月刊バスケットボール2月号

Bリーグ

2026.03.21

【EASL】緊迫の最終盤に小川敦也が生み出した数字以上に価値の高い「4点」

宇都宮ブレックスと琉球ゴールデンキングスによる「EASL FINALS MACAU 2026」の準々決勝は、昨季Bリーグファイナル第3戦を彷彿させる死闘だった。

序盤は琉球がペイントの支配力を見せつけて先行したが、徐々に宇都宮もアウトサイドからオープンシュートを作り出す。1Qは琉球リードだったが、前半を終えると50-46で宇都宮が逆転していた。

琉球が再逆転し、63-71で迎えた4Q。佐土原遼のコーナー3Pとチームで生み出したトランジションレイアップが決まって残り8分16秒で64-76。琉球がつけた12点の差はこの試合最大だった。しかし、まだ終わらない。

「大事な時間帯で、僕の印象では相手の3Pが全部決まっているような…それくらい、自分たちがある程度(打つように)仕向けたシュートすらも決めてきた印象でした」

琉球・岸本隆一が振り返るように宇都宮はグラント・ジェレットとD.J・ニュービルを中心に次々と長距離砲を射抜いて逆転すると、最後は103-96で逃げ切った。ニュービルは39分2秒のプレーで29得点、9アシスト、ジェレットも36分35秒で同じく29得点と7リバウンドを記録した。

この試合において、勝敗を左右する明確な決定弾がどれだったかと聞かれれば、その答えは人によって異なるだろう。それくらいアップダウンの激しい、ターニングポイントと呼べるプレーが多い試合だった。



その中でも一つ印象的な場面を挙げるとすれば、小川敦也のフリースロー、およびその後のディフェンスだ。

残り1分27秒、宇都宮3点リードの場面で4ファウルの琉球ヴィック・ローにニュービルが1オン1を仕掛け、ステップバックで3Pを狙うとファウルがコールされる。激昂したローは5ファウルアウトと共にテクニカルファウルも宣告され、ニュービルがテクニカル分の1本のフリースローを決めて93-89とした。ここから3Pファウルに対する3本のフリースローへと移っていくわけだが、ニュービルは腕から出血。止血のために一度ベンチに戻り、ルール上交代せざるを得なくなった。

代わりの選手がフリースローシューターとなる場面でコートに入ったのが、小川だった。

彼はこの試合でトータル9分32秒の出場にとどまった。だが、ニュービルがコートに戻るまでの僅か15秒間に、点数以上の価値がある「4点」を生み出すことになる。

1本目のフリースローは琉球ブースターの激しいブーイングもあってか落としたが、残りの2本は落ち着いて沈めて点差を6点とする。続く琉球のポゼッションで小川にマークされていた佐土原は体格差を突こうと右コーナーから力強くドライブ。しかし、懸命にマークした小川は佐土原のバランスを崩させ、ターンオーバーを誘発させることに成功する。そこから比江島慎へとパスがつながり、先頭を走った高島紳司がレイアップを成功させ、点差は8点に。琉球はたまらず後半最後のタイムアウトをコールした。

僅か15秒の間に93-89だったスコアは97-89と3ポゼッション差になった。後の琉球の粘りは見事だったが、この一連のプレーが勝敗を決する上で重要なものだったことは間違いないだろう。


小川のディフェンスを皮切りに、高島(左)の速攻でリードを広げた

試合後、小川は「フリースローを決められたことは良かった」としつつ、「本当は3本決めたかった」と話し、試合全体については「自分がもう少しコートに立てていたら遠藤(祐亮)さんや紳司、マコさん(比江島)の疲労も軽減できたと思うので、フリースローを決められたことは良かったですが、試合として反省したい」と続けた。

厳しい自己評価は、準々決勝から彼が思うように自分のプレーを発揮できていないことにも起因しているように思えたが、それでも小川がもたらした4点が、勝敗に直結するものだったことに変わりはない。

実は、ニュービルに代わって小川をコートインさせるアイデアを出したのは鵤誠司だったという。「最初は『自分か』と思いましたが、ヘッドコーチが誰を交代させるのか悩んでいたときに鵤さんが『敦也、行け』と促してくれました」。ジーコ・コロネルHCは直接的に鵤から小川を出すリクエストを受けてはいないとしつつ、「誠司は頭の良い選手なので、僕と同じことを考えていたのかもしれません」と話し、小川の起用について以下のように続けた。

「アツはチームの中でもフリースローが高確率で入る選手で、いつもスウィッシュで決めてくれます。もう一人、遠藤もフリースローがうまいのですが、今日はコンディション的にこれ以上出られない状況だったので、アツを起用しました。彼はガードとしてのスキルもあるので、もしフリースローの後にDJが出られずに次のポゼッションに移ることになれば、彼がガードのスキルがあってファウルトラブルでもなかったので、起用しました」

佐土原からターンオーバーを引き出したディフェンスについては「ファールせずにアグレッシブにディフェンスして、それが相手のターンオーバーになってレイアップにつながったので、本当に大きな、大事なプレーだったと思います」と評価した。

このディフェンスについては小川自身も「あの時点でスタメンの選手や遠藤さんなど、満身創痍の状況だったので、僕はあのワンポゼッションに懸ける思いで、絶対に守ってやろうという気持ちで(高島の速攻に)つなげられたので良かったと思います」と自身に及第点の評価を与えている。

スタッツだけを見れば僅か9分半の出場で、6得点、1スティールだった。だが、最終盤に彼がもたらした「4点」の価値は、その数字の何倍も高いものだった。




文・写真/堀内涼(月刊バスケットボール)

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