月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2026.04.02

スタッツに残らなくても──シーホース三河・長野誠史の矜持「自分をうまく使ってズレを作ることを意識している」

B1リーグ第28節で千葉ジェッツのホームに乗り込んだシーホース三河は、終始自分たちのテンポで試合を進め、最終スコア89-75で完勝した。

1Qからスムーズにボールを展開して、ジェイク・レイマンとダバンテ・ガードナーを中心にスコア。ディフェンスの強度がなかなか上がらない千葉Jを尻目に、自在にペイントに入ってはレイアップを決め、オフェンスリバウンドを確保してセカンドチャンス、サードチャンスでワイドオープンの3Pシュートを放った。

レイマンがゲームハイ31得点、ガードナー21得点、西田優大18得点と続き、リバウンドも35-22と差をつけた。オフェンスリバウンドは11-3だった。

ディフェンス面でも、開始からタフに体をぶつけて守ったことで、千葉Jのボールムーブにほころびが生じ、パスミスからのターンオーバーをいくつも引き出す。ライアン・リッチマンHCも「今日はディフェンスで特にゲームプランの遂行力や集中力がすばらしかったと思います。ゲームの始まりからフィジカルにディフェンスをすることができ、それがすばらしいオフェンスにつながったと感じます」と話した。

ボールマンには激しくダブルチームを仕掛け、パスをさばかれても素早くローテーションしてズレを作らせなかった。それができたからこそ、良いオフェンスのエントリーができ、40分のうちのほとんどの時間帯でペースを握れたのである。



出る選手がそれぞれ好パフォーマンスを見せた三河だが、スタッツに現れない貢献度の高さを見せたのが、司令塔の長野誠史だった。ボックススコアに載る数字は5得点、3リバウンド、5アシスト。特定の選手が出ている時間帯の得失点差を示す「±」も+6と、快勝したチームにおいては決して高い数字ではない。

しかし、両チーム通じて最初の得点は長野のコーナー3Pだったし、後半に千葉Jがリズムに乗りかけたところでバックカットのパスをスティールして流れを断ったのも長野。オフェンスでもディフェンスでも正しい判断をし、相手にとって嫌なポジションに顔を出す。そうやって自身の居場所を確立し、今年で8年のプロキャリアを歩んできた選手だ。

彼は試合中に意識している点についてこう答えた。

「試合に出ているときは別に自分が点を取らなくてもいいと思ってやっていて、スクリーンをかけたり、ダンカーポジションにいたり。あとは自分をマークしてくる相手は小さい選手が多いてので、自分がスクリーンをかけることで(ディフェンスをスイッチさせて)優大やジェイクがミスマッチを突けるような場面を常に狙っています。自分のスクリーンなどをうまく使って、ズレを作ることが意識してやっていることです」

スポーツの世界ではよく、「自己犠牲」という言葉を使う。得点源となる目立つプレーヤーはチームに不可欠だが、彼らの脇を固められるロールプレーヤーもまた、不可欠。ただロールプレーヤーと言われる選手が本当の意味でロールプレーヤーに徹することはそう簡単ではない。

長野ほどその役割に徹することができる選手は、Bリーグでも限られるだろう。

チームメイトになって5シーズン目を過ごす西田は、長野について「もう一緒にプレーして5年になります。長野さんが何をしたいか、ここを狙っていそうだな、パスが来そうだなというのはだいたい分かる」と言い、攻防における彼の存在感を以下のように言葉にした。

「ディフェンスでもオフェンスでもすごくチームにプラスになっていて、相手にとって嫌なことをするのが得意な選手だなと思っています。スタッツには現れないけど、チームに必ずプラスになることが多くて、今はハンドラーが少ない状況なので、僕が気持ち良くハンドラーができているのも長野さんのおかげ。すごく助かっています」

エース西田は長野に絶大な信頼を寄せる

先発PGを務めることが多かった久保田義章を欠く今、前述した影の活躍のほかに、長野にはハンドラーとしてもこれまで以上に多くの責任が求められている。そして彼は結果で示している。今季、長野が先発した試合は28試合で22勝6敗なのだ。

スタッツに現れない活躍をする選手は、一見すると評価されづらい。SNSのタイムラインに流れるようなハイライトシーンを彩ることもほとんどない。しかし、長野のような試合をしっかりと見ることでその価値に気付くタイプの選手は、時にスター選手以上の価値をチームにもたらす。

長野は今年31歳。元来のアンセルフィッシュなそのマインドに、キャリアを積み重ねたことで得た経験が加えられた今は、以前よりもより冷静に、クレバーにプレーができるようになった。この試合の勝利で三河は33勝14敗で西地区3位、ワイルドカード争いではトップを走る。

昨季はチャンピオンシップに照準を合わせてきた宇都宮ブレックスにクォーターファイナルで完敗した。三河の選手たちが常々口にしている「5月にピークを持ってくる」ためには、長野の影の活躍が欠かせない。

文・写真/堀内涼(月刊バスケットボール)

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