月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2026.04.15

B.LEAGUE選手が贈る”夢のシート”――子どもたちへ特別な体験とエールを――[長崎・松本健児リオン選手編]

B.LEAGUEで近年、広がりを見せている選手主導の招待シート企画。前編では自身の幼少期の経験から未来を担う子どもたちへ非日常を届ける2選手の思いを紹介しました。続く後編となる今回は、長崎ヴェルカのプロ契約選手第1号であり、地域とのつながりを人一倍大切にしている松本健児リオン選手をフィーチャー。
松本選手が自ら企画した「LEONシート」は、長崎県内の不登校の子どもたちなどを中心に、ホームゲームへ招待するプロジェクトです。単なる試合観戦にとどまらず、選手自ら施設などへ足を運び、彼らとの関係構築からスタートさせるという深い思い入れがそこにはあります。なぜそこまで情熱を注ぐのか? そして、コート内外で子どもたちに伝えたいこととは? 長崎への深い感謝を胸に行われる、心温まる支援の舞台裏とメッセージを紹介します。

前編「島谷怜選手(レバンガ北海道)角野亮伍選手(シーホース三河)」のインタビューはこちら



Interview03 長崎ヴェルカ・松本健児リオン選手「長崎への恩返しと、子どもたちの新たなきっかけ作り」


——2023年12月に「LEONシート」をスタートさせて以来、継続して実施されています。まずは活動をスタートさせた経緯と、企画に込めた思いを教えてください。

松本)長崎ヴェルカがB3リーグに参入した当時、(運営母体である)ジャパネットホールディングスの髙田旭人社長に、自分のやりたいことをプレゼンする機会がありました。僕はヴェルカと契約する前、1シーズンどこにも所属できず仕事がない時期があったんです。その時に僕の面倒を見てくれた恩人から「プロ選手が人に影響を与えられる時期は、現役の内しかない。お前がプロに戻るなら、プロ選手としてできることをやれ」と言われていました。自分に何ができるかを考えた時に、長崎の現状を調べると不登校の子どもが5年連続で増えていると知り、彼らのために何かできないかとプレゼンしたのがきっかけです。

——シート設立前から、不登校の子どもたちが通うフリースクールなどに足を運ばれていたそうですね。

松本)ただ試合に招待するだけでなく、まずは僕が施設へ行って“ただのお兄ちゃん”のような存在として直接触れ合う関係性が重要だと考えました。そうやって仲良く遊んでいたお兄ちゃんが、試合では本気で頑張っている姿を見せる。そうすることで「自分も頑張ってみようかな」と思うきっかけになればと考えたんです。今でもシーズン中の時間を縫って施設を訪れ、一緒に過ごす時間を大切にしています。





——学校に通っていない子どもたちをサポートしたいと思ったのはなぜですか?

松本)小学生の頃、僕もいきなり学校から帰ってしまったりするような問題児でした。だからこそ、共感できる部分があるんです。不登校には様々な理由があります。学校自体が嫌いなわけじゃないけど、自分に合わないだったり、悩みは人それぞれです。僕の場合、「学校に行かないならバスケットボールには行かせない」という母の言葉があって、どうしてもバスケットボールをやりたいから学校へ通っていましたが、学校に行くことだけが全てだとは思いません。それぞれの思いがあるので、そこを尊重してあげたいと考えています。

——現在では全ホームゲームでの実施というスケールへと発展しています。活動を通じた手応えはいかがですか?

松本)満足度はとても高いですね。子どもたちから手紙をもらうこともあり、「バスケットボールを始めました」や「ミニバスでキャプテンになりました」といった声を聞くと本当にうれしいです。また事前のリサーチで、不登校のお子さんを持つ親御さんも深く悩んでいることが多いと知っていました。ヴェルカの試合に招待したことで、家庭内で「リオンが活躍したね」といった会話のトピックが生まれ、家族のコミュニケーションが増えたという話を聞いた時も、本当にやって良かったなと感じました。



——シートの運営継続にあたり、「Lee Way」という団体も立ち上げられたと伺いました。

松本)はい。B1昇格に伴ってチケット代も上がり、子どもたちの席を確保し続けるためには工夫が必要でした。そこでサポートしてくださる長崎県内の企業などを募り、子どもたちを招待するシートを購入していただく形にしています。今後は、ご協力いただいている企業での職場体験などに子どもたちをつなぎ、彼らの未来に向けた良い循環を作っていければと考えています。

——新たな計画も楽しみですね。松本選手はヴェルカのプロ契約第1号として5シーズン目を迎えました。長崎のファンや地域との距離感はどのように感じていますか?

松本)B3リーグ参入から始まり、最初はコロナ禍で観客数も限られていました。しかしB2、B1へと上がるごとに応援の熱はどんどん増し続けていて、ヴェルカが長崎県に深く根付いてきていると日々実感します。街中で声をかけられることも多くなり、今ではこの知名度の高さを誇りに思いますし、初年度から在籍している僕だからこそ、この熱量の高まりをより特別に感じています。




——LEONシートで観戦する子どもたちに、ご自身のプレーを通してどんなことを感じ取ってほしいですか?

松本)目の前のプレーに全力を注ぐ、そこに至るプロセスや挑む姿勢を感じてほしいです。同時に、僕が北陸高時代から深く影響を受けている“おかげさまで”という言葉の精神も伝えたいですね。一度仕事を失い、今こうしてプレーできているのは決して自分一人の力ではなく、多くの方々の支えの“おかげ”です。大人になり、この言葉の重みがいっそう身に染みています。

——最後に子どもたちへのメッセージをお願いします。

松本)この活動の根底には、プロとしてプレーするチャンスを再び与えてくれたヴェルカへの大きな感謝があります。今後もLEONシートを継続しつつ、何かしらの形でもっと恩返しができればうれしいです。子どもたちに対しては“正解はないんだよ”と伝えたいですね。自分がやりたいことに情熱を持ち、一生懸命頑張れば、結果が出たり、また違う世界が見えてきたりします。だからこそ、自分の思いに正直に突き進んでほしいと思います。



取材協力:Bリーグ

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文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)

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