月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2026.03.24

【EASL】残り7秒──佐土原遼が決め切った決勝レイアップの舞台裏「トラベリングが鳴らないように…」

宇都宮ブレックスの優勝で幕を閉じた「EASL FINALS MACAU 2026」において、決勝前の3位決定戦で琉球ゴールデンキングスとアルバルク東京が激突した。

3月20日の準決勝では前者が宇都宮に、後者が桃園パウイアンパイロッツ(台湾)に敗れ、モチベーション的に難しい中での試合となった。準決勝後、琉球の岸本隆一とA東京のザック・バランスキーは、共に現地マカオまで駆けつけてくれたファンに対して「少しでもマカオまで来て良かったと思える試合ができるようにしたい」と話し、3位決定戦に向けて気持ちを切り替えようとしていた。

迎えた試合は序盤から大接戦。どちらにも試合の流れは傾かず、どちらかが決めればもう一方と決め返す緊迫の試合展開が続く。4Q残り15秒を切った時点でA東京が76-75の1点リード。速攻でブランドン・デイヴィスからパスを受けたセバスチャン・サイズがノーマークのレイアップを放ったを──これで勝負が決したかと思われたが、ボールが滑ったか、サイズのレイアップがこぼれる。

逆速攻に転じた琉球は岸本、デイミアン・ドットソンとボールを展開し、右コーナーで待つ佐土原遼へとつなぐ。佐土原はベースラインドライブを仕掛けると、ブロックに跳んできたデイヴィスをゆっくりとしたユーロステップでかわし、逆転のレイアップをねじ込んだ。

残り7.2秒──これが決勝点となった。

試合後、佐土原は「試合中の全てが良かったかと言われればそうわけではなかったし、個人的にはすごく改善するべき点が多い試合でした」と厳しい自己評価を下しながらも、「でも、最後にああいう場面で試合に出て、得点できたことは自分の経験として、一つ積み重なった部分ですし、ああいうところで結果を出せたのはポジティブなところ」と手応えも口にした。

彼は準決勝前日の公開練習でEASLに対する並々ならぬ決意を言葉にしていた。

「Bリーグのタフなスケジュールがある中で、自分も今のコンディションが100%かと言われたらそういうわけでもないです。その中でもチームに貢献できるところがあれば貢献したいとすごく思っています。この大会は自分の中で大事にしていますし、チームとしても大事にしています。極端な話、この2試合に出て、それ以降のレギュラーシーズン数試合を欠場…はしたくはないですけど、でも、そういう選択肢取らなければならないのだったとしたら、もしかしたらEASLに出る選択をする可能性もなくはないと思っています。全員がそれくらいの気持ちを持って(全力で)プレーをしたいと思っていますし、個人的にも思っているので、すごく気持ちの入った大会になるのかなと思います」

それだけに、宇都宮戦の敗戦はダメージが大きかったが、3位決定戦で一つの結果を出せたことは、彼にとっても大きな成果だ。



しかも、決勝点となったレイアップは、宇都宮戦でトラベリングを吹かれていたプレー。このプレーは近年NBAで流行しているもの。昨季NBAファイナルに進んだペイサーズのアンドリュー・ネムハードや今季イースト1位のピストンズのエース、ケイド・カニングハムらも武器として活用しており、「Pinoy step」と呼ばれている。

しかし、宇都宮戦ではそれがトラベリングのように見えたことで、笛が鳴った。その経験を踏まえて、佐土原は「ブレックス戦のときはステップが少し早くなってしまって、トラベリングではないんですけど、そう見える動きになってしまいました。昨日の練習で佐々(宜央)アソシエイトHCと話して『Bリーグでは鳴らないけど、EASLでは鳴る可能性があるから、もう少しスローにしてみな』と言われて、あえてスローにしたのが大事な場面で出たので良かったです」と、その舞台裏を明かしてくれた。

なぜ、リスクのあるプレーを選択したのか。それは、デイヴィスがブロックを狙ってきたあの場面で、「取らざるを得ない選択」だったからだと、佐土原は言う。

「あの時点でブランドン・デイヴィスが見えたので、跳ばすしかないなと思っていたのが正直なところです。(宇都宮戦で)トラベリングをしたのですごく躊躇はしたんですけど、でも、あそこで自分がシュートを決められる選択肢はあれしかなかったです」

味方にとっても、驚きの選択肢だった。彼のシュートを見届けた岸本は「(佐土原がシュートを決めて)うれしかったし、僕的には決め方にシビれたというか、前回の試合でトラベリングを吹かれたプレーを、あの大事な場面でもう 1回繰り出すメンタルの強さというか、そこはすごく格好いいなと思いました」と笑顔を見せた。

実はこのプレーは、佐々AHCがシーズンをとおして佐土原に教え込んできた“必殺技”だった。桶谷大HCは「あれはずっと宜央が教えてきたプレーで、それがこの場面で実ったのは、しっかりと良い準備をしてくれていたスタッフがいるからでもあると思います。あの後のタイムアウトのときに、僕は佐々のことを見ていなかったので、どんなリアクションだったか分からなかったんですけど、試合の後は宜央もすごく喜んでいました」と明かした。

琉球にとっては昨年大会の悔しい連敗を乗り越えての、悲願の初勝利。優勝には届かなかったが、この1勝は後のBリーグのシーズンにも間違いなくポジティブな影響をもたらすはずだ。

チームの思いを乗せた佐土原の最後のシュートは、琉球ゴールデンキングスという組織の強さを示したシュートでもあった。



文/堀内涼(月刊バスケットボール)、写真/EASL、月刊バスケットボール 

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