【EASL】チャンスがあるなら飛び付きたいくらい…比江島慎が手にした新たな称号「めちゃくちゃうれしい」

「このタイトルはめちゃくちゃ意識しています。自分のキャリアにとっても、ブレックスというクラブにとっても、両方ですね。今の自分のモチベーションの一つが、日本代表での経験をブレックスに還元することで、その思いはめちゃくちゃ強いですし、EASLはまだ取ったことのないタイトルの一つ。自分のキャリアに後悔だけはしたくないです。目の前にチャンスがあるなら、本当に飛び付きたいくらいの思いですし、もしかしたら自分の体が動くうちにEASLに出場できるのは今回が最後かもしれません。だから、優勝に対する思いは強いです」
宇都宮ブレックスの比江島慎は、マカオで開催された「EASL FINALS MACAU 2026」の決勝前日、静かに、だか力強くこう話した。
この思いを最初に聞いたとき、筆者は「意外だ」と感じた。宇都宮というクラブに対する思いはもちろん強く持っているとは分かっていたが、自身のレガシーに対しては控えめな回答が返ってくるだろうと想像していたからだ。
学生時代から常に日本のトップを走り続け、洛南高時代にはウインターカップ3連覇、青山学院大時代も、プロになってからも、チームでも個人でも数々のタイトルを手にしてきた。日本代表でも確固たる地位を築き上げ、NBAサマーリーグやオーストラリアNBL挑戦といった国内にとどまらないキャリアを歩んでいる。ベテランの域に突入した近年は、経験とスキルが融合してさらにプレーに円熟味が増し、年々プレーが洗練されている印象すらある。地位も名声も手に入れたそのキャリアは多くの選手が羨ましがるような華やかなものだが、それでもまだ比江島は新たなタイトルを欲していた。
果たして迎えた桃園パウイアンパイロッツ(台湾)との決勝戦。比江島とブレックスは、1Qに信じられないパフォーマンスで会場をどよめかせる。

なんとチームで10/14の3Pシュートを決め続け、僅か10分で39-13という予想だにしない大差を付けたのだ。比江島は4/4のパーフェクトだったが彼だけではない。3&Dプレーヤーとして今季スタメンに定着した高島紳司も3Pを4/5で成功。D.J・ニュービルとグラント・ジェレットもそれぞれ1本ずつ沈めた。
「こんな経験は今までにありません。それに、あの2人(比江島と高島)があんなに空けられる試合もBリーグではないと思うので」。遠藤祐亮も驚きを隠さなかった。
2Q以降は桃園のタフなディフェンスやインサイド、アウトサイドを織り交ぜたオフェンスに苦しんだものの、結果的には一度も追いつかれることなく90-81で優勝を決めた。
比江島はこの試合の19得点を含めて準々決勝からの3試合で平均13.3得点、4リバウンド、5.2アシスト、3Pは9/14で64.3%という驚異の確率をマークした。Bリーグの2025-26シーズンでは今大会以前までの時点で3P成功率35.3%と、一般的に見れば及第点の確率だが、4季連続で40%超えを記録していた彼の基準ではややタッチに苦しんでいる。それだけに、このマカオでの3試合が今後の大きな弾みになる可能性もある。
比江島は冒頭の前日練習で「EASLには新鮮な気持ちで臨めています。もちろん、Bリーグのシーズンでも成長を感じることはできますが、EASLで日本とは違う文化や違うプレースタイルの選手・チームと戦うことで、プレーしていて楽しいと感じる瞬間はいくつもありました」と話した。
「体的にはきついですけど、若手にとっては試合数が増えて成長する場が増えるという意味でプラスになります。個人としても、今季はBリーグのシーズンでシュートタッチが例年に比べるとあまり良くない中で、EASLでは調子が良いというのもあります。ボールが違うので、逆にその影響でBリーグの方のタッチが悪いのかもしれませんけど…(笑)。でも、EASLはBリーグとは笛の基準も違って、よりオフェンス有利なジャッジだと感じているので、そこで調整できたりもします。日本にはない雰囲気で試合ができるのは、プレーヤーとして楽しいです」

準決勝、決勝の会場となったスタジオシティ・イベントセンターでは、隣の人の声すらも聞こえづらいほどの大音量で重低音のBGMが流れていた。桃園のファンも超が付くほどに熱狂的だったが、日本のような統一された応援ではなく、そこも選手たちにとっては新鮮だったはずだ。
2年前、フィリピン・セブ島で開催されたファイナル4において、同大会で優勝した千葉ジェッツの富樫勇樹も、「コートの影響やボールの違いなど、違う環境でなかなか難しい部分は正直ありました。それでも意外とEASLの公式球でシュートタッチが良い選手も多かったり、僕も含め、Bリーグの試合で調子が上がらなかった後のEASLの試合が良くて、良い気持ちでまたBリーグに戻るということもあります。スケジュールを考えたら厳しいですが、意外と悪くないプラスな部分が僕にはすごくあった」と比江島と似たような回答をしていた。富樫の場合はEASLの、特にアウェイの遠征を楽しみ、「できることなら毎年出たい」と話すほどであった。
結果的に今大会のMVPに選出された比江島は、優勝とともに個人としてもまた一つ称号を増やすことになった。MVPについては、「本当に自分でいいのか?」といった疑いの表情でトロフィーを受け取り、「決勝だけでなくて、3試合とおしてだったとしたら、なおさらおかしい(笑)」と、最後まで自身の選出には懐疑的だった。おそらくはニュービルやジェレットが取るべきだと彼は考えていたのだろう。
それでも、優勝についてはシンプルにこう喜びを表現した。
「やり残したことがあるとすれば、その一つがEASLのタイトルだったので、めちゃくちゃうれしいです」
千葉ジェッツ、広島ドラゴンフライズに次ぐ日本勢3連覇を決めた宇都宮と比江島。燦然と輝くそのキャリアに、また一つ新たな称号が加わった。

文・写真/堀内涼(月刊バスケットボール)







