジャンパーなど良い形もあったものの、相手のリーチの長さ、フィジカルコンタクトを前にオフェンスが停滞。後半には江原行佐(横浜BC U18)の連続得点や高橋秀成(川崎 U18)のアウトサイドシュートで、3Q単体では20-17と一矢報いる意地を見せたが、結果的に53-78で初戦を落とした。

続く第2戦は、207cmのビッグマンを擁するドイツの名門育成機関・URSPRING ACADEMYとの対戦。ここでは秋葉HCが強調していた「規律あるインテンシティ」を見せる。棚橋らが前線から鋭いプレッシャーをかけ、チーム全体での組織的なヘルプディフェンスや、オフボールでの献身的なボックスアウトを徹底。前半を20-29で折り返し、リバウンド数でも20-20と互角に渡り合う激闘を演じた。それでも1日2試合による疲労、激しいコンタクトで消耗し、後半はペイント内への侵入を完全に阻まれる苦しい展開に。最終スコアは31-65で敗れ、日本は9〜12位決定戦へと回ることとなった。

迎えた9〜12位決定戦。初戦のDrive Academy Elite basketball(フィンランド)戦は、ペイントエリアへ果敢にアタックして健闘を見せたものの、後半に突き放され49-60で敗戦。しかし、続くELX BASKET ACADEMY(スペイン)戦で待望の瞬間が訪れた。激しいディフェンスからターンオーバーを誘発すると、高橋や棚橋のアウトサイドシュートが効果的に決まり前半から主導権を握る。終盤の相手の猛追をチーム一体となって凌ぎ切り、55-51で今大会初勝利を飾ったのだ。最終戦のCZ ACADEMY(チェコ)戦は、200cm台を複数擁する相手の高さと執拗なプレッシャーに苦しみ32-61で敗退。最終順位12位で大会を終えることとなったが、世界の強豪から1勝をもぎ取った事実は大きな自信となった。






「世界と日本の縮図」を体感した若き才能たち。悔しさを未来の糧へ


1勝4敗という結果になったものの、秋葉HCは今大会を「世界と日本の縮図をしっかりと体感し、今後どのような方向に向かっていくべきなのかを、各自が大きな経験と学びとして得られた大会になったと思っています」と総括している。「個々が悩みながら答えを出していったポジティブなゲームでした。全員が同じ方向を向き、ブレることなくやり抜けたのは大きな収穫です」と口にし、チームコンセプトに沿って選手たちが主体的に試行錯誤したプロセスを高く評価した。

具体的に成長の跡を示した選手たちもいる。秋葉HCは、大会を通じて強度の高いディフェンスと自身の持ち味を発揮し続けたプラット聖也(長崎 U18)をはじめ、佐藤駿(名古屋D U18)、小松亮太(秋田 U18)の3選手をステップアップしたと名前を挙げている。とりわけプラットは高さのある相手に対してもインサイドで臆せず体を張っている姿は印象的だった。


藤田翔(写真左)と棚橋康成(同右)

さらに、チーム全体の視点でも今後の大きな課題と可能性が鮮明に見えてきた。秋葉HCは「日本が世界との差を埋める上で強みとなる所と、解決しなければならないことが鮮明になりました」と語る。具体的に収穫として挙げたのは、“アメリカンなバスケと対等以上にやり合う個の力”と、“ヨーロピアンなバスケをスピードと個で壊せる組織力”の可能性である。これは、身体能力で圧倒してくる相手や、緻密な戦術で崩しにくるスタイルのいずれに対しても、日本の素早い連係とインテンシティが対抗策になり得るという確かな手応えの証明だ。

一方で“個の弱さと、リード&リアクトや原理原則の浸透の甘さ”に加え“高さを埋められるスピードとフィジカリティの不足”という残酷な課題も突きつけられた。秋葉HC自身も「コンセプトと並行して、コーチとしてどこまで答えを出し、勝利に偏らせるかという点は、アプローチや準備の部分からまだ改善できたのではないかと感じています」と自省を込めて振り返り、次なるステップへの覚悟を口にしている。

「個の証明」だけではなく、その先に待つチームへの貢献と、世界との差をどう埋めるかという果てしない問いへの挑戦である。今回フランスの地で味わった悔しさや、自分たちの力が世界に通用した時の高揚感は、参加した全選手・スタッフにとってかけがえのない財産となるはずだ。彼らがこの貴重な経験をどう咀嚼し、所属クラブでどのような成長の軌跡を見せてくれるのか。B.LEAGUE U18が思い描く「世界に通用する選手」の誕生に向けて、若き才能たちの歩みは力強く続いていくのである。


秋葉HCは最優秀フェアプレーコーチ賞を受賞





■B.LEAGUE U18選抜チーム スタッフ陣
・ヘッドコーチ:秋葉 真司(サンロッカーズ渋谷 U18)
・アシスタントコーチ:鈴木 龍雄(佐賀バルーナーズ U18)
・アシスタントコーチ:吉田 英司(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ U15)
・トレーナー:高台 周希(アルバルク東京 U18)

■B.LEAGUE U18選抜チーム 選手(12名)※学年は発表の3月18日時点
#4プラット 聖也(PF / 191cm / 高1 / 長崎ヴェルカ U18)
#6棚橋 康成(SG / 179cm / 高2 / サンロッカーズ渋谷 U18)
#7宮里 俊佑(PG / 180cm / 高1 / 琉球ゴールデンキングス U18)
#8小松 亮太(PF / 188cm / 高2 / 秋田ノーザンハピネッツ U18)
#9深水 虎太郎(SF / 187cm / 高2 / 千葉ジェッツ U18)
#10古河 シェーン(PF / 188cm / 高1 / サンロッカーズ渋谷 U18)
#13山野井 皓(PG / 180cm / 中3 / サンロッカーズ渋谷 U18)
#14高橋 秀成(PG / 175cm / 高1 / U18 川崎ブレイブサンダース)
#15江原 行佐(SF/PF / 192cm / 高2 / 横浜ビー・コルセアーズ U18)
#16フローニング コリン(PF / 195cm / 高1 / 千葉ジェッツ U18)
#18佐藤 駿(SF / 184cm / 高1 / 名古屋ダイヤモンドドルフィンズ U18)
#19藤田 翔(SG / 179cm / 高1 / 名古屋ダイヤモンドドルフィンズ U18)

■「CHOLET MONDIAL BASKETBALL」大会概要
【大会期間】2026年4月3日(金)~6日(月)
【開催地】フランス ショレ
【カテゴリー】U19(※BリーグはU18選抜チームとして出場)
【試合結果】
[4/3予選グループ] ●53-78 vs. CHOLET BASKET(フランス) 
[4/3予選グループ] ●31-65 vs. URSPRING ACADEMY(ドイツ)
[4/4 9-12位決定戦①] ●49-60 vs. Drive Academy Elite basketball(フィンランド)
[4/5 9-12位決定戦②] ○55-51 vs. ELX BASKET ACADEMY(スペイン)
[4/6 9-12位決定戦③] ●32-61 vs. CZ ACADEMY(チェコ)

【大会結果】
1位:POLARIS PREP ACADEMY(カナダ)
2位:KK PODGORICA BEMAX(モンテネグロ)
3位:LE MANS SARTHE BASKET(フランス)
4位:ROANNE BASKETBALL CHOIR(フランス)
5位:URSPRING ACADEMY(ドイツ)
6位:CHOLET BASKET(フランス)
7位:ORANGE LIONS ACADEMY(オランダ)
8位:ADA BLOIS BASKET 41(フランス)
9位:CZ ACADEMY(チェコ)
10位:ELX BASKET ACADEMY(スペイン)
11位:DRIVE ACADEMY ELITE BASKETBALL(フィンランド)
12位:B.LEAGUE U18選抜チーム(日本)
【大会サイト】https://jfcholetmondialbasketball.com/
【試合配信】https://www.youtube.com/@choletmondialbasketball8813

協力:B.LEAGUE





文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)

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