月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2026.03.25

大阪エヴェッサ流SDGs「AND YOU」が広げる子どもと街の可能性

©OSAKA EVESSA

子ども・環境・まちづくり、3本柱が導くエヴェッサの社会的責任


大阪エヴェッサは2024-25シーズンに「OSAKA EVESSA SDGs ACTION AND YOU」と名付け、社会的責任活動を新たなステージへと引き上げました。“子ども・環境・まちづくり”の3分野に焦点を当て、クラブが先頭に立って取り組んでいく姿勢は、企業・行政・ファンを巻き込みながら大きな広がりを見せています。エヴェッサが何を目指し、地域とどのように未来を紡ごうとしているのか。磯村英孝代表取締役と、活動をけん引するパートナー営業部・中野美咲さんにお話をうかがいました。

——2024-25シーズンより、SDGs活動を拡大し「OSAKA EVESSA SDGs ACTION AND YOU」を立ち上げました。

磯村)まず、私たちは「子どもたちのために」「地球のために」「街のために」を3本柱に据えています。さらに興行をより一層活気づけ、かつスムーズに展開したいという思いもあり、このプロジェクトを始めました。

中野)これまでも活動自体は続けてきましたが、地域の方々により分かりやすく伝えるため「AND YOU」という名称で発信することにしました。地域に親しまれ、クラブも地域のために活動する。その関係性を明確にするための新たなスタートでもあります。


開幕の際、お客様にご挨拶をする磯村代表 ©OSAKA EVESSA


——「AND YOU」の“YOU”にはパートナー企業、行政、ファンなど多くの主体が含まれるそうですね。

磯村)行政では大阪市、此花区、箕面市、泉大津市、豊中市、摂津市と包括連携協定を結んでいます。またパートナー企業様は約340社あり、それ以外にも小学生・中学生・高校生向けにバスケットボールを寄贈する活動を続け、これまでに大阪府下へ約2万球を届けてきました。その寄贈にはパートナー以外の地元企業様も協力いただいているというのは変わらずやっていることですね。

中野)最近では、メディアが自主的に活動を取り上げてくれたり、「地域に貢献したい」「SDGsに取り組みたい」という企業が新たにパートナーに加わるなど広がりを感じます。地域応援デーでのダンス出演をきっかけに、あるダンススクールが新しい取り組みを始めた例もあり、バスケットボール以外にも波及しています。

——想いを形にできなかった企業が、クラブを媒介に実現できたわけですね。協力する企業の“特色”を生かした取り組みもありますか。

磯村)わかりやすい例をあげますと、小学生から聞いた意見を反映し、アリーナ内の調理場で試作品を作って、興行時に販売するという企画を実施しました。フードロスの観点から規格外野菜と食べられるトレイを使い、ECOPROJECTDAYで販売しました。もともと行政様との取り組みで、その取り組みに共感いただいたパートナー企業様に協賛いただきました。子どもたちにとっても、特別な経験になったと思います。


©OSAKA EVESSA



——その話もつながりますが、ボール寄贈やスクールキャラバン、職業講話など子どもたちの活動がより多い印象ですね。

磯村)3本柱の一つですが、そこは特に大切に考えているところです。大阪市ではボールとは別に企業様に協賛していただき、小学1年生全員に「大阪エヴェッサノート れんらくちょう」を毎年配布しています。地域のイベントに選手やスタッフ、マスコットキャラクターが参加するなど、学校や地域との接点づくりを続けています

中野)連絡帳は大阪エヴェッサのマスコット「まいどくん」がデザインされた表紙になっています。中にも地元大阪・東住吉区出身の合田(怜)選手のプロフィールを掲載しています。協賛企業のロゴも載せていて、地域の皆さまが子どもたちを応援していることが伝わる構成にしています。


©OSAKA EVESSA


©OSAKA EVESSA



——3本柱の一つとご紹介いただきまましたが、子どもたちに対しては何か指針があるのでしょうか?

中野)基本的に3つの柱「子どもたちのために」「地球のために」「街のために」に合致するかどうかを基準にしています。私自身10年ほどエヴェッサにおりますが、入社当時はバスケットボールが今ほど知られていませんでした。子どもたちがバスケットボール選手を将来の夢に挙げるという状況ではなく、高校や大学でのキャリアが最後になるという現実にもったいなさを感じていました。だからこそ、プロクラブとして子どもたちの夢や努力を支えられる環境づくりを重視していて、その視点を「AND YOU」の根幹に置いています。

——スポーツ観戦の機会づくりとして無料招待を行っているのも、そうした考えに基づいているのですね。

中野)そうですね。以前、偶然知り合いの男の子が会場イベントのフリースロー対決に参加したんです。バスケットボールは好きでもクラブには入ってなかったのですが、その体験後、エヴェッサのスクールに入会したのです。会場での体験や、選手を間近に見たということが、子どもたちにとって新しい挑戦のきっかけになるんだなと感じましたし、すごく印象的な出来事でしたね。

磯村)無料招待をきっかけにバスケットボールが大好きになって、毎試合、ご家族そろって来てくれるようになったという例も少なくありません。それと個人的に印象的なのが卒団式ですね。大阪府下のミニバスチームの6年生にお声がけして、100名規模で卒団式を開催するのです。参加者には試合を無料観戦できる機会にもなっています。こうした取り組みを通じて、本人だけでなくご家族にも影響を与えたり、新規のお客さまとのご縁が広がっていくきっかけにもなっています。

中野)実は大阪府内には約300のミニバスチームがあり、卒団式は応募が多い年は抽選になるほど人気です。これはエヴェッサだけでなく、ミニバス連盟の協力もあって実現していることです。初年度は「大人になってもまた戻ってきて一緒に笑い合おう」という思いを込めて、18歳まで指定席を500円で購入できるという「スマイルチケット」という定期券を配布したこともありました。現在は、チケット運用の問題もあって記念のシューズケース等のプレゼントにしていますが、当時配った定期券を使ってくれる人もいるんですよ。


©OSAKA EVESSA


卒団生にお祝いの言葉を送る牧隼利選手 ©OSAKA EVESSA

——Bリーグと日本財団による「商店街での仕事体験」の取り組みにも参画されていますね。

中野)はい。子どものころに「将来の夢」を聞かれても、夢と“仕事として生きていくこと”が結びついている子は多くないと感じています。私自身を振り返ってもそうですが、ハングリー精神を持つ海外選手を見て、もっと感化されてもいいのではと思うようになりました。働き方にはいろいろな選択肢がありますが、自分の人生を生きるうえで「働く」「お金を稼ぐ」経験に早く触れることは大切だと感じています。だからこそ、子どもたちが仕事を体験し、将来を考えるきっかけをクラブが作れたのは、とても良い形になったと思っています。





つなぐプロジェクト~地域×スポーツ×働く~リアルお仕事体験in商店街のオープニングイベントに参加した高橋 快成 選手と植松義也選手 ©OSAKA EVESSA



地域の方に喜ばれる寄贈物を話し合う小学生たち ©OSAKA EVESSA


中学生はお客様が求めるフルーツを見極める「セールスクエスト」を実施 ©OSAKA EVESSA

——そのほか、ペットボトル回収や古紙回収、「HEROES PLEDGE」など他競技との連携もありますね。

中野)はい。実は大阪は分別文化が根づきにくい地域と言われているんです。ただエヴェッサとして「資源はリサイクルすべき」と考え、まずペットボトルの分別回収から始めました。最初はラベル外しや飲み残しを捨てるというお願いに戸惑う方もいましたが、お願いを続けたことで、シーズン終盤には自らラベルを剥がしながら来てくれるファンもかなり増えました。家庭ゴミでも分別が義務化されている大阪市で、試合会場でも同じ行動が“当たり前”になりつつあることは大きな成果だと感じています。まだ2年目ですが、目に見える変化が出ていることは印象的ですね。

——知ってもらうことは大きな一歩ですね。環境分野で今後やってみたいことはありますか?

中野)かつて試みながら定着しなかった環境施策を、改めて実行したいと考えています。具体的には、会場の飲食店のフード容器を紙製に切り替え、回収し再生する取り組みです。以前実施した際には、トイレットペーパー約7個分の再生紙になりました。今シーズンはこれに再度トライする予定です(2025年12月実施済)。これらの活動は企業任せではなく、すべてエヴェッサが主導しています。まず自分たちで行動しなければ、ファンにも協力していただけないと考えているためです。昨季は社内外に取り組みを知ってもらうため「ECO PROJECTDAY」を設け、その企画にのみ協賛を付けましたが、日々の活動は、あくまでもエヴェッサ主体です。ちなみにペットボトルについては、すでに「ボトル to ボトル」で飲料企業に戻す仕組みができており、次の段階として再生紙の取り組みを広げていきたいと思っています。



ECO PROJECTDAYの様子 ©OSAKA EVESSA

——最後に、今後「OSAKA EVESSA SDGs ACTION AND YOU」の活動をどのように成長させていきたいですか?

中野)社会的責任活動はじめ、様々な活動がベースとなって私たちの仕事は成り立っています。それらの活動を通じて、選手、試合だけでなくクラブ全体が地域の方々に応援したいと思ってもらえるよう、一歩ずつ推進していきたいです。

磯村)行政との連携もますます密にし、包括連携協定を結ぶ市も増やしていきたいです。地域に貢献できる形でバスケットボールファンを増やしていきたいですね。


©B.LEAGUE

取材協力:Bリーグ

B.Hope WEBサイトはこちら https://www.bleague.jp/b-hope/
B.Hope公式Xはこちら https://x.com/B_LEAGUE_HOPE





文/広瀬俊夫(月刊バスケットボール)

タグ: B.Hope

PICK UP

RELATED